言ってくれるじゃないか――という記事が出ました。
韓国メディア『朝鮮日報』の記事で、タイトルが「韓国・台湾に半導体惨敗した日本、『最後の手段』に乗り出した」です。
中身は何かというと、半導体の話で――日本は半導体製造においては韓国、台湾に惨敗している。そのため、国内Top企業の力を結集することに乗り出した。これが最後の手段だ――です。
自信に横溢した書きっぷりですので以下に一部を引用してみます。
日本が半導体製造の最終段階である「後工程」に焦点を当て、再び半導体王国として復活する計画を練っている。
日本はメモリー半導体・ファウンドリー(委託生産)のような半導体の前工程では韓国・台湾に完敗したが、複数の半導体を一つにまとめて部品にする後工程は世界最高水準で、政府と民間企業が力を合わせて格差をさらに広げるということだ。
今後3~4年以内に半導体の超微細化が限界に達する場合、半導体の前工程と同様に後工程が重要な技術として浮上する可能性があるため、これを積極的に活用するということだ。
(後略)
「日本は……韓国・台湾に完敗した」のところなど実に気持ちよさそうですが、このような記事が出る分、韓国の半導体産業が危うくなっているからではないのか、と勘ぐりたくなります。
前工程・後工程というのは――。
前工程・後工程
半導体を設計し、丸い円盤であるウエハに微細な回路を刻んで切り出す過程までを前工程という。DRAMのようなメモリー半導体はもちろん、ロジックチップ(logic chip-システム半導体)を生産するファウンドリーでも同様だ。
その後、半導体をIT機器などの電子製品に最終搭載するまでのテスト(test)とパッケージング(packaging-組み立て)工程を後工程という。
記事としては、日本は韓国・台湾に前工程では勝てないので後工程に集中しようとしている、としています。後工程では『イビデン』『新光電気工業』『レゾナック』(旧昭和電工マテリアルズ)『味の素』などの世界トップクラスの有力企業があるから、というのがその理由です。
記事の最後の方では、日本の後工程における技術力と信頼性が高いという話になって……。
(前略)
日本が強い半導体後工程は、これまで半導体技術戦争では論外として扱われてきた。半導体前工程で回路線幅を20nmから10nmに、さらに5nmに減らす革新を繰り返したからだ。
しかし、『サムスン電子』や『TSMC』の線幅革新ロードマップには2㎚まで登場し、線幅縮小の革新は徐々に限界に近づいている。
1~2年前からは高性能サーバーでは、半導体と同様に後工程で大面積・多層化でまとめた部品が演算能力を最大化する競争力として扱われ始めた。
今後登場する次世代通信技術「6G」や自動運転車には高性能サーバーレベルの半導体部品が必要で、後工程が再評価されている状況だ。
後工程は参入障壁も高い。
後工程の半導体の積み重ねは高ければ高いほど潰れる可能性が大きくなり、歩留まり(正常製品の比率)を高めるのは容易ではない。
昨年、『サムスン電子』は外部非公開で後工程で20層以上の積層に成功したが、歩留まりが30%前後で悩んでいるという話もある。
『サムスン電子』も最高の技術力を持つ日本の後工程の主要企業、主要大学と協力を推進しているという。
(後略)
話が日本企業の技術が評価され、今や非常に重要なものになっているという方向になり、『サムスン電子』も日本の後工程の主要企業、主要大学と協力を推進している――という結論になっています。
要は「日本企業はすごい」という記事になっているのです(ただし前工程は除く)。
「前工程で日本は惨敗」などと書いていますが、後工程では手も足も出ないと告白しているのに等しい書きようです。
もう一つ、この記事が気になるのは「前工程では日本に勝利してそのままでいられる」と考えている点です。
まだどうなるか分かりませんが、日本の『Rapidus(ラピダス)』が成果を挙げ、「前工程・後工程共に日本企業が最強」となると韓国は困ったことになるのですが……。
「日本政府が出す金額がしょぼいので『ラピダス』は無理」という声も小さくありませんが、日本人としては希望を持ちたいところです。
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(吉田ハンチング@dcp)