韓国は、アメリカ合衆国の「インフレ削減法」(略称「IRA」)がそのまま実行されることを恐れています。韓国企業が合衆国が支給する補助金を受けられず、これまでのように売れなくなるかもしれないからです。
2022年10月には対中国での半導体締め付け強化し、韓国を代表する半導体企業『サムスン電子』『SKハイニックス』が大打撃を受けることが予想されます。
こちらは1年間のモラトリアム期間が与えられているのですが、あと7カ月ほどと期限が迫っています。2023年の下半期にはIT需要も回復するのではないか、という期待が盛り上がっていますが、景気が回復してもこの規制によって韓国半導体は沈む可能性があるのです。
そのため、韓国は国を挙げて合衆国と交渉を行っていますが、結果ははかばかしくありません。
これは当然の話で、合衆国議会で可決された法律、しかもバイデン大統領が満面の笑顔でサインしたIRAを、短時間のうちに「修正します」なんてことはできません。
バイデン大統領は、同法の修正について2022年11月30日に、
“For example, there’s a provision in it that says that there is the exception for anyone who has a free trade agreement with us,”
「例えば、われわれとFTAを締結しているものは例外とするという規定がある」
⇒参照・引用元:『Reuters』「French minister hails U.S. talks as ‘turning point’ to avert trade war」
と述べました。
この発言は、欧州からの「貿易戦争を起こすつもりなのか」というIRAについての懸念をかわすために出たものです(フランスのマクロン大統領とバイデン大統領との会談が行われていました)。
この発言を受けて、韓国メディアには「韓国は合衆国とFTAを締結しているのでセーフ」という記事が出ました。また「日本は合衆国とFTAを結んでいないので交渉できない」などという指摘まで出る始末です。
※日本と合衆国は「日米貿易協定」を締結しています。令和元年12月13日 公布及び告示(条約第10号及び外務省告示第244号)/令和2年1月1日 効力発生
⇒参照・引用元:『日本国 外務省』公式サイト「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定」
いまだに、このバイデン大統領の発言をもって「韓国は合衆国から優遇されるだろう」といった観測を語る韓国メディアもあるのですが、それは間違いです。
なぜなら、上掲の発言は以下のように続くからです。
“That was added by a member of the United States Congress who acknowledges that he just meant allies; he didn’t mean, literally, free trade agreement. So, there’s a lot we can work out.”
「これは、合衆国議会のある議員が追加したもので、同盟国という意味であって、文字通り自由貿易協定という意味ではなかったと認めている。だから、私たちが解決できることはたくさんあります」
つまり、IRAにある例外規定は「合衆国の同盟国」なら適用される可能性があり、交渉の余地があるということです。「FTAを結んでいるからセーフ」ではありません。
もちろん韓国も交渉の余地があります。同盟国ですから。
現在、韓国政府は合衆国とIRAの適用について必死の交渉を行っていますが、望みどおりになるのかは不明です。
(吉田ハンチング@dcp)