2023年11月09~11日、中国・青島で開催された「第12回アジア太平洋経済協力体(APEC)中小企業技術交流」で、中国の半導体製造大手『SMIC』(Semiconductor Manufacturing International Corporation:中芯国際集成電路製造)の李偉副社長が興味深い発言を行っています。
発言を拾ってみます。
「2nm(ナノメートル)技術の開発で突破口を見つけるために巨額を投入するよりも、20~90nm半導体の国産化を優先的に考慮しなければならない」
「2nm半導体が必要な産業は通信・人工知能(AI)などごく一部」
「実は28nm半導体だけでも国内民間および軍需市場の需要をほとんど満たすことができる」
非常に現実的かつ率直な意見表明です。28nmレベルの微細工程の半導体、いわゆるレガシー半導体でも、中国国内の民間および軍需市場のニーズはほとんど満たすことができる、としています。デュアルユースで28nmで十分だというのです。
しかし、以下の発言が中国に足りない点を物語っています。
「中国は世界半導体市場の3分の1以上を占めており、85%以上の半導体需要を輸入に頼っている」
「現在、世界で最も先進化された技術は2nmで、中国内での最高先進プロセスは14nmだが、装備の輸入制限で大規模な量産が難しい」
「製造装備と素材(フォトレジスト)は中国半導体産業の最大のアキレス腱」
「国際的な水準と比較すると、中国の半導体技術は5年以上遅れている」
「半導体産業で中国はまだ長い道のりを歩んでいるが、資本市場と地方政府の全面的な支援を受けて猛烈な勢いで発展している」
アメリカ合衆国による半導体製造装置の対中国輸出制限は大いに効いていることが窺えますし、世界最高品質のフォトレジストは日本企業が押さえています。
実は、『SMIC』は第3四半期の純利益は前年同期比80%急減しています。2023年の支出予算を2022年比で約18%拡大して半導体装置購入に投入した――と見られているのです。
世界最先端の2nmに巨額資金を投入するよりも、できることからコツコツ積み上げようというのは、自由主事陣営国からすれば脅威です。こういう努力をしようという声が出るのが、韓国と違うところです。
進化の速度が速い分(また技術剽窃に総力を上げていますので)、日本は技術格差を保てるように注力しなければなりません。
(柏ケミカル@dcp)