韓国の『SKグループ』の傘下に『SKファームテコ』という会社があります。
『SKファームテコ』は、バイオ医薬品の委託開発生産(CDMO)事業を行っており、アメリカ合衆国バージニアにバイオ工場(バイオ医薬品18万7,500Lを製造できる規模とされます)を有しています。
この工場をデンマークの世界的ヘルスケア企業『ノボノルディスク』に売却する――という報道が出ました。
『SKグループ』が優良資産を売却する
『ノボ ノルディスク』と聞いて。「!」と思われた方もいらっしゃるでしょう。肥満治療薬「ウゴービ」(セマグルチド)で注目されている会社です。
『ノボノルディスク』はこれまで薬の生産を外部に委託してきたのですが、自社生産に切り替えようとしており、それで『SKファームテコ』が保有する工場を「買う!」となったと見られます。
しかし、不思議なのは『SKグループ』の方で、『SKファームテコ』の工場を売るというのはずいぶん思い切った、いや「それでいいのか?」と思われるような決断です。
なぜなら、『SKグループ』は、これからは「バイオだぜ」といい、アメリカ合衆国のCDMO企業『アンパック』を7,000億ウォンで買収。これによってバージニア、カリフォルニア、テキサスなど3つの工場を手に入れました。
バイオ医薬品の需要は高いので工場はいわば優良資産のはずなのですが、アッサリ工場を売却するのです。「これからはバイオじゃなんかい!」と突っ込みたい話です。
なぜ売却するのか?
なぜ、そんな決断なのか?――という話なのですが、一つの理由は「『SKグループ』の事業再編」です。
『SKグループ』はこれまで、やれ半導体だ、二次電池だ、バイオだ、医療機器だ――とあちこちにお金を突っ込んできました。しかし、成果を上げたのかといえば、「うーん……」な状況です。
インテルから買収した中国工場は逃げられなくなりましたし、電気自動車の需要に急ブレーキがかかり車載用バッテリー事業も空模様が怪しく、医療機器では詐欺案件に引っかかった見られ――などいいことが全然ありません。
つまり、あっちこっちにチップを張ったけど全部ハズレでした――みたいな状態です。そりゃ事業の再編を始めても不思議ではありません。
しかし、第2の理由として「単純にお金がないから」が考えられます。
2021年には、他でもない『SKグループ』総帥である崔泰源(チェ・テウォン)会長が「BBC」(バイオ・バッテリー・チップ)を3大成長動力と規定しました。
つまり「バイオ医薬品・二次電池・半導体」なわけです。
その大事な一角「バイオ」のせっかく入手した優良資産を売り払うのです。やはり、お金がないので「高く売れそうなものを売る」と考えた方がいいのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)