『日本経済新聞社』が興味深い記事を出しています。
有料コンテンツなので、引用するわけにはいきませんが、『SKハイニックス』が『Intel(インテル)』のNAND型フラッシュメモリー事業を買収したのは大失敗で、貧乏くじを引いたのではないか?という内容です。
ずいぶん前に韓国「『SKハイニックス』の中国・無錫にあるファウンドリーはもう逃げられない」という件をご紹介しましたが、やはり逃げ損なって、その上、二進も三進もいかなくなることになりそうです。
自業自得もいいところですが、状況をご紹介します。
『インテル』から買ったら大赤字物件でした
Money1でも以下の記事でご紹介しましたが、『SKハイニックス』は『インテル』のNAND型フラッシュメモリー事業を買収し、2021年末時点で『Solidigm(ソリダイム)」として完全子会社化し……これが大失敗な結果となりました。
まず、この事業は大きな赤字を出し、『SKハイニックス』の経営の足を引っ張るものとなったことです。
『ソリダイム』を含むアメリカ合衆国『SK hynix NAND Product Solutions Corp』は、2022年第3四半期の当期純利益が「-6,133億ウォン」の大赤字。2022年通期では「-8,717億ウォン」まで赤字が膨らむと予想されています。
これで世界第2位のメモリー半導体メーカーに躍進だ!と喜んだのもつかの間、大赤字を抱え込むことになったのです(その上シェアは落ちた)。
一応念のために付記しますが、赤字事業なのは『インテル』の決算で明示されていました。『SKハイニックス』は分かっていて買収し、2022年には黒転するなどとうそぶいていたのです。
――結果からいえば全くのウソになりました。
クジではありません!「ハズレ」なのは分かっていた
さらに懸念は、この『インテル』から買収した事業がこの先も続けていけるのか?です。『日本経済新聞』の同記事はこの点を「貧乏くじを引いた」と表現しています。
というのは、このNAND型フラッシュメモリー事業は中国・大連にファウンドリーを有しているのですが、例のアメリカ合衆国商務省による「対中国半導体締め付け強化」で「おしまい」になるかもしれないのです。
2022年10月に、『BIS』(Bureau of Industry and Securityの略:合衆国商務省産業安全保障局)は合衆国の技術を使った半導体、および半導体製造装置を中国内に入れることを制限すると公表しました(Money1では以下の記事でご紹介しています)。
中国で事業を行っている多国籍企業については案件ごとに要相談としましたが、なんのことはない「合衆国に首ねっこをつかまれた」だけです。
すでにニュースでご存知の方も多いでしょうが、外信には日本とオランダが合衆国の要請で「中国に半導体製造装置を輸出制限することに合意した」との報道がでています。
報道は正しいと思われますので、オランダはもちろん『ASML』、日本は『東京エレクトロン』などの最核心のメーカーが中国に「輸出しませんよー」となるでしょう。
『SKハイニックス』が買収した大連のファウンドリーはこの先もまともに稼働できるでしょうか? 半導体製造ラインはメンテが行えるのでしょうか?
非常にダメっぽいことは火を見るよりも明らかです。そして、逃げられません。中国が「中国外に工場移転」なんてことを許すわけがないからです。
クジではありません!「ハズレ」なのは分かっていた
『日本経済新聞』は「貧乏くじ」と書いていますが、これには賛成できません。なぜなら2020年10月に『SKハイニックス』がこの買収を決めたときには、トランプ大統領によって「中国に半導体を渡すな戦術」が開始されていたからです。
このまま正面衝突を続ければ、中国にある先進のファウンドリーがどうなるのかなど予測がついてしかるべきだったのです。
もう何度だっていいますが、『SKハイニックス』の中国・無錫工場を増設するなどと言い出したときに(中国法人に3兆2,999億ウォンを投じた後でしたが)Money1ですら「逃げられないぞ」と記事を上げたくらいです。なぜ、経営に携わる専門家が中国リスクを無視したのか全く理解できません。
無錫しかり、その後に行った『インテル』の事業買収しかり、です。
くじなら当たることがありますが、引く前から「ハズレ」なのが分かっていたはずで、……ですので、これは「貧乏くじを引いた」などと形容はできません。
完全無欠の自爆と呼ぶべきです。
『インテル』に追い銭を払う必要がある!
さらに傑作なことに、この赤字で将来稼働できなくなる可能性の高いファウンドリーの買収代金を『SKハイニックス』は完納していません。
そもそも当時の契約は、
第2次クロージング(2025年03月):2兆3,000億ウォンを支払う
2025年03月まで大連工場の運営権は『SKハイニックス』には譲渡されない
※当時のドルウォンレートでの計算(買収額は90億ドル)
と報道されていました。現在も当時の契約のママであれば、『SKハイニックス』は2025年03月まで運営権はないのに、2022年には赤字を計上し、かつ、まだ「2兆3,000億ウォン」を支払う必要があります。
『インテル』としては、すでに売却契約を交わしているので、その後のファウンドリーがどうなろうが知ったことではありません。
恐らく『インテル』からすれば、「中国工場をどうしようかなあ、もうからないしなぁ」と思案しているところに、韓国から絶好のカモが来たのです。
合衆国からしても、これが『インテル』のファウンドリーなら「どうすんべ」だったでしょうが『SKハイニックス』のファウンドリーなので情け容赦のない手が打てます。
「中国から逃げろって、オレずっと言ってたよね」です。
『SKハイニックス』が陥った事態は自業自得という他ありません。よせばいいのに合衆国の姿勢を甘く見た結果です。世界の流れを読み違えた致命的なミスで、これは経営者の無能に帰される事案です。
年末ですし、「『SKハイニックス』アウト~」と藤原マネージャー(現取締役)の声が聞こえてきそうな感じではあります。
(柏ケミカル@dcp)