2024年度の夏の甲子園大会で、京都府代表となった『京都国際高校』(京都国際中学高等学校)が優勝しました。
同行は、1947年に開校した在日コリアン向けの『京都朝鮮中学』ですが、2003年に学校法人『京都国際学園』と『京都国際中学高等学校』を設置。京都府知事から中学校および高等学校として認可されたことでいわゆる「一条校」になりました。これをもって翌2004年に開校したという経緯です。
『京都国際高校』が甲子園で決勝に進出したときには、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領も――
「(前略)韓国系の『京都国際高校』が決勝戦に進出したことは実に素晴らしいことです。とても誇らしく思います。精一杯、応援します」
――とエールを送りました。
見事に優勝したわけですから、『京都国際高校』は大統領の期待にも応え、偉業を達成しました。
『京都国際高校』の夏の甲子園大会での優勝について、韓国メディアでも大きく報じられました。その報道では「韓国人の勝利」「韓国の魂が勝った」といった声が散見されました。
しかし、その声に対して「ヘンじゃないか?」とカウンターの報道が出ています。『朝鮮日報』です。当記事から一部を引いてみます。
先月、『京都国際高校』の日本の甲子園大会優勝で大韓民国は賑やかだった。
実は数年前まであまり知られていなかった小規模な高校野球部が全国大会で優勝とは、すごいことだ。
ところが、韓国側のメディア報道を見ると何か変だった。『京都国際高』の優勝が「韓国人の勝利」だというのだ。どのラジオのアナウンサーも興奮して「韓国の魂が勝った」と声を高めた。
日本でそれを「韓国人の勝利」と見る見方はない。
日本では『京都国際高』の優勝は京都の誇りだ。甲子園球場に応援してきた2,800人の応援団もほとんど京都府の住民と学生だった。
意外に在日韓国人の間でも京都国際高校を韓国の学校と勘違いしている人がいるが、『京都国際高校』は法律的にも実質的にも日本の学校だ。
20年前から日本文部省の認可を受け、文部省指定の学習指導要領に基づいて教育を行い、日本政府の支援金を受けている。
160人ほどの生徒もほとんどが日本人で、野球部は61人ほぼ全員が日本人だ。
実際、韓国の高校野球もほとんど忘れ去られたのに、韓国人が日本の高校野球に興味を持つというのは不思議だ。
恐らく本当の理由は、韓国語の校歌が放送され、その歌詞に「東海」という言葉が入ったからではないだろうか。
「都合な真実」を言えば、甲子園で「東海」が鳴り響いたからといって、日本人が「日本海」を「東海」に変える可能性はゼロだ。
日本人の中で「東海表記」を支持する人を見たことがない。
実際、日本の地図にはすでに「東海」がある。
愛知県をはじめ、太平洋に面した4県をまとめて漢字で「東海」と書き、「東海」と読む。
すでに「東海」があるのに、その反対側にまた「東海」と表記するだろうか?
(後略)
記事の書き手は『関西外国語大学』国際関係学のチャン・ブスン教授です。チャン教授は韓国の外交部で書記官を務めたことがありますが、非常に冷静に日本の様子を伝えていらっしゃいます。
以下のような指摘もあります。
(前略)
東海の名称が入った韓国語の校歌に民族的な誇りを感じた方には申し訳ないが、もう一つ「不都合な真実」がある。『京都国際高校』野球部の生徒の相当数が校歌の意味を知らないという。
ある生徒は歌詞をよく知らず、口先だけで歌っているという。
日本の多くのメディアの報道内容を総合してみると、野球部員のほとんどが野球が好きで京都国際高校に来たのであって、特に韓国に興味があるから来たわけではないという。
例えば、野球部員61人中、唯一の韓国籍である金本祐伍(カネモトユゴ)君でさえ、『京都国際高校』に入学するまでは自分が韓国籍であることを知らなかったという。
(後略)
チャン教授の結論は以下です。
(前略)
「韓国の魂」が『京都国際高校』の優勝の原動力であればいいのだが、残念ながら真実は正反対だ。『京都国際高校』の優勝は、『京都国際高校』が「韓国」という狭い枠を捨て、日本社会の中に飛び込み、競争と集中をモットーに徹底的に勝利のための戦略を追求したからこそ可能だったのだ。
(後略)
韓国メディアが絶叫した「韓国人の勝利だ」「韓国の魂が勝った」は、全然違うよ――というわけです。
チャン教授のおっしゃるとおり、在日民族学校を出自とする学校が日本の高校の一つとなり、在日韓国人の球児が日本の高校野球の頂点となる大会で優勝を経験する――その多様性をこそ褒めるべきでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)