現代戦に慣れていない兵士なのでロシア軍は弾除けに使うつもりだ――という推測が出ていたのですが、やはりひどい話になっています。
北朝鮮軍兵士がウクライナ戦争のクルスク方面に投入されたのですが、早くも「1人を残して全員が死亡」という情報が出ました。
↑『ブルー・イエロー』公式サイト/Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください/スクリーンショット
情報を出したのは、リトアニアを拠点とする非営利団体『ブルー・イエロー』のJonas Öhman(ヨナス・オーマン)代表です。
2024年10月28日、オーマンさんは、『LRT』(Lietuvos nacionalinis radijas ir televizija:リトアニア国営ラジオ・テレビ放送)のインタビューに答えて、
「10月25日、クルスクでわれわれが支援するウクライナ軍部隊と北朝鮮軍の間で初めて接触があった」
「北朝鮮兵士たちは1人を除いて全員が死亡した」
「唯一の生存者はブリヤート人の身分証を所持していた」
と述べました。
Money1でも先にご紹介したとおり、「ブリヤート」は、ロシア連邦内の自治共和国であるブリヤート共和国や、そこに住むブリヤート人を指します。ブリヤート人は、モンゴル系の民族で、ロシア、モンゴル、中国の国境周辺に住んでいます。主にロシアのシベリア地域に位置するブリヤート共和国がその中心です。
「ブリヤート」大隊はブリヤート人で編成された部隊ということでしょうが、その実は北朝鮮人部隊というわけです。
それにしても、オマーンさんの情報が正しいのであれば、身分証を確認できているということは、唯一の生存者の身柄はウクライナ軍に確保されたことになります。彼は捕虜になり、自由の国に脱出できるのでしょうか。
韓国と北朝鮮の兵器がウクライナで激突する
38度線の南側で北朝鮮とにらみ合っている韓国ですが、2024年10月29日、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。
尹大統領は電話会談で、
「北朝鮮がロシアに対する軍事兵器支援を越え、特殊部隊の派遣という危険で前例のないことを行っている」
「ロシア-北朝鮮の軍事密着の直接的な利害関係者である韓国とウクライナが今後緊密に疎通し、対応を調整していきたい」
「これから戦場の状況を綿密に観察しながら、実効的な段階的対応措置を取っていく」
――と述べています。
また、韓国からウクライナに155ミリ榴弾砲を送る――という話が(あらためて)出ています。
これは、北朝鮮がロシアに兵力を派遣したことへの対応策として検討されているもの。韓国はこれまでアメリカ合衆国を経由して榴弾砲を間接的にウクライナに支援していましたが、今後は直接支援の可能性が取り沙汰されるようになりました。
韓国製の榴弾砲が、同じ朝鮮民族の兵士をウクライナで砕くことになるのです。
北朝鮮製のミサイルがウクライナで使用されていますから、極東・朝鮮半島の南北、すぐ側で対峙する両国の兵器がユーラシア大陸をはるかに西進したウクライナの地で、投射し合う事態になりました。
なんという歴史の皮肉でしょうか。
脱北者の悲痛な声「オレたちをウクライナに派遣してくれ!」
韓国内には、北朝鮮軍から脱出した方がいらっしゃいますが、この人々にとって、北に置いてきた若い兵士がウクライナ戦争で砕かれるのはいたたまれないことです。
脱北軍人さんの間からは、「オレたちをウクライナに派遣してくれ」という声が上がっています。
韓国メディア『世界日報』の記事から一部を以下に引用します。
『北朝鮮同胞直接支援運動』のイ・ミンボク代表は、10月27日、自身のSNSに、
「ウクライナよ、われわれを受け入れてください」
というタイトルで公開書簡を投稿した。
彼は「北朝鮮が傭兵を派遣した以上、われわれがウクライナに行く正当性は十分だ」と述べ、脱北者がウクライナで支援活動を行う必要があると訴えた。
イ代表は、「脱北者たちの存在だけでも北朝鮮軍に大きな影響を与える。北朝鮮軍のことを一番よく知るのは私たちだ」とし、脱北者が発信するメッセージが北朝鮮兵士の心に深く響くだろうと述べた。
さらに彼は、
「心理戦や捕虜相談、治療支援を言い訳にはしない。ただ、北朝鮮の独裁政権に従わされている同胞を助けたいだけだ。
それはウクライナの戦況にも有益だ」と主張した。
最後に、「ウクライナ政府が我々の真心を受け入れてくれることを願う。ゼレンスキー大統領も快く受け入れてくれると信じている」と述べた。
また、北朝鮮の政治将校出身であるシム・ジュイル牧師が率いる脱北キリスト教軍人会も「脱北者はウクライナの前線に駆けつけたい」という声明を発表している。
(後略)
脱北者の皆さんの気持ちは分かるのですが、もし何かアクシデントがあって、ウクライナの地に赴いたみなさんがロシア軍と戦うようなことになる――と、これは韓国がウクライナ戦争に参加した――と認定されかねません。
さすがに尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領、またアメリカ合衆国が許可しないでしょう。
ただ、朝鮮半島で行っている「拡声器放送」をウクライナの地で行い、北朝鮮軍派遣兵士の集団投降を促すというのはいい手かもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)