韓国の皆さんは「他罰主義」(オレは悪くない=誰か他のヤツが悪い)の権化ですが、ウォン安においてもそのようです。

ウォン安が進行しているのは、韓国のせいではない、誰か他のヤツが悪いのだ――とするかのような、おっかしな記事を『朝鮮日報』が出しました(上掲は同記事の紙面/スクリーンキャプチャー)。
この『朝鮮日報』のおっかしな記事は「ウォン安が進行している主犯はNDFだ」などと主張しています。しかも、『韓国銀行』の申鉉松(シン・ヒョンソン)総裁が「NDFが主犯と名指しした」という記事に仕立てています。
二重の意味でおっかしな記事で、もし申鉉松(シン・ヒョンソン)総裁が本当にそんなことを言ったのなら、李昌鏞(イ・チャンヨン)さんの後を受けて総裁に就任した申鉉松(シン・ヒョンソン)さんの総裁としての適正を疑わざるを得ません。
Money1でも先にご紹介したとおり、NDFはそもそも投資家のニーズがあるから行われている取引です。
吹けば飛ぶようなウォンというローカルカレンシーについては、オフショアの直物市場がないのは当然であって、それを補完する意味で使っているのです。
ですから、今になってNDFがウォン安を主導しているなどと述べることは、韓国金融当局のこれまでの無為無策を棚に上げた発言であって、まさに他罰主義としか評しようがありません。オレが悪いんじゃない――という意味のない主張です。
いや、そもそもオメーが悪いんだよ――です。
NDFが発達したのは、韓国の金融当局が規制を敷いてきたのが原因であって、もしNDFが主犯などという主張が正しいとしても(正しくありません/筆者は全然そうは思いません)身から出たサビではないのでしょうかね。
そもそも論を続けます。NDFの利用が減ればウォン安になりにくくなる――という因果関係が成立しません。
NDFが減っても、ウォンを売りたい主体とドルを買いたい主体が存在する限り、その需要は現物・先物・スワップなど別の市場へ移るだけの話です。
要するにウォンが高くなるか安くなるのかは「市場が決めること」であって、NDFはその手段に過ぎないのです。
この記事内ではソロスさんがイギリス政府を屈服させたエピソードを連想させていますが、これなど明らかに「投機筋がNDFを用いてウォン安を主導している」とミスリードしたい、愚か極まる筆です。
「ばっかじゃなかろか」としか言えません。
韓国の金融当局は恐らく、
NDFだけに依存しなくてもウォンを取引できるようにする
海外投資家の取引コストを下げる
韓国国内銀行の取引参加を増やす
ウォン決済を韓国銀行の決済システムへ接続する
取引・決済データを当局が把握しやすくする
――を達成しようとしていますが……。これは(韓国にとって)重要な改革かもしれませんけれども、NDFを国内へ吸収することとイコールではありません。
NDF市場が縮小するとしても、それには、
1.オフショアの現物ウォン市場が十分に機能する
2.受渡し可能な先物為替市場に流動性が付く
3.海外投資家がNDFより低コストだと判断する
4.銀行が十分な信用枠と価格提示を提供する
5.市場参加者が新制度を信頼して取引を移す
――という過程が必要であることは言うまでもないでしょう。
申鉉松(シン・ヒョンソン)総裁が期待するとおり、短期間で移行が進むでしょうか?
中央銀行総裁が「NDFは価格形成に影響する」と述べるのであれば、学術的にも政策論としても理解できます。
しかし、それを「高為替レート(ウォン安)の主犯はNDFだ」という話にまで拡大するなら、因果関係の立証が必要になるでしょう。
相関関係(correlation)があるというのと、因果関係(causation)があるというのは別の話です。「NDFを国内市場に取り込めばウォン安は改善する」――もしそのように主張するなら、因果関係を立証した上で行うべきです。
おっかしな記事ではありますが、ただし興味深いものではありますので、もし興味と時間があれば、ぜひお読みください。
(吉田ハンチング@dcp)





