2026年10月26日、韓国の金融監督院が非常に興味深い資料を公開しました。
Money1でもご紹介したことがある「国民参加成長ファンド」の現状です。
そもそも韓国は、どの政権でも「◯◯ファンド」「◯◯基金」なるものをやたらと組成するヘンな国です。李在明(イ・ジェミョン)政権でも、「国民参加成長ファンド」を組成しました。
李在明(イ・ジェミョン)政権が先端戦略産業の育成を目的として設けた150兆ウォン規模の政策金融事業に、一般国民の資金を取り込み、産業成長による利益を国民にも還元しようというのが、「国民参加成長ファンド」の設立目的です。
国民参加成長ファンドの組成目的は、主に3つにまとめることができます。
❶第一の目的は、韓国の先端戦略産業に成長資金を供給することです。民間金融だけでは十分な資金を確保できない企業を支援し、韓国経済の成長力を高めようとしています。
❷第二の目的は、一般国民を産業育成のための投資に参加させることです。企業の成長によって得られる投資利益を、一般投資家にも還元するという考え方です。
❸第三の目的は、政府の損失負担と税制優遇によって、民間資金を呼び込むことです。政府資金だけに頼らず、国民の金融資産も産業育成に活用しようとしています。
例えば、第1次ファンドの資金構成は以下のようになります(韓国金融委員会の2026年05月21日付発表による)。
一般投資家など……6,000億ウォン
政府の財政資金……1,200億ウォン
子ファンド運用会社……別途、後順位出資
合計:7,200億ウォン+運用会社出資分
ご注目いただきたいのは「政府資金」です。
金融委員会は、政府の1,200億ウォンを後順位出資として組み入れ、一般投資家の損失を優先的に吸収すると説明しています。
「後順位出資」というのは、投資で損失が発生した場合、他の出資者よりも先に損失を負担する出資方式です。
例えば、100億ウォンのファンドに、一般投資家が80億ウォン、政府が20億ウォンを出資したとします。
10億ウォンの損失が出た場合
⇒政府が20億ウォンの出資から損失の全額負担し、一般投資家の元本は守られます。
30億ウォンの損失が出た場合
⇒政府が出資した20億ウォンが全額失われ、残り10億ウォンは一般投資家が負担します。
※政府の出資分が損失を優先的に吸収する契約の場合。
今回の「国民参加成長ファンド」(第1次ファンドの場合)では、政府の1,200億ウォンと運用会社の出資金が後順位に置かれ、一般投資家の資金を優先的に保護するという仕組みになっています。
ただし、政府の出資金を超える損失が発生すれば、一般投資家も損失を負います。元本保証ではありません。
これが大問題です。要するに税金で投資家の損失を補填するという仕組みを持っているわけですから。簡単にいえば「ばっかじゃなかろか」です。
投資家の損失負担を税金で賄う仕組み
ここからが今回の本題です。
金融委員会が公表した「国民参加成長ファンド」の現況を見てみましょう。以下にプレスリリースの摘要を引用します。
<資産運用報告書の主な内容>
第1次国民参加成長ファンドは、06月15日に計10本の子ファンドで投資が開始されて以降、報告書の作成基準日である09月11日までに、子ファンド全体で合計約46.3%の資金が投資されました。**現金性資産を除いた投資金額の約80%が先端戦略産業分野に投資※**され、ファンドの組成趣旨に沿って運用されています。
また、上場株式(28.4%)、上場メザニン(10.1%)、非上場株式(0.7%)、非上場メザニン(4.6%)など、さまざまな資産に分散投資されていることが確認されました。
※(投資比率)先端戦略産業35.9%、先端戦略産業以外7.9%、債券2.5%、現金性資産49.7%など。
09月11日時点における3カ月間の**累積収益率は約0.50%※**です。
**子ファンドごとの収益率には、マイナス19.86%からプラス3.15%までの差※※**がありますが、政府の財政資金と子ファンド運用会社の後順位出資金が約20%前後の損失を優先的に負担することにより、ファンド全体の合計ではプラスの収益率を記録しました。
(後略)
3カ月間の累積収益率は約0.50%とプラスになっていますが、これは前記の「後順位出資金」というクッションがあるから達成されています。
金融委員会自身が、「後順位出資による損失吸収が、プラス0.50%という収益率につながった」と説明しているのですから。つまり、本来な損失が出ているのではないのか?――です。
今回のファンドの最大の特徴は「政府が損失を負担する」という仕組みにあります。
政府は、一般国民に先端産業への投資に参加してもらうため、投資リスクを軽減する仕組みを採用しました。具体的には、政府が1,200億ウォンを後順位で出資し、各子ファンドの損失を出資条件に従って20%の範囲で優先的に吸収します。
――要するに、政府が財政資金を使って投資リスクの一部を引き受けることで、一般国民の投資を促そうとしているわけです。
意図は分かりますし、政策金融の手法としては理解できますが、投資が失敗した場合には公的資金が毀損するという問題があります。しかも、すでに始まっているのではないのか――と見ることができます。
(吉田ハンチング@dcp)






