2020年12月04日、『韓国銀行』から10月の「国際収支統計(暫定版)」が出ました。簡単にいうと「経常収支」は「116億5,790万ドル」の黒字。 至極簡単にいえば、海外との取引で「約117億ドル」もうかったということです。
で、韓国メディアではさっそく
10月の経常収支は116億6,000万ドルの黒字を記録した。
これは、6カ月連続の黒字で、37カ月ぶりに最大規模だ。
(後略)
などの報道が出ています。さて、なぜここまで利益が出たものかを見てみましょう。
「経常収支」「貿易収支」の中身を見てみましょう
まず、経常収支を構成する「貿易収支(輸出 – 輸入)」「サービス収支」「第1次取得収支」「第2次所得収支」に分解して見ると以下のようになります。
まず、「貿易収支」が「101.5億ドル」と大きな黒字になっています。この貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めますので、輸出入の金額を確認してみます。
上掲は2019年01月~2020年10月の輸出・輸入金額の推移です。今回公表されたデータ(グラフ右端)によると、輸出は「469.9億ドル」輸入は「368.4億ドル」です。ブルーの輸出金額のラインに注目してください。
コロナ禍の中、ずいぶん回復したように見えますが、2019年10月は「491.2億ドル」あったのに実は「21.3億ドル」も減少しているのです(4.3%減少)。
さらにオレンジの輸入金額のラインに注目してください。ブルーの輸出金額に比べてオレンジのラインは回復していません。つまり韓国の輸入力というか海外からの購買力が回復していないのです。
その証拠に2019年10月には輸入金額は「410.9億ドル」ありました。今回公表された2020年10月は「368.4億ドル」ですから「42.5億ドル」も減少しています(10.3%減少)。
つまり、何度もご紹介していますが、輸出の回復に輸入の回復が追いつかず、不況型黒字が継続しており、そのために黒字幅が拡大しているのです。
貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めますので、グラフでいえばブルーのラインとオレンジのラインの「差」がそのまま貿易収支の金額を表していることに注目してください。
これまでと比較して、09月、10月はその差が拡大していますね。これがまさに不況型黒字の証左です。
他の3つの要素を確認してみましょう
で、今回の公表データによれば、貿易収支の黒字よりも経常収支の黒字が大きいですから、「サービス収支」「第1次所得収支」「第2次所得収支」で、さらに黒字が積み上がっているわけです。これは韓国経済にとって珍しいことです。
何度も掲載していますが、以下をご覧ください。2017年01月~2020年08月の「経常収支」の4つの要素の平均金額を表したものです(単位:億ドル)。比較のためにその下に、今回公表された2020年10月の経常収支の構造図をもう一度掲載します。
お分かりになるでしょうか?
平均:76.9億ドル
2020年10月:101.5億ドル
サービス収支
平均:-22.6億ドル
2020年10月:-6.6億ドル
第1次所得収支
平均:6.6億ドル
2020年10月:24.5億ドル
第2次所得収支
平均:-5.0億ドル
2020年10月:-2.8億ドル
貿易収支が大きく増加した理由は上記のとおりですが、「サービス収支」が普通なら「-22.6億ドル」ほどのところを「-6.6億ドル」で済んでいます。
また、第1次所得収支が普通なら「6.6億ドル」ほどなのに「24.5億ドル」と黒字幅が拡大しています。これが、貿易収支にさらに黒字を積み上げられた理由です。
つまり、
第1次所得収支:黒字幅が拡大した
というわけです。では、なぜこうなったのでしょうか?
サービス収支の赤字幅が抑えられた理由は海外との交通が制限され、海外旅行やそれに付随する消費活動も減少するなど、海外とのサービスの取引が著しく縮小したためです。
第1次所得収支の黒字拡大は、世界的な金融緩和を背景に投資の収支が大きく黒字になったためです。「Investment Income」が「24億4,850万ドル」のプラスとなっています。
2020年10月の経常収支は特筆すべき結果でしょうか?
というわけで、韓国の2020年10月の経常収支を分解して見てみましたが、いかがだったでしょうか。
という惹句が韓国メディアに踊っていますが、そもそも「黒字じゃないと韓国経済は立ちゆかない」わけですから、「○カ月連続」で大騒ぎすればするほど危ない感じがして良くないのではないでしょうか。
という惹句については、大本が「不況型黒字」で黒字幅が拡大していることによって達成されたわけですので、特筆すべきことだろうか――ではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)