これも半導体戦争が継続される中での一幕といえそうです。
一般にはあまり知られていませんが、韓国に『マグナチップ』という半導体企業があります。
同社は中国のPEF(プライベート・エクイティ・ファンド)『WiseRoadCapital(ワイズロードキャピタル)』による買収(14億ドル/約1,534億円)に応じることになりました。
もともと韓国『ハイニックス半導体』の一部門でした(非メモリー事業部)が、海外のPEFに買収されて今の『マグナチップ』になりました。同社の株式は、2011年にアメリカ合衆国ニューヨーク市場に上場されています。
『ワイズロードキャピタル』は29ドルで株式の公開買い付けを行います。買い付けを行った後、『マグナチップ』は上場廃止となる予定です。
↑中国『ワイズロードキャピタル』の株式買い付けを明らかにしたプレスリリース
で、問題は韓国内で中国への技術流出への懸念の声が挙がっていることです。大統領府への国民請願も始まっています。
『マグナチップ』の主力製品はOLED(有機EL)用のDDI(ディスプレー駆動チップ)ですが、DDIは別に韓国企業の独壇場というわけではありません。強力な台湾メーカー群がありますし、中国本土の企業もDDI生産に乗り出しています。
ただし、中国本土企業と比較して、OLED用のチップに関しては韓国企業に一日の長があることは否めません。『マグナチップ』はOLED用の開発を2003年に開始し、2007年に世界初のOLED用DDIチップを生産開始したとしています。同社はこの分野については20年近くの歴史を持つわけです。
この技術と経験が中国へ流れるのは「けしからん!」というのが、懸念を表明している韓国の人の意見です。
読者の皆さんもご存じのとおり、韓国は、中国企業の追い上げに苦慮している状態。中国が技術のキャッチアップを進めるにつれ、韓国企業は中国企業に駆逐されるようになっています。
まして現在は半導体戦争のまっただ中。合衆国は中国に半導体を渡さない方向で変わりません。日本、台湾も合衆国に協力しています。そんな中、半導体製造企業を中国のファンドに売り渡そうというのです。
さて、韓国企業はOLEDの牙城を守り切れるでしょうか。OLEDは韓国に残ったわずかな高シェアを誇れる製品。もしかしたら、この買収を機に韓国企業はシェアを徐々に減らして転落するかもしれません。液晶ディスプレーのシェアを中国『BOE』に食い破られたように。
国民請願の方は相手が中国なので、文在寅大統領が声を上げる可能性はほぼゼロです。なにせ中国には何も言えない政権ですので。
(吉田ハンチング@dcp)