韓国は、家計負債の異常な伸びが注目され、これがデフォルトの導火線になるかもしれないと指摘されています。しかし、政府・家計・企業の三部門のうち、まだしも負債の状況がまともなのは「企業負債」だけです。
読者の皆さまもご存じのとおり、韓国では文在寅大統領の下、政府負債もまた異常な速度で増加しました。政府負債の対GDP比は約50%まできています。
先にご紹介した、政府負債の数字を再度以下に挙げてみます(やっと企画財政部からデータが出た)。
D1:846兆6,000億ウォン(約81.3兆円)
D2:945兆1,000億ウォン(約90.7兆円)
D3:1,280兆ウォン(約122.9兆円)
D2の対GDP比率:48.9%
(2019年から6.8%上昇)
先代の朴槿恵(パク・クネ)大統領、2016年には「626兆9,000億ウォン」でしたので、4年間で「219兆7,000億ウォン」の負債を増やしたわけです。
大した成果だといえるでしょう。この負債増について韓国メディア『韓国経済』に非常に興味深い指摘が出ていますのでご紹介します。
『韓国経済』とシンクタンク『FROM 100』が共同で主催した大統領選挙公約検証討論会が行われ、次期大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)さんと尹錫悦(ユン・ソギョル)さんの公約について検証を行ったのです
――結果、韓国の国家財政が大変なことになるぞ、という指摘が出ています。記事から一部を以下に引用します。
(前略)
検証委員が財政準則など中長期的管理目標の必要性を強調するのは、韓国経済が急速に危機に陥る可能性があるという点だ。キム教授は「8%台の支出増加率が続く場合、約8年後に国家的なデフォルトに襲われるという展望が出ている」とし、「国家債務比率の増加速度を見ながら支出管理をしなければならない」と強調した。
(後略)
先にご紹介したとおり、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんの属する『国民の力』は「50兆ウォン」を給付、李在明(イ・ジェミョン)さんの属する『共に民主党』は「100兆ウォン」を給付すると、公約化した状態です。
簡単にいえば、ばらまき合戦のようになっているのですが、この50兆、100兆という資金をどこから出すのか、財源については特に明確にはなっていません。
これでは識者、学者の皆さんも黙ってはいられないでしょう。
さらに、政府負債を管理しなければならない韓国政府の態度も実にいい加減です。
Money1でもご紹介したとおり、政府が守るべき「財政準則」も2020年10月にすったもんだの揚げ句、企画財政府が出しましたが、「これを法律化する」と言っていたのに、1年以上たつ現在も、いまだ法制化できていません。
李在明(イ・ジェミョン)さん、尹錫悦(ユン・ソギョル)さん、どちらが大統領になっても、少なくとも2022~2023年は拡張財政の大盤振舞いが続くと覚悟しなければなりません。
「8%台の支出増加率が続く場合、約8年後に国家的なデフォルトに襲われる」という上掲教授の予測が当たりますかどうか。8%台の支出増加率がたとえ続かなくても、かなり危ないことになるような気もいたしますが……。
とりあえず、ここまで政府負債が対GDP比で増加しましたので、気になるのは世界的格付け会社『S&P』『Moody’s(ムーディーズ)』『Fitch(フィッチ)』が韓国の格付けをどうするかです。
毎年、韓国政府と協議してそのたびに企画財政部が「評価を維持!」とプレスリリースを出しています。さすがに数字が悪化しているので、2022年度はゴニョゴニョして……でなんとかなるとは思えないのですが。
(吉田ハンチング@dcp)