「捕まりたくないでござる」的な話です。
2022年03月16日に予定されていた文在寅大統領と次期大統領尹錫悦(ユン・ソギョル)さんの会合は流れ、一応「延期」と発表されていますが、いつになるのか決まりません。
これは「人事権」についての問題で合意ができないからとされていますが、18日になって韓国メディアから「ことの本質」を突く興味深い報道が出ました。
「鑑査院」の人事について紛糾してこれが問題になっている――というのです。
鑑査院の最高ボードである監査委員会。定員7名のところ現在2名ぶんが空席です。
「この2名の人事を現文政権が行う」と青瓦台・大統領府が主張し、尹錫悦(ユン・ソギョル)次期政権側が反発。
この点が最大の焦点になっていると報じています。
政権の末期になって監査委員会に文政権の息のかかった者を送り込もうというのは、文政権の悪あがきです。姑息なやり口と評してもいいでしょう。
なぜ姑息なのかは、「鑑査院」について知れば分かるのです。
鑑査院は政府関連団体・行政機関を監察する組織である
日本人にはなじみのない韓国の鑑査院ですが、これは大統領直属の組織です。韓国憲法の第97条および第99条では以下のように定められています。
第97条
国家の歳入・歳出の決算、国家および法律が定めた団体の会計検査と行政機関および公務員の職務に関する監察をするために大統領の下に監査院を置く。
第99条
監査院は、歳入・歳出の決算を毎年検査し、大統領と次年度国会にその結果を報告しなければならない。
面白いのは、大統領の直属の組織なのですが、鑑査院法第2条において「職務に関しては独立の地位を有する」と定められていることです。
第2条
一.監査院は大統領に所属するが、職務に関しては独立の地位を有する。
二.監査院所属公務員の任免、組織および予算の編成においては、監査院の独立性が最大限尊重されなければならない。
つまり、鑑査院というのは、「国に関連する団体、行政機関、務員の職務に関する監察」を行う権限を持ち、しかも大統領から独立して動くことが可能な組織です。
大統領の意を忖度することなく、政府関連組織だけではなく公務員、そこで働く人間についても調べ上げることができます。この監察作業を拒むことはできません。
Money1でもご紹介したことがありますが、原発「月城1号機」の廃炉決定が文在寅大統領の鶴のひと声で決まったという事実を調べ上げたのも鑑査院でした。産業通商資源部の公務員が監査作業に抵抗し、資料を不法に廃棄したという事実も発覚しました。
「調査されたくない」という姑息なやり口
つまり、鑑査院は政府関連機関、公務員が行ったことを徹底的に調査する権限を持ち、調査結果を報告する義務を有しているのです。
この鑑査院の最高意思決定機関が「監査委員会」です。
この政権末期になって、青瓦台・大統領府はここに「委員2名を任命する」というのです。
意図は明らかです。
「自分たちが何を行ったのか監査される」のを阻止しようとしている、としか考えられません。
大統領選挙前に政権交替を望む国民が過半数を超えていたことからも分かるとおり、文在寅大統領はじめ文政権を支えた人間に対する処断を求める声は多いのです。
それは文政権側も重々理解しており、自分たちの行状を調査されたらマズイことになると肌身で感じています。だからこそ鑑査院の動きを止めたいのです。
自分たちが高く吊されるのを止めるつもりです。姑息というほかありません。
(吉田ハンチング@dcp)