不動産価格の高騰によって、造れば高値で売れ、を繰り返してきた韓国不動産業界に真っ黒な暗雲です。
冗談抜きで不動産業界発の経済危機が懸念されています。
先にご紹介したとおり、『韓国レゴランド』の建設プロジェクトで江原道傘下の『江原中道開発公社』(GJC)が、事業資金を調達するために特殊目的法人(SPC)を設立して2,050億ウォン規模のABCPを発行したのですが、これが見事に不渡り。
短期資金調達市場が阿鼻叫喚の地獄絵図となりました。
金利が急騰して、短期資金がべらぼうな金利でしか集められなくなり、それどころか借り換えもママならなくなってきています。
短期資金調達が滞ることも問題ですが、『韓国レゴランド』と同様のスキームで償還不可になるSPCが多発しないかという点も懸念なのです。
PFベースの融資残高が150兆ウォンもある
実際、建設業界がPF(プロジェクトファイナンス)スキームでCPなどを発行して集めた資金が巨額に上るのです。韓国メディア『朝鮮日報』の記事から一部を以下に引用します。
金利が急騰して借りたお金を返済できない不動産開発事業が増え、地方中小建設会社が不渡り危機に追い込まれるなど不動産発経済危機警告音が鳴っている。
不動産開発事業に資金を提供した証券会社などの金融会社に不良債権が移動する可能性が大きくなっている。
金融圏が乱れながら市中短期資金金利が急騰し、そのような危機とは縁遠い会社までが貸し出し難を経験する状況が起きている。
20日、韓国銀行によると、金融圏の不動産プロジェクトファイナンシング(PF)融資残高は06月基準で112兆ウォンに達する。
満期が短いPF流動化証券などまで合わせれば150兆ウォン台までに達する。
(後略)
不動産PFでの融資残高が112兆ウォン、流動化証券まで入れると150兆ウォンに達するとしています。
好循環が反転したときには……
マンション開発などの計画が立ち上がると、目的のためのSPC(Special Purpose Companyの略:特別目的会社)を作ります。SPCはその事業(から生み出されるキャッシュフロー)を裏付けとして金融機関から融資を受けるのですが、その一方で資産流動化の手法を用いて、『韓国レゴランド』のようにABCPなどを発行するわけです。
不動産の需要が高く、価格も上がっているうちはディベロッパー側はいいことずくめです。
銀行や証券会社などSPCに突っ込んだ資金の回収も簡単で順調。莫大な利益を上げることができます。投資家もウハウハです。CPなら満期も1年未満(多くは3カ月など)と早いので利益もすぐに上げられます。
ところが、これが反目に出るとどうなるでしょうか。
現在の韓国のように、不動産の需要が減退し、価格が落ちる局面です。資金の回収が容易でなくなり、短期資金の返済に滞る状態に陥ります。金利が急騰していますから、借金の返済もママならなくなり、短期資金調達市場で借り換えもできなくなると……ドボン騒動ですね。
金利上昇で資金難へと圧迫される企業
『金融投資協会』によれば、2022年10月20日のCP(91日物)の金利は「4.1%」。4%を超えたのは、韓国通貨危機時の2009年01月末以来初めてのこと。
社債と国債の金利差、スプレッドは年初の2倍に拡大。つまり、それだけ企業の資金調達が困難になっているわけです。
興味深いのは、2022年第3四半期の信用格付けAを持つ企業の社債のうち売れなかったのが58%に達したとのこと。2021年の第3四半期はわずか1%に過ぎなかったのに、です。
上掲、『朝鮮日報』の記事は以下のように報じています。
(前略)
忠南地域で第6位の総合建設会社『ウソク建設』が最近1回目の不渡りを出し、PF偶発債務※のため『ロッテ建設』が18日、2,000億ウォン規模の有償増資を行うなど、不動産発ドミノ危機の懸念も大きくなっている。
(後略)※偶発債務というのは、現時点では債務ではないものの、一定の事由を条件に発現し、将来的には債務となる可能性がある債務のことです。
資金がタイトになるという大変にまずい状況です。「不動産発ドミノ危機」なるものが発生しないといいですが。
(吉田ハンチング@dcp)