2023年05月16日から2日間、韓国『民主労総』の建設労組が総ストライキ闘争を行っています。
↑YouTube『OhmyTV』チャンネル「ヤン・ギョンス民主労総委員長」
今回の「総ストライキ」の背景
Money1ではリアルタイムで触れなかったのですが、労働組合員であった方が自死された事件があって「これは尹錫悦(ユン・ソギョル)政権による殺人である」との主張の下に、『民主労総』は対政府闘争を予告。これを実行に移したのが今回のストライキです。
なぜ自死されたのかというと、先にご紹介した「労働組合に対する監査強化」のためです。
政府から補助金が出ているのに、法に定められた財務状況の報告義務を守らない労働組合が多く、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権はこれを正す方向で動き出しました。
政府からすれば当然の話で、どこにいくらお金を使ったのか、補助金は何に使われているのかは明確にされなければなりません。しかし、これまではお金の流れを隠す(報告しない)労働組合を見逃してきたのです。
実際に「報告書を提出せよ」と指導が行われると、報告書の表紙だけ出す、だんまりを決め込むなどとサボタージュが相次ぎ、業を煮やした政府は「(これ以上サボタージュを続けるなら)法に照らして処罰する」と宣言しました。
亡くなった方は、拘束令状の実質審査前に自死を選びました。それほど切羽詰まった事情だったのかはご本人にしか分かりませんが極端な選択です。
これをもって民主労総は政府に殺されたと主張し、対政府闘争を行うと予告しているのです。
このストライキは「労働運動」なのか?
自死された方は大変にお気の毒ではありますし、仲間が亡くなったことについて義憤に駆られるというのは理解できます。しかしながら、そもそも法に則っていない労働組合の運営が突っ込まれてのことなので、もし違法な実態があったなら法に依って修正すればよかったはずです。
また、違法な事実があったのなら、それは法に定められたとおり処罰されても仕方がありません。
今回のストライキについて、保守の砦『月刊朝鮮』が興味深い記事を出しています。『民主労総』の行うストライキは違法性がある――と。
『月刊朝鮮』の記事は以下のように書いています。
(前略)
今回の「総ストライキ上京闘争」の趣旨について、建設労組は「尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の公権力が建設労働者を社会的殺害で殺害した現実を知らせる」とし、「烈士(ヤン・ホイドン氏)の冤罪の死を社会に知らせ、公憤を集める広場の闘争を始める」とした。労働組合および労働関係調整法第2条第6項にストライキを定義した条項がある。
これによると、「『争議行為』とは、ストライキ・休業・職場閉鎖その他労働関係当事者がその主張を貫徹する目的で行う行為と、これに対抗する行為として業務の正常な運営を妨害する行為をいう」と規定されている。
つまり、ストライキは争議行為であり、「ストライキ」という言葉を使うには「争議行為」の要件に従わなければならない。
「争議行為」の要件は同法第41条第1項により「組合員の直接・秘密・無記名投票による組合員の過半数の賛成で決定しなければこれを行うことができない」と規定している。
建設労組の主張通り、今回行われるのが「ストライキ」であれば、その目的は労働関係当事者である会社側と労働者間の問題を扱わなければならず、ストライキに先立ち組合員投票を通じて過半数の賛成を得なければならない。
しかし、民労総はストライキの理由はこの二つを満たしていないようだ。
(後略)
『月刊朝鮮』は組合員の投票を行ったのかを確認していますが、答えは「NO」でした。
また、建設労組の会議資料と地域建設会社に配布された協力要請文書を入手して確認したところ、「尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は労働組合の活動を違法にする」「建設労組は中央執行委員会、中央委員会を通じて総ストライキ総力闘争を決議した」と書いています。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は「労働組合の活動は法の定める範囲内で行え」という動きをしているのであって、労働組合の活動を違法にしようとしているのではありません。
もし活動が違法と規定されるなら、現在の労働組合の活動が違法だからです。語るに落ちたとはまさにこのことでしょう。
また目的は「尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の退陣」であって、これは労働争議とはいえません。すなわち「ストライキ」という呼称を使うのはおかしい(違法)のであって、これは政治闘争です。
韓国の労働組合は非常に政治的な存在です。この総ストライキがどのような影響を与えるのか要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)