韓国メディア『中央日報』が2023年05月11日、同ホールディングスの洪錫炫(ホン・ソクヒョン)会長と日本の岸田文雄首相との特別対談をセッティングし、15日、その内容を記事としました。
韓国が「岸田首相の訪韓」に際して何を求めていたのかがよく分かる内容となっていますので、重要な質問ごとに、岸田首相がなんと答えたのかを以下に引きます。
まず韓国が主張した「岸田首相の謝罪が必要だ」についてです。
(前略)
洪会長:
韓国では強制徴用問題についてどのような進展したメッセージを出すか注目された。首相は「私自身、当時の過酷な環境で多くの方々が非常に辛く悲しい経験をしたことに胸が痛む」と述べた。苦心の末に出した表現と思われる。韓国政府と調整したのか、それとも自分で決めたのか。
岸田首相:
記者会見で歴史認識について(日本)政府のこれまでの立場を明らかにした後に述べた。これは私自身の考えを率直に述べたものだ。当然、韓国側と事前に調整したわけではない。
洪会長:
それでも「金大中・小渕宣言」の「痛切な反省と心からの謝罪」という表現を待っていた韓国民の期待には及ばなかった。もしかして、この表現を使わない、あるいは使えない理由があるのか。
岸田首相:
今回の会談でも、1998年10月に発表された共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として継承しているという立場は今後も揺るがないということを明確に申し上げた。このような日本政府の立場に加え、私自身の考えを私自身の言葉で率直に述べたものだ。このような私の姿勢や考えについて、多くの方に理解していただきたい。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』』「홍석현 “과거사 문제에 반성·사죄 표현을 안 썼는데…” 기시다 “역대 내각 계승 입장은 흔들리지 않을 것” [기시다·홍석현 특별대담]」
岸田文雄首相は謝罪をするべきでありませんし、絶対にしてはなりません。西田力先生が指摘しているとおり「強制性を認めた」ことになるからです。
日本からすれば「言わせんなよ、恥ずかしい」なのですが、訪韓した際にも新たなお詫びや謝罪をせずに、ガラをかわしました。
今回も上掲のとおりガラをかわしています。「正面からいかんかい!」という話もあるのですが、これが現在の日本政府の限界です。
「大人の対応」「政治的、大局を見たな決着」などとふんぞり返る政治家がいるかもしれませんが、正面から根本問題を解決しないことには、日韓関係は正常化などしません。このようなことを繰り返していると、いつかかさぶたが破れて血が吹き出すことになるのです。
次に、第三者弁済で決着した件についてです。
(前略)
洪会長:
今回の首脳会談は、両国関係が本軌道に乗る象徴的な会談と評価される。ただ、韓国内では、03月の強制徴用解法(原文ママ:引用者注)発表以降、日本側の対応措置が続かなければ、両国の未来協力基調が本格化することはできないという世論がある。
韓国政府が推進中の「第三者弁済案」と関連し、『三菱重工業』と『日本製鐵』など日本企業が参加する可能性は開かれていると言えるか。
岸田首相:
日本は韓国政府が発表した措置について、2018年の最高裁判決で非常に困難な状況にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものと評価している。これに基づき、尹大統領を日本にお迎えし、私自身も韓国を訪問する中で、安全保障や経済などさあまざま々な分野で多様で具体的かつ前向きな努力がすでにダイナミックに動いていると感じている。個々の民間企業の対応については、政府としてコメントすることは控えたい。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』』「홍석현 “과거사 문제에 반성·사죄 표현을 안 썼는데…” 기시다 “역대 내각 계승 입장은 흔들리지 않을 것” [기시다·홍석현 특별대담]」
先にご紹介したとおり、韓国としては第三者弁済に、被告とされた企業を参加させたいのです。しかし、これまた日本企業は絶対に行ってはなりません。
「事実上、国際法違反の判決どおりに賠償金を支払った」とみなされる可能性があり、これが後世に禍根を残すことになりかねません。
日本メディアは「雪解け」「日韓関係の正常化」などを浮かれていますが、とんでもない話です。「求償権」が『日帝強制動員被害者支援財団』に握られたママであることを見逃してはなりません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「求償権を行使するつもりはない」と日本で述べましたが、次の大統領がそれを継承するという保証はないのです。
また、企業が参加するかどうかは企業が決めることであって、政府が述べることでないのは自明のことです。洪会長の質問(というかこうなると詰問です)にも「(実質)知らんがな」と岸田首相はガラをかわしました。
次に、韓国側が常に持ち出す「金-小渕宣言」についてです。
(前略)
洪会長:
両国関係は過去の歴史を超え、未来へ向かっていかなければならない。「金大中・小渕宣言」25周年を迎える秋、これに匹敵する「尹・岸田、岸田・尹宣言」を期待してもいいのか。1963年、シャルル・ドゴール仏大統領とコンラート・アデナワー独首相が両国間の敵対関係を清算して結んだ「エリゼ条約」を思い出す。
岸田首相:
日本と韓国、そして日韓米間の協力が今ほど重要な時期はなかったと思う。このような中、さまざまな分野で協力していきたい。今後の具体的な外交日程や、会長がおっしゃった成果(尹-岸田宣言)について、現状では予測するのは難しいが、今回の訪韓を通じて尹大統領との信頼関係をより深め、地域情勢などについて話し合い、国際社会が直面している諸問題について協力しようということで意見が一致した。
緊密な連帯を通じて両国間の具体的な協力関係を進展させ、これを適切な形で発信していきたい。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』』「홍석현 “과거사 문제에 반성·사죄 표현을 안 썼는데…” 기시다 “역대 내각 계승 입장은 흔들리지 않을 것” [기시다·홍석현 특별대담]」
韓国が「金-小渕宣言」にここまで固執するのは「謝罪と反省」が入っているからです。日本に謝罪させたいからに他なりません。フランス-ドイツの例を持ち出しているのは、日本に対する嫌味です。このような挑発に日本は乗せられないことが重要です。
もう何度でもいいますが、「金-小渕宣言」は小春日和のような政治状況があってのこと。そんなものはすっかり失われており、日本に相対しているのは「筋金入りの反日国家」なのです。
「筋金入りの反日国家」韓国につけ込まれる隙を与えるような宣言など絶対にすべきではありません。
さらに、福島原発の処理水の問題です。
(前略)
洪会長:
大型事故を起こした原発から出た水を放流することは日常茶飯事ではない。今回の首脳会談で韓国の専門家の現場視察団の派遣を受け入れましたが、韓国では単なる視察にとどまるのではないかという指摘があります。
首相は先のソウルでの首脳会談で「韓国国民の健康と海洋環境に悪影響を及ぼすような排出は認めない」としたが、そのような次元で、もしかしたら日韓共同調査、共同検証まで受け入れる考えはあるか。
岸田首相:
日本は原子力分野の国際的な権威がある国際原子力機関(IAEA)のレビュー(レビュー・調査)を受けながら、高い透明性を持ち、科学的根拠に基づく誠実な説明をしてきた。日本の首相として、自国民と韓国国民の健康、海洋環境に悪影響を与えるような排出は認めないことを改めて申し上げたい。
今回の視察は、日韓両国がIAEAの権威を共通の前提としている。『IAEA』のレビューとアルプス(ALPS-多核種除去設備)の処理水分析に韓国の専門家と韓国の機関がそれぞれ参加して貢献していると聞いている。
今回は、これに加え、韓国の専門家現地視察団の派遣などを通じて、透明かつ科学的根拠に基づく説明を行うことで、ALPS処理水の海上放流の安全性だけでなく、「安心」についても韓国の方々の理解を深めていきたい。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』』「홍석현 “과거사 문제에 반성·사죄 표현을 안 썼는데…” 기시다 “역대 내각 계승 입장은 흔들리지 않을 것” [기시다·홍석현 특별대담]」
「日韓共同調査、共同検証まで受け入れる考えはあるか」と突っ込んできましたが、岸田首相は「『IAEA』の調査に韓国の専門家が参加しているじゃないか」と受けました。
韓国の専門家も参加している『IAEA』の調査結果を信用できないというのか?という回答です。
その上で「透明かつ科学的根拠に基づく説明を行う」としました。つまり「説明はするけど、日韓共同調査、共同検証まで受け入れる考えはない」ということです。
訪韓して「韓国の視察団を受け入れる」といういらん約束をしましたが、最後まで「韓国に対するただの説明会だ」という姿勢を貫かなければなりません。
最後に、呆れることに「G8に韓国を入れるべき」という話をしています。
(前略)
洪会長:
韓国内ではG7に韓国が新たに加わり「G8(主要8カ国)」を作ることに合衆国は賛成するが、日本は反対するという見方もある。クワッド(Quad、合衆国・日本・オーストラリア・インド間の安全保障協議体)も同様だ。
岸田首相:
G7内で加盟国拡大の議論はこれまでしたことがない。合衆国は賛成、日本は反対という構図は事実ではない。
また、クワッドの場合、現在、4カ国間で実践的協力の具体的な成果を出すために努力する(段階)であり、参加国拡大のための議論は行われていない。今後、どのような議論が進むか注視していきたい。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』』「홍석현 “과거사 문제에 반성·사죄 표현을 안 썼는데…” 기시다 “역대 내각 계승 입장은 흔들리지 않을 것” [기시다·홍석현 특별대담]」
これこそまさに「知らんがな」です。韓国は「G8にオレを入れろ!」ですが、そもそも合衆国が賛成しているのかどうかも疑問です。韓国は、シンクタンクなどのリップサービスを真に受けない方がいいのではないでしょうか。
――というわけで、『中央日報』グループ会長の詰問に対して、岸田首相はガラをかわし、韓国が喜ぶような言質をなんら与えませんでした。良い結果といえるでしょう。
はっきり「嫌です」「やりません」「知りません」でも良かったですが、終始オブラートに包んでかわし切りました。一生懸命に答えたように見えますが、その実、木で鼻をくくるような対応をしたのです。
問題は――伝わったかどうかです。
(吉田ハンチング@dcp)