韓国は輸出を拡大しなければなりません。国が傾くからです(もう傾いています)。
上掲のとおり、2023年韓国の輸出は対前年割れを続けています。
韓国経済を支えているのは貿易のもうけで、「輸出 - 輸入」で求める「貿易収支」が黒字でなければなりません。輸出が減っているのになぜセーフなのかといえば、輸入が輸出よりも減少し、結果的に黒字を保っているだけです。
輸入は「外国からする消費」に他ならず、消費が減少していることを意味しているので、貿易収支が黒字でもそれは不景気型の黒字というわけです。しかし、不景気型であっても黒字があるうちに輸出を回復しなければなりません。
「輸出を回復せよ!」は直近の至上命題
何度もご紹介していますが「輸出を回復せよ!」は、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の経済面での最も重要な課題です。
そのために尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は自らを「韓国の営業マン第1号」と称し、外遊のたびにTop営業を繰り広げてきました。
それが功を奏したかはともかく、うまくいったときだけ表に出たがりの文在寅前大統領、ましてやどこかの国の増税メガネと比較すれば雲泥の差です。
ことほどさように、「輸出を回復せよ!」は重要なのです。
更迭された産業通商資源部の前長官時代には、結論が「(次期主力輸出品目になると期待されるのは)ラーメンと海苔とK-POP」という「輸出振興策」を提出していました(本当です!)。
「こんなリポートしか出せないから更迭されるのだ」と思わされますが、実際突破できそうな材料がないので仕方ない面もあります(なにせ半導体需要が減少し、対中国貿易が赤字なのですから)。
上掲記事で「産業通商資源部は“のんき”なんじゃないか?」とご紹介したのが2023年07月24日。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が産業通商資源部の長官の首のすげ替えを決め、新たな長官候補を第20代大統領室が発表したのが2023年08月22日。
Money1的には「やっぱりな」「そうなるよね」でしたが、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領からすれば「エエ加減にせえよ」だったに違いありません。
――で、Money1でもご紹介したとおり、新しい産業通商資源部長官が着任しました。そろそろ何か出るだろうと期待しておりましたら――出ました。
2023年10月05日、韓国の産業通商資源部は気張ったプレスリリースを出しました。以下をご覧ください。
輸出プラス転換に向けて9大輸出拡大プロジェクトを推進!
産業通商資源部がモビリティー、エネルギー、素材・部品分野を中心に短期的な成果を創出が可能な9大プロジェクトを発掘し、密に支援します。
これにより、今年受注314億ドル、輸出263億ドルを達成するという計画です。
産業部は05日、『韓国貿易協会』で第1回官民合同輸出拡大対策会議を開催し、このような内容の「9大輸出拡大プロジェクト」を発表しました。
モビリティー(受注4億ドル、輸出21億4,000万ドル)
√電気自動車・電気自動車充電器
-アメリカ合衆国、欧州連合(EU)、ASEAN√多目的ヘリコプター・先端ロボット
-アメリカ合衆国、中東、ASEAN√建設機械
-中東エネルギー(受注310億ドル、輸出4,000万ドル)
√風力発電資機材
-北米、EU√水素燃料電池・水素プラント
-北米、中東√石油・ガスプラント
-中東、中央アジア素材・部品(輸出214億7,000万ドル)
√二次電池・素材
-アメリカ合衆国√炭素繊維・中間材
-アメリカ合衆国、中国√有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイー
-アメリカ合衆国、EU産業部は官民合同の「9大輸出戦略プロジェクト推進TF」を稼動し、プロジェクト専官を運営し、履行状況を定期的に点検し、密に管理していく方針です。
「モビリティー、エネルギー、素材・部品分野」などで短期的成果が挙げられるだろうプロジェクトをぶち上げました。
スゴイのは「受注314億ドル、輸出263億ドル」と具体的な数字を上げていることです。
上掲リストは見ると、この地域で売れるほど韓国製品に優位性がありますか?と聞きたくなるようなものもあります。例えば、韓国産の多目的ヘリコプターが合衆国で売れるほど競争力があるでしょうか。
そもそも「今年受注314億ドル」というのは時間がなさすぎて無理ではないでしょうか。
恐らく尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領はじめ大統領室などから「早くしろよ!」といわれたのでしょうが(推測です)、相当に野心的なプロジェクトという他ありません。
読者の皆さまもぜひご注目ください。結果が非常に楽しみです
(吉田ハンチング@dcp)