おススメ記事

韓国「輸出入銀行の増資」ができないとポーランドへの武器輸出が止まる

広告

韓国経済は輸出が減少するフェーズに入っています。輸入が輸出よりも減少したため貿易黒字となっていますが、再びエネルギー価格が上昇すると、その黒字も危なくなります。

輸出は減少してるし貿易赤字だし……に陥るからです。

ポーランドが大量に契約してくれた!

『輸出をなんとか増やさねば!」は尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領も認識しており、就任以降「政府機関の全員が産業通商資源部のつもりで当たってほしい」など発破をかけてきました。

しかし、その産業通商資源部の長官がサッパリだったので、Money1でもご紹介したとおり更迭されました。それぐらい「輸出を増やせ!」は至上命題なのです。

といっても半導体、石油製品、スマホなど、これまで韓国の輸出を支えてきた主力品目が冴えませんので、何か新しい製品を探さなければなりません。

主力輸出品目で自動車、船舶は好調という数字が出ていますが、自動車の方は例の車載用半導体不足の反動、船舶の方はいくら受注しても赤字構造なので「増えてもなあ……」という状況です。

しかし、そんなスグに次期主力輸出品目が見つかるわけもなく、「ラーメンと海苔とK-POP」しか案を出せなかった産業通商資源部の長官は飛ばされたわけです。

尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「防衛産業と原発だ!」とぶち上げたのですが、実際、尹政権になってから輸出で成果を上げたのは「武器輸出」です。

ポーランドが大量に韓国産兵器を買ってくれることになりました。

隣のウクライナにロシアが無法に攻め込んでいますので、ポーランドとしては軍備を拡充しないと仕方ないのです。Money1でもご紹介したとおり、ポーランドは韓国と、

K2戦車:1,000両
K9自走砲:672門
天武多連装ロケット:290両
FA-50軽攻撃機:48機
etc.

を導入する大規模武器売却契約を締結しています。

このうち「スグによこせ」とされたのが「K2戦車:180両」。

韓国の『現代ロテム』は頑張って出荷を急ぎ、2023年03月22日、5両のK2戦車がポーランドに到着したことを明らかにしました。


↑ポーランドのグディニャ港に到着したK2戦車。写真は『現代ロテム』のプレスリリースより

ポーランドはすぐ隣でドンパチやっていますので、「次はウチだ」と危機意識も高く、弾薬工場を造ってくれないか、また潜水艦を買うかも……など韓国にとってありがたい話を持ちかけています。

ポーランドから韓国にラブコール「弾薬工場を造ってくれ」
韓国は輸出が捗って貿易でもうからないと国が傾きます。上掲のとおり、貿易のもうけを示す「貿易収支」は12カ月連続で赤字。通関ベースとはいえ「アジア通貨危機」(韓国側呼称「IMF危機」)以来の赤字続きなため、「もう傾いてきた」というのが本当のと...
「ポーランドが韓国の潜水艦を買いそう」という話
土日なので官公庁・企業がお休み。本筋、真正面の経済情報が出てきませんが「本当に?」という話が出ています。韓国製陸上兵器の大量購入を決めたポーランドですが、韓国メディアは「韓国の潜水艦を買うかも」という報道を出しています。『毎日経済』の記事は...

全部実れば大ラッキー、まさにジャックポットなのですが……暗雲が垂れ込めてきました。

『輸出入銀行』の増資を行わないといけない! 国会が動くのか?

まず「暗雲その1」ですが「お金の話」です。

『輸出入銀行』の増資を行わないといけなくなりました。しかも早急に。

『輸出入銀行』というのは、その名のとおり貿易にまつわる取引がスムーズに行えるようためにあります。今回のポーランドへの武器輸出では、ポーランドの希望によって韓国側銀行で融資を行い、保証をつけることになりました。

兵器輸出の第1次契約17兆ウォンのうち、12兆ウォンは韓国側銀行が融資します。

これをもって「なんだよ韓国がお金を出してるじゃん」という方がいらっしゃいますが、こういうのはよくある話です。融資なので、別にポーランドにあげているわけではありません。当然、元利払いが発生します。

兵器の代金だけではなく、利払いもあるので、銀行からすると利子でもうかりますし、兵器メーカーからすると韓国側の銀行からお代をもらえるので取りはぐれのリスクを小さくできます。ポーランドからしても、大きな元金がなくても買えるので助かります。

いい話ではあるのですが、問題は『輸出入銀行』がこのような融資(および保証)を行う際の規定です。

現在の「輸出入銀行法」では「融資および保証の金額」は資本金の最大40%までと決まっています。

『輸出入銀行』の上限資本金は15兆ウォンですので、同行は「6兆ウォン」しか融資・保証できません。

先の12兆ウォンはどうやって出したかというと、『輸出入銀行』と『貿易保険公社』が6兆ウォンずつ出して凌ぎました。第2次輸出の30兆ウォンを超える規模にはもう対応できません。

そのため、韓国政府は早急に「輸出入銀行法」を改正しないとならないのです。

本件を報じた『中央日報(日本語版)』によると以下が同法の現状です。

(前略)
尹永碩(ユン・ヨンソク)国民の力議員が代表発議した輸出入銀行法改正案は現在、企画財政委員会に係留中だ。

尹議員は07月、輸出入銀行の法定資本金を現行の15兆ウォン(約1兆6,500億円)から30兆ウォンに増やす輸出入銀行法改正案を出した。

国会企画財政委は先月22日に常任委員会を開いたが、この法律を通過させなかった。

来月の国政監査や来年度予算案審査などの日程を考慮すると、年内に輸出入銀行法改正案が国会を通過するのは事実上不可能になった。
(後略)

⇒参照・引用元:『中央日報(日本語版)』「韓国のポーランド武器輸出が暗礁に…国会空転で資金調達に支障」

韓国政府は、『輸出入銀行』の資本金を30兆ウォンに拡大する法改正を目指しているのでが、残念なことに国会で止まっているのです。このままいくと、せっかくのポーランドへの輸出がとどこおることになります。

韓国側は、一般の銀行から融資すると提案しているのですが、ポーランド側は「金利が高いから……」と難色を示しているとのこと。わがままですね。

これによって融資・保証の最大が12兆ウォンになります。

ドイツが「韓国産の戦車はやめようよ」

「暗雲その2」は、ドイツがゴネ出していることです。ポーランドが韓国産の戦車K-2を大量採用し、この流れが続くと自国企業のシェアが減るからです。

例えば『中央日報(日本語版)』は以下のように書いています。

(前略)
ウクライナ戦争開戦後にドイツ政府は1,000億ユーロの特別防衛基金を編成し再武装と防衛産業再建に乗り出している。

最近戦車を生産するKMWのラルフ・ケッツェル最高経営責任者(CEO)は韓国防衛産業の欧州進出に対し露骨な警戒心を示した。

「欧州がK2戦車を受け入れれば、F35戦闘機の事例のように欧州の防衛産業が不利な状況に追いやられるだろう。

欧州が団結してドイツとフランスが共同開発する次世代戦車に集中しなければならない」と主張したのだ。
(後略)

⇒参照・引用元:『中央日報(日本語版)』「『韓国K2戦車、欧州団結して拒否を』ドイツ防衛産業CEOが露骨に牽制(1)」

韓国産の戦車を警戒するぐらいなら、ラインをフル稼働してウクライナにいるだけの戦車を渡してやればいいじゃないか――という話なのですが――読者の皆さまもご存じのとおり、冷戦が終わった後、ドイツは「もう大丈夫だろう」と防衛装備の調達に手を抜きました。

このため防衛産業は弱々になってしまい、今回のウクライナ戦争で「しまった!」と慌てています。隣でドンパチが始まってから「うちの戦車のシェアが……」などと気にするのは、あまりにも格好が悪い話です。

ポーランドからしても「隣で戦争やってて次はウチかもしれない」という状況です。スグにでも戦車がほしいというのに、ドイツの主張はのんきなものに聞こえるでしょう。「今いるんだってば!」ですから。

――というわけで、ジャックポットを決めた韓国なのですが、『輸出入銀行』の件、ドイツがゴネだした件によって、暗雲が垂れ込めてきました。

(吉田ハンチング@dcp)

広告
タイトルとURLをコピーしました