韓国が国産戦闘機と称する「KF-21」に暗雲が垂れ込めてきました。
事業妥当性評価は「?」で「初期生産数を半減せよ」
韓国メディア『SBS』が報じています。
同紙によれば、2023年10月30日、韓国空軍と防衛事業庁などが参加した非公開討論会の席上において、『韓国国防研究院』(略称「KIDA」)の事業妥当性調査の暫定結論が――、
初期生産数を40機から20機に削減するべき
――となったとのこと。
当初の計画では、2026~2028年に40機を生産した後、2032年までに80機を追加量産して空軍に計120機を配備する、となっていました。
KF-21は双発機で、「F414-GE-400Kエンジン」を2基積みます。120機とえば、エンジンが240基も必要です。
↑KF-21は初号機から6号機まで計6機が完成し、現在絶賛試運転中です。試作機の中には上掲のような複座タイプもあります。
『GE Aviation(GEアビエーション)』※は、KF-21の試作機は6機分で計15基(スペアが3基)納入したようで、量産が始まれば「240基 + スペアエンジン」分を納品することになります。
KF-21は国産戦闘機とされていますが、肝心のエンジンはアメリカ合衆国製です。ちなみに、搭載されるのは「F414-GE-400Kエンジン」と「K」が付いています。「F414-GE-400エンジン」の推力を6%~10%向上させ、より長寿命にしたもの――とのこと。
※世界最大の航空機エンジンメーカー。ちなみに「F414-GE-400Kエンジン」は、韓国『ハンファ・エアロスペース』と共同製造する――ということになっており、分担割合は50%の予定。
『SBS』は、「(初期量産数を)半減しよう」という今回の暫定結論が出た理由は、「KF-21事業の成功可能性に対する不確実性であることが分かりました」と書いています。
要するに「駄目なんじゃないの」「失敗するんじゃないの」という疑念を持った結果です。
価格戦闘力が下がるので輸出も危ない
面白いのは同記事では、「生産数が半減すると製造コストが高くなって価格戦闘力が下がり、輸出できなくなるかも」と書いている点です。
「駄目」ならそもそも20機も造らなくてもよさそうなものですが、2023年07月、防衛事業庁が作成した資料によると、最初の量産40機は「1機当たり:880億ウォン台」と予想されていました。
『SBS』は、最初のロットが半分になると「1機当たり:1,000億ウォン」前後まで高騰する――と報じています。
ざっくり1/10で計算しても「1機:約100億円」です。
同紙は、価格について以下のように書いています。
(前略)
一方、KF-21より半世代先を行くアメリカ合衆国の第5世代ステルス戦闘機F-35Aは、多くの注文量のおかげでコストを削減する「規模の経済」で1台当たり7,000万ドル、韓国ウォンで946億ウォン以下に価格を下げました。価格と性能競争力がF-35Aより落ちれば、輸出はもちろん、空軍の導入量にも悪影響を及ぼすしかありません。
(後略)
まだ海のものとも山のものとも分からないKF-21と比較して、F-35Aの方が安く買えるというのです。
自主国防を考えると、自国で戦闘機を製造できることには重要な価値があります。しかし、
KF-21:1,000億ウォン
F-35A:946億ウォン
と並べられると、『韓国国防研究院』でなくても「うーん……」と考え込むでしょう。価格差がこのままだとして、どこか買ってくれる国があるでしょうか。
あくまでも暫定結論ですので、まだ決定ではありません。ただし、この暫定結論は関係者に共有されましたので、『KIDA』院長が決裁すれば確定となります。
後は、それこそ尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の決断次第ではないでしょうか。なにせ大統領が帝王的な権力を持つ韓国ですので。
(吉田ハンチング@dcp)