2023年06月16日、韓国メディア『ソウル経済』が興味深い記事を出しています。
キム・ジョンシク『延世大学』経済学部名誉教授に取材したもので、韓国経済の危ない点について指摘していらっしゃいます。この方はMoney1でもおなじみです。米中対立が激しくなって、韓国経済の先行きが不透明になってきましたので、キム名誉教授のご指摘に耳を傾けよう――となったわけです。
キム名誉教授がどんな点をご指摘か、まとめてみました。
①中国の技術力向上・円安で貿易収支が悪化した
②貿易赤字 ⇒ 経常赤字へ移行すると為替レートが急騰する
③為替危機を防ぐには黒字基調を維持すべき
④為替政策の揺れ幅は小さいのに円安は加速する
⑤輸出の道を阻む過度な為替レート下落はダメ
⑥対中依存度を下げ、輸出相手国を多様化
⑦新産業を育てなければ「20年停滞」の日本を踏襲してしまう
⑧産学協力クラスター設立で新技術開発
⑨輸出増大の原動力を備え、中国の挑戦を追い越せ
⑩規制緩和・投資拡大で企業に力を与える必要がある
⇒参照・引用元:『ソウル経済』「[이슈 리포트] 中추격에 수출 감소…신산업 클러스터 조성등 경쟁력 확보 나서야」
Money1でもご紹介しているとおり、韓国の場合は貿易赤字基調が経常収支を呼び、それがドボン騒動につながることが多い――という前提に立ち、まず「貿易赤字はやめよう」としています。
韓国の場合は、「貿易黒字基調」を続けないと、外国からの信用が下がり、資金流出が起こるかもしれないという危惧があるとも。資金流出の際には「ウォンからドルに換えて皆さんが逃げ出す」ので、ウォンの急落が起こります。
これが教授の言う「為替レートが急騰する」です。
で、その肝心の貿易黒字が15カ月連続赤字に陥っているわけです(通関ベース)。
連続赤字の泥沼に陥っている理由をキム教授は「中国の技術力向上と円安だ」としています。
中国の技術力が向上し、もう韓国製品を購入する必要がなくなったこと、は確かに大きな要因です。「昔の中国に戻ってくれ」は無理なので、これを覆すことはできません。
また、製品輸出のライバルである日本の円が安くなると、韓国製品に競争力がなくなり、日本製品が売れるようになります。同じ価格なら高品質の日本製品が売れるのは自明のこと。
そもそも韓国は日本をまねして発展した国なので、輸出製品が丸かぶりしてきたのです。現在ではマシになっていますが、それでも日本円が安くなることは韓国にとって極めて困る事態なのです。
それは、韓国が危機のたびに異常なほどのウォン安に助けられて短期間のうちに復元したことから見ても明らかです。
ただし「輸出の道を阻む過度な為替レート下落はダメ」とも指摘されています。「どないせーっちゅうねん」という話なのですが、ドルウォンには一種のハビタブルゾーンがあって、そこからズレるのは困るのです。
「で、どうすんの?」ですが、キム教授の指摘は上掲のとおり「このままでは日本の失われた20年みたいになってしまう」ので(大きなお世話です)――、
⑥対中依存度を下げ、輸出相手国を多様化するべき
⑧産学協力クラスター設立で新技術開発
⑨輸出増大の原動力を備え、中国の挑戦を追い越せ
⑩規制緩和・投資拡大で企業に力を与える必要がある
――となっています。
それができるならこんなことにはなっていません――という提言ばかりです。
特に、「輸出増大の原動力を備え……」が無茶です。その方法がないからこうなっています。
貿易黒字を確保したいなら、「輸入を削る」という方法もありますが、これは自分から不況型黒字を作ることに他なりません。
極論すれば、日本のまねばかりしてオリジナルがないからこのような事態に陥っているといえ、だからこそ韓国は今、日米との技術協力、イスラエルとの技術協力などと連呼しているのです。これらは全て「お前が持っている技術をよこせ」であって、逆にいえば、韓国は自分で「技術がないこと」を深く理解しているのです。
日本は韓国に技術移転などしないように、技術が剽窃されないように注意しなければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)