「金融関係はこういう言い回しが好きだよね」という話です。2021年10月06日には、韓国経済に灰色のサイが複数出るねえ――という件をご紹介しました。
「灰色のサイ」というのは「大きな問題を引き起こすにも関わらず普段は見過ごされがちなリスク」という意味です。
韓国株式市場が大きく下落し、ドルウォンレートが「1ドル=1,209ウォン」に達してしまいましたので、韓国メディアでも危機感を露わにした記事が出ており、そのためサイも駆り出されております。
「サイが出るねぇ」という記事
2022年01月29日の『NEWSIS』の記事タイトルが「【灰色サイが来る①】『サイレン』鳴った韓国金融市場」です。「よくサイが来るねぇ」という話ですが、記事の一部を引用するとこんな具合です。
韓国経済に「灰色サイ」が出ているという警告メッセージが発せられている。
アメリカ合衆国など、主要国が予想より早い緊縮の歩みを見せる一方、中国は急激な景気減速が懸念されている。
韓国の家計負債は1,800兆を突破し、民間負債リスクも歴代最高水準を記録した。
29日、金融市場によると、合衆国など主要国の緊縮速度が速まると予想され、世界の株式市場が暴落し、国債価格が下落するなど、資産バブル崩壊の兆しが見られる。
コロナのために流動性拡大に乗り出して発生したバブルを収めながら、株式だけでなく不動産など資産市場の萎縮も予想されている。
「灰色のサイ」警告が出ているのだ。
(後略)
しごく真っ当なご指摘でありますが、「民間負債リスクが歴代最高」という件だけは初めて聞くという方がいらっしゃるかもしれません。
これは、Credit-to-GDP gaps(債務・GDPギャップ)についての指摘です。債務・GDPギャップというのは、「民間信用の対GDP比率がトレンドからどのくらいずれたか」を示します。
韓国の民間負債リスクは過去最高に高まる
面倒くさい方は、「債務・GDPギャップが10%を超えたら負債が多くてリスクが高い警報」で十分であります。
民間信用は、企業信用と家計信用の合計。つまり民間部門がどのくらい融資を受けたのか――で、簡単にいえば、企業と家計の借金の合計です。
韓国の家計負債が異常な速度で増加しており、2021年第3四半期には「1,844兆9,000億ウォン」(データ出典:『韓国銀行』)に達しています。「韓国の家計負債がGDPを超えた」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
そのとおりで、韓国の家計負債の対GDP比率は100%を超えています。
では、これに企業分を足し込んだ「民間信用」の対GDP比率はといえば、同じく2021年第3四半期基準で「219.9%」になります。
つまり、韓国の「企業と家計」は、GDPの「約2.2倍」の借金を抱えているのです。
で、韓国の債務・GDPギャップですが、ラスボス『BIS』(Bank for International Settlementsの略:国際決済銀行)の統計によれば、2021年第2四半期時点で「18.4%」。
↑黄色のセルをご覧ください。韓国の債務・GDP比率は「18.4%」に達しています。⇒参照・引用元:『BIS』公式サイト「Credit-to-GDP gaps Updated 6 December 2021」
10%を超えると「警報」ですので、韓国は見事に「危ない」判定になります。ちなみにこの数字は、1972年に統計を取り始めて以来の過去最高値です。
さらに、ご注目いただきたいのは、ドル枯渇・ドボン寸前だった2020年第1四半期は「13.0%」でした。民間負債リスクはむしろ高まっているのです。
これを指して「民間負債リスクも歴代最高水準」と書いています。
サイがいますねぇ。あちこちに。
(吉田ハンチング@dcp)