中国「なぜ2,000億ドルも数字が合わず」資金が流出するのか?

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中国はおかしな国です。外国に巨額の資金が抜けています。

これは国際収支統計の「誤差脱漏」を見ても明らかです。

誤差脱漏って何よ?

ちょっと面倒くさい話をします。「誤差脱漏って何?」ですが、できるだけ簡単にやっつけますので、少しだけお付き合いください。

ずいぶん前にご紹介したことがありますが、「誤差脱漏」というのは収支の合わない金額を計上する項目です。

外国との取引のフローを捉える「国際収支統計」は、読者の皆さんもおなじみの、貿易収支やサービス収支を計上する「経常収支」、金融面での取引を計上する「金融収支」、外国への支援(対価をもらわない)などを計上する「資本移転等収支」の3つからできています。

現在のBPM第6版では外貨準備の増減は金融収支に組み入れられています。「経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0」という恒等式が成立します。

しかし国全体の取引ですので、全てを負いきれません。どうしても誤差が出ます。この誤差分を計上する項目が「誤差脱漏」です。

――で、収支を計算して本来ならこれだけ外貨準備が増えていなければならないのに、「いや、そこまで増えてないよ」という場合には、統計に捉えられない部分で外国に資金が抜けていることを意味し、誤差脱漏はマイナスになります。

逆に、外貨準備が収支の計算以上に増えている場合には、統計に捉えられなかった部分で外国から資金が入ってきたことを意味し、誤差脱漏はプラスになります。

外貨準備が国際収支のベースラインになるといわれるのはこのためで、さすがにここをごまかすのは難しいのです。

なぜ2,000億ドルも計算が合わないのか

本線に戻ります。――で、中国です。中国は誤差脱漏が異常にマイナスになるのです。

以下は2023年第2四半期までの誤差脱漏部分を切り出したものです(四半期ベースの『中国 国家外為管理局』公表データ)。

2023年
第1四半期:-52億ドル
第2四半期:-143億ドル

データ出典:『中国 国家外為管理局』

第1・2四半期で計-195億ドル。なぜこれほどに計算が合わず、資金が流出しているのかです。

1998年第1四半期から2023年第2四半期までの誤差脱漏の金額の推移を見ると以下のようになります。

2011年終わりぐらいから、大きく0の下にスパイクが出るようになっているのがお分かりいただけるでしょう。なぜこれほどに誤差が発生し、資金が流出しているのか非常に不思議です。

年次で誤差脱漏の金額を見ると以下のようになります。

1998年: -187.4億ドル
1999年: -177.9億ドル
2000年: -118.1億ドル
2001年: -48.6億ドル
2002年: +77.9億ドル
2003年: +82.2億ドル
2004年: +129.7億ドル
2005年: +229.2億ドル
2006年: +36.3億ドル
2007年: +132.9億ドル
2008年: +188.4億ドル
2009年: -413.8億ドル
2010年: -529.4億ドル
2011年: -137.7億ドル
2012年: -870.7億ドル
2013年: -629.2億ドル
2014年: -668.7億ドル
2015年:-2,018.2億ドル
2016年:-2,185.9億ドル
2017年:-2,066.1億ドル
2018年:-1,773.6億ドル
2019年:-1,291.8億ドル
2020年:-1,587.6億ドル
2021年:-1,344.7億ドル
2022年: -905.6億ドル

特にご注目いただきたいのは、2014年と2015年の差です。2014年は「-668.2億ドル」だったのに、2015年には「-2,018.2億ドル」と誤差(合わない金額)が一気に3.0倍に膨らみ、この2,000億ドル超えの合わなさが2017年まで続きました。

なぜこれほど巨額が合わず、どこかに抜けてしまうのか?

一部の識者は、中国は捉えられたくない取引の流出金額を誤差脱漏を使ってカモフラージュしているのではないのか――と指摘しています。

もし、それが正しいのだとしたら、いったいこの巨額はどこに流出し、何になったのでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)

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