土曜日ですので、読み物的な記事を一つ。
『日・朝・中三国人民 連帯の歴史と理論』という本があります。「1964年06月10日 第1刷」発行です。
朝鮮半島が繰り返し並べ立てるウソの種本(の一つ)といってもいいものです。今から60年も前の本ですが、刊行の動機というのが、(1965年に締結することになる)日韓基本条約への反対です。
現在のようにインターネットを利用することによって瞬時に情報が入手できる状況ではなかったため、日本からすると韓国の内情は全く不明でした。
そのため、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が就任した韓国については「独裁政権が支配し、国民が弾圧されている悪の国」といった認識でした。
(よせばいいのに)当時の日本の知識層といわれる人たちは、北朝鮮を支持し、韓国を悪く言うことに血道を上げていました。現在から考えると「そんな馬鹿な」というしかありませんが、日本のインテリというのはその程度だったのです。
北朝鮮にシンパシーを抱き、韓国を否定したい気持ちでいっぱいだったので、日韓の国交正常化に反対。このような「日本・朝鮮・中国の3カ国人民で連帯だ」「日本帝国主義を打倒せよ」という妄想を言い立て、「日本が悪である」と貶める本が刊行されたのです。
上掲は同書の表1と次の白紙をめくったところですが、
★日中国交回復三千万署名のために
★日韓会談粉砕のために
★日朝友好運動の前進のために
と書かれてます。このことからも分かるとおり、日本 – 韓国の融和傾向を否定し、日本 – 北朝鮮の友好を促進することを意図した内容なのです。
そのため、日本の朝鮮併合について日本人が贖罪意識を持つようにウソばかりが書かれています。同時に北朝鮮の金日成を称揚し、日朝友好を進めていきましょう、と書いています。
ご注目いただきたいのは、著者として「寺尾五郎」の名前があることです。
この人の名前を日本人は(そして在日朝鮮人の皆さんも)決して忘れてはなりません。
寺尾五郎さんは、1958年に「北朝鮮建国10周年記念式典」に訪朝使節団として訪問。
『38度線の北』(1959年刊行)という本を書きました。北朝鮮の用意した見学ツアー(完全な出来レース)にころっとだまされて、北朝鮮は地上の楽園とばかりに称賛。
いわゆる「帰国運動」(主として1959年から1967年にかけて)が起こりますが、『38度線の北』の内容を信じて北朝鮮にわたった人の人生は取り返しのつかないことになりました。
1960年、寺尾五郎さんは「朝鮮開放15周年 慶祝日朝協会使節団」の秘書長※として北朝鮮を訪問。
※いかに寺尾五郎さんが北朝鮮から高く評価されたのかが分かります。
その際、列車の中で『38度線の北』を読んで帰国したという3人の男から「お前の本にだまされて、こんな生き地獄へ連れてこられた。俺たちの人生をどうしてくれる!」とつかみかかられた――という逸話が残っています。
このような悲劇をも引き起こした当時のインテリたちの妄想がこの本には渦巻いています。
この本に書かれたようなウソがいまだ現在の日本に残存し、影響を及ぼしているというのは驚くべきことです。
(吉田ハンチング@dcp)