2023年12月18日、韓国の造船最大手の一つ『サムスン重工業』が興味深い公示を出しました。
韓国型と誇った「KC-1」を用いたLNG運搬船が欠陥船と認定され、裁判の結果、賠償金2.9億ドルを支払うことになった――というものです。まず以下をご覧ください。
原告(申請人):SHIKC1 SHIPHOLDING SA/SHIKC2 SHIPHOLDING SA
判決・決定内容:
当社が完成させて原告に引き渡したガス運搬船の欠陥による損害賠償仲裁に関して、仲裁裁判部は原告の未運航損失に対する請求は棄却し、船舶価値の下落に対する損害で2.9億ドルを支給せよと判断した。判決・決定金額(ウォン):3,781億ウォン
判決・決定理由:貨物倉の欠陥が完全に修理されていない点が認められ、損害賠償責任が認められる。
管轄裁判所:英国海事仲裁人協会仲裁裁判所
今後対策:
本損害賠償仲裁は船舶乾燥契約による請求であり、最終的に終局的な責任主体は現在韓国で進行中の関連訴訟の結果により確定されるだろう。ただし、多数の訴訟および仲裁解決のため当社、『韓国ガス公社』『SK海運』3者間の協議を進行中である。3者間の協議が霧散した場合、当社は『韓国ガス公社』に対する訴訟を通じて、本件仲裁による賠償額を回収していく計画である。
(後略)
「KC-1」というのはLNGを輸送するためのタンクで、その技術を『韓国ガス公社』が開発したというもの(『現代重工業』『サムスン重工業』『大宇造船海洋』が加わった共同開発)。
要は、特許料金を支払いたくない※ので「独自開発」したわけです。
※1隻当たり約100億ウォン(船舶価格の5%といわれます)をフランス『GTT』に技術使用料として支払わなければなりません。
ところが、この「KC-1」を用いたLNG運搬船は全く使い物になりませんでした。タンクの超低温の冷気で船体が結氷するコールドスポット(結氷現象)が発生するのです。
2018年には『サムスン重工業』が「SKセレニティー」「SKスピカ」の2隻を完成させたのですが、4回修理しても「コールドスポット」が発生するという欠陥は直りませんでした。
ひどいのは『韓国ガス公社』で、「これ以上の性能改善は困難」という立場を表明し、「水温が6度以上で気候が温暖な中東などの航路で条件付き運航は可能」といい、『SK海運』に運航を要請する始末です。
――で、裁判になったのですが、『サムスン重工業』に対する、「運行できなかったこと」に対する賠償は棄却され、「船舶の価値が落ちたこと」に対する賠償は認められ――2.9億ドルの支払いが命じられたというわけです。
公示で「当社(『サムスン重工業』)、『韓国ガス公社』『SK海運』3者間の協議を進行中である」と書いていますが、この3社は「設計上の欠陥」「建造時の欠陥」「契約不履行」などと主張しあい、泥仕合になっています。
韓国型などと誇った技術は全く使い物になりませんでした。技術の積み上げを怠り、華やかなところだけをやりたがる、実に韓国らしい話です。
(吉田ハンチング@dcp)