韓国メディアが「貿易赤字が5カ月連続!」とかまびすしいので『韓国銀行』も黙視できなくなったようです。
同行の公式サイト上に「最近の貿易収支の赤字の原因と持続可能性の確認」という記事が出ました。貿易赤字は続くのか、また韓国経済は大丈夫なのか、という問いに答えようとしたものです。
貿易赤字の原因はなんだろう?
『韓国銀行』は、
貿易収支が今年に入って赤字の流れを続けている。
最近、輸出して稼いだお金よりも輸入し外国に支払ったお金が多くなっているという意味だ。
貿易収支は今年第1四半期に2008年以降、四半期基準で初めての赤字になった上、6月からは赤字幅が拡大している。
と述べ、貿易赤字の原因を以下のように指摘しています。
貿易収支は、輸出が不振だったり、輸入単価や物量が増えて支払わなければならない輸入金額が大幅に増加したりする場合に赤字となる。
貿易収支の変化を輸出入の単価と物量要因に分けてみると、最近の貿易赤字の大半は輸入単価の上昇により現れ、中国の景気鈍化などによる輸出物量の縮小も一部作用したと分析される。
『韓国銀行』は、貿易赤字のほとんどは輸入物品の単価が上昇したことによる、と結論付けています。現在懸念されている、対中国輸出の鈍化も関与している、とも。
この輸入物品の単価上昇については、貿易収支の悪化に「-783億ドル」規模で寄与したと判定しています。
韓国が輸出する物品価格も上昇しており、これは貿易収支の好転に寄与するのですが、その規模は「+388億ドル」と判定しています。
マイナスの貢献がプラスの貢献の約2倍あります。輸出入合わせて「-395億ドル」で、その分貿易収支を押し下げる効果があるわけです。
原油価格が上がると貿易収支は減少する
興味深いのは、このリポートにある「原油価格と貿易収支の推移」のグラフです。以下をご覧ください。
※青い棒グラフが貿易収支で左軸(単位は100億ドル)、オレンジの折れ線グラフはドバイ油価で右軸(単位はバレル当たりドル)。2022年は01~07月です
上掲のとおり、少なくとも2000年以降は原油価格が上昇すると、韓国の貿易収支は減少する関係があります。2022年はバレル当たり100ドルを超えるような事態になっているため貿易収支は赤字となっているわけです。
というような要因で貿易収支が赤字転落していますので、このリポートの結論としては「輸入物品の単価高騰(つまりはインフレ)が止まらない限りは、止めることができない」となります。
つまり、「対策はない」と言っているのと同じです。
また、『韓国銀行』は以下のようにも述べています。
一方、韓国が海外から稼いだ利益を包括的に評価するためには、貿易収支だけでなく経常収支も一緒に見る必要がある。
韓国企業の海外生産拡大で加工・中継貿易などが着実に増加し、海外投資から稼ぐ利子・配当関連樹脂も黒字規模が拡大し、貿易収支は赤字だが、経常収支は黒字が現れることがあるためである。
従って、貿易収支だけでは私たちの対外活動の成績が過小評価されることがある。
韓国の経常収支は、貿易赤字にもかかわらず年間では黒字基調を維持する見通しだ。
ただし、貿易環境の不確実性によるサプライチェーンおよび貿易支障、中国の産業構造の高度化などは、中長期的に経常収支の黒字を縮小できるリスクとして作用する。
貿易収支だけではなく、経常収支に目を向けて判断してくれ――といっています。
それはもちろん正しいのですが、問題は経常収支の赤字化が迫りつつあるということです。目先の焦点は、「通関ベース約95億ドルの貿易赤字」となった2022年08月が経常収支黒字で締まるのか、です。
『韓国銀行』は「年間で黒字基調を維持する」と見通していますが、それは恐らくそうなります。
しかし、韓国の場合、韓国通貨危機の2008年「経常収支:+17億5,300万ドル」でもドボン騒動を起こしたという歴史的事実があるのです。
↑緑色でフォーカスしてあるのが2008年の経常収支。黄色が貿易収支(単位は100万ドル)。データ出典:『韓国銀行』「ECOS」
なぜドボン騒動になったかというと――月次の経常収支赤字が積み重なり、外貨の足らない分を外国から調達――その返済が困難になったからです。
通年で見て黒字でも、毎月の経常収支赤字が韓国を破断界に至らせることはあるのです。
(吉田ハンチング@dcp)