韓国メディア『NEWSIS』が面白い記事を出しています。「『韓国型NVIDIA』を育成する」というタイトルです。いわば「K-NVIDIA」(なんだコレ)でしょうか。
先に尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が「622兆ウォンを投資して一大半導体製造拠点を造る」と公表しました。これにかこつけた話です。
読者の皆さまもご存じのとおり、アメリカ合衆国『NVIDIA』は、高性能なGPUを開発する企業として知られ、現在では「人工知能コンピューティングで世界をリードする」と謳っています。
『NVIDIA』は設計を行いますが、半導体の生産自体は他の企業に委託しています。世界的な半導体企業ですが、自社で生産設備を持たないファブレス企業というわけです。
同記事によると、韓国政府は「2030年までにグローバル売上高、上位50位のファブレス企業を10社育成する方針」を打ち出している――とのこと。
大変野心的な話です。
――というのは、同記事によれば、現在売上高上位50社の中に韓国企業は1社しか入っていないからです。その1社というのは『LK Semicomm(엘케이세미콘)』だ――としています。
↑『LK Semicomm』の公式サイト/スクリーンショット
ただ、この『LK Semicomm』も上掲の公式サイトを見ると「後工程のパッケージングを請け負います」という企業であって、政府が目指す『NVIDIA』とはずいぶん違っているように見えます。
メモリー半導体一辺倒でここまできましたが、システム半導体も攻略したいという思いがあるのでしょうが、そもそもシステム半導体市場における韓国企業のシェアは3%ほどしかありません。『サムスン電子』もAPU作りに励んではいますが、熱々の半導体ができる始末で、うまくはいっていません。
『NVIDIA』『Qualcomm(クアルコム)』のようなファブレスのシステム半導体企業ができればいいのでしょうが、今から始めるわけなので、そう簡単な道ではありません。
また、そのための政府の施策というのが……。
2024~2026年で3年間「24兆ウォン」規模融資・保証支援
『産業銀行』『企業銀行』『輸出入銀行』『信用保証基金』『韓国貿易保険公社』『技術保証基金』などが参加。
市場金利より最大1.3%ポイントの優遇金利を提供。
3,000億ウォン規模の「半導体生態系ファンド投資」を開始。
2024年は最大700億ウォン執行を目標とする。
――というものです。まず「安っ!」というのが問題で、かつ「国策銀行などがお金を貸すので、借りてやれ」という話です。金利優遇しますよといわれても、中小企業やスタートアップは二の足を踏むのではないでしょうか。
※中国のように「はいはい! 半導体やります」と手だけ上げて、お金を借り倒した揚げ句に「できませんでした」とトンズラする企業が出ることも考えられます。
また「なんとかファンド(基金)」を作るという、韓国の伝統芸も登場しています。その予算が3,000億ウォンで、今年は700億ウォンというのも「少なっ!」です。
「お金がないのは首もないのと同じ」という西原理恵子先生の名言のとおりで、これで本当に「韓国型NVIDIA」なるものができるのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)