2024年01月、韓国政府は「622兆ウォンを投資して世界最大規模の半導体メガクラスターを造成する」と発表しました。
Money1では、622兆ウォンを出すのは民間企業で、そもそもどこから必要な水を供給するのか、と「企画が絵に描いた餅」である点をご紹介しました。
↑2024年04月09日に開催された半導体メガクラスター造成に関する進捗会議。
「水が足らない」のは政府も十々分かっているようで、2024年04月09日、韓国政府は尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領臨席のもと、「半導体メガクラスター」造成についての進捗会議を開催しました。
以下は第20代大統領室が出したプレスリリースです。
タイトルをご覧いただけば分かるとおり、「水が足りないのは分かっとる。みなまで言うな。でも絶対にやるんだ」という文書となっています。
水が足らない件については、同文書内で以下のように述べています。
(前略)
大統領は去る01月第3次民生討論会で発表した「622兆ウォン規模の世界最大の半導体メガクラスター」造成のための電力、用水、住宅、交通などインフラ構築状況を点検し、関係省庁に支障のない後続措置を要請しました。大統領はまず、龍仁国家産業団地を2026年までに着工し、半導体メガクラスターに欠かせない電気と工業用水を政府が責任を持って供給すると約束しました。
大統領は10GW以上の電力需要に対応し、昨年12月に電力供給計画を確定したとし、八堂ダムから龍仁まで48kmに及ぶ用水管路は今年02月に予備妥当性調査を免除し、すぐに設置作業に着手すると明らかにしました。
大統領はさらに、生活インフラと関連し、半導体高速道路は今年中までに民資適格性調査を終え、先週開通したGTX-A路線は06月に構成駅を追加開通すると付け加えました
大統領は半導体競争が「産業戦争」であり、「国家総力戦」と強調し、展示状況に合わせる水準の総力対応体系を整えるため、政府は半導体産業誘致のための投資インセンティブから全面再点検すると明らかにした。
大統領は特に、主要国の投資環境と支援制度を総合的に比較、分析し、韓国の実情に合った果敢な支援策を設けると約束しました。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、半導体メガクラスターが必要とする「電気と工業用水を政府が責任を持って供給する」としました。
大したものですが、その予算については「いくらかかるのか」まだ明らかになっていません。大統領は、「八堂ダムから龍仁まで48kmに及ぶ用水管路」については予備調査抜きが行け、と無茶なことを言ってますが、これだけではまだ駄目です。
Money1でもご紹介したとおり、八堂ダムはすでに取水量が限界に達しており(ソウルに水を供給する水がめでもあるので)、新設される半導体メガクラスター分の水を供給するなんてことは無理です。
だからこそ、龍仁に建造する予定の『SKハイニックス』のファウンドリーは、驪州市の南漢江から取水管を通じて龍仁まで持ってくるつもりなのです(総延長36.9kmと推計されている)。
大統領府のリリースが、この期に及んで「八堂ダムから用水管をひく」と書いているのには驚きます。それができないから苦労してるんでしょ――だからです。
先にご紹介したとおり、先のリリースにあったように「下水の再利用や淡水化施設を建設」を真剣に行うか、あるいかさらに遠方から水を引くか、です。
ちなみに海水の淡水化施設は、ようやく大きいのが一つ稼働しようとしていますが(2025年上半期に韓国最大の海水淡水化施設が大山産業団地で稼働予定)、半導体メガクラスターで必要とする水(新規需要が1日当たり110.8万トン)をつくろうとすると、これが11個いります。
しかもこれは海水を淡水化するものなので、ここから水を磨いて超純水にまで仕上げる施設が必要なのです。
結論からいえば、今回の大統領発表は「やります!」というだけで、「どうやって水を確保するのか」を具体的に回答したものではありません。
絵に描いた餅を具現化するのは、至難の業なのです。
(吉田ハンチング@dcp)