2024年06月07日、予定どおり『ACT-GEO』社の顧問Vitor Abreu(ビクター・アブル)さんが記者会見を行いました。
韓国・尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が自ら公表した「日本海の韓国領海内に最大140億バレルの原油・天然ガスがあるという報告があったので試掘します」――に対してメディアなどから疑念が声が上がりました。
今回のブリーフィングは、発表された内容を補強するものです
↑アブル顧問のブリーフィングを報じるYouTube『YTN dmd』チャンネル。
先にご紹介したとおり、その「有望という報告」は、アメリカ合衆国『ACT-GEO』が産業通商資源部の依頼を受けて調査、提出したもの――となっています。
本日の会見の中から、アブル顧問の注目すべき発言を拾ってみます。
「今回のプロジェクトは、すでに3つの試掘孔があり、その地域の弾性的品質が良いというのがメリットだった」
※3つの試掘坑の名称は「주작(朱雀)」「홍게(紅蟹)」「방어」
「既存の3つの試掘坑を研究した結果、2つ目の『홍게』に有望な兆候を発見した。
「有望だと判断する4つの要因のうち、3つが確認された。
第一にトラップがあり、
第二に貯留岩(reservoir rock)の品質だ、「홍게」の貯留岩(reser)は約400mの柱状で炭化水素資源を貯蔵できる品質を備えており、
第三に最も重要な要因である基盤岩の存在を確認した」
※引用者注:
石油と天然ガスがたまる場所がトラップです。油ガスは炭化水素資源と呼ばれ、それが貯蔵されている箇所を見つけるためには「トラップ」を見つけないといけません。トラップができるためには、外に逃さないための貯留岩(reservoir rock)、帽岩(cap rock)、基盤岩(bedrock あるいは basement rock)があるはずです。そのため、油田の可能性を探るには、貯留岩、帽岩、基盤岩を地質調査で確認する必要があるのです。「欠落していたのは、地球科学的に何らかの異常徴候を探すことだ。この地球科学的な異常徴候を通じて炭化水素の量がどれだけあるかを確認する。
地球科学的な異常徴候を見つけることは、地質学的な側面よりもはるかに複雑な分析が要求され、地震学を利用するような分析技法が使われる」
「7つの有望鉱床内に相当な埋蔵量があると推定された」
※35~140億バレル相当の埋蔵可能性があるとしています。
「これを可能性によって順位をつけて、上位を選択しなければならない」
「次の段階は掘削で確認することだ」
すでにある3つの試掘坑のデータを分析して有望な鉱床を見つけ、そこには相当な埋蔵量があると判断した――としています。プライオリティーをつけて、より可能性がありそうなポイントを掘ってみるのが次のステージ、と述べました。
また、記者からの「20%という確率は高いのか」という質問には、
「そうだ。非常に良好で高い数値だ」
「過去20~25年間に発見された最大の鉱区であるガイアナのLiza(リザ)鉱区の成功可能性は16%だった。しかし、確認された埋蔵量は40億バレルに達する」
「リザは今回確認した鉱区と似た構造だ」
と答えました。
ここだけ聞くと「いけるかも」と思うかもしれませんが、アブル顧問は、
「成功確率20%は失敗確率80%という意味だ」
と釘を刺すことも忘れませんでした。
「(20%について)5つの有望構造のうち1つでは石油が見つかる可能性が高いということだ」
「2段階の過程が終われば、追加的に有望鉱区がさらに出てくる可能性がある」
とも。気になるのは、成功確率20%というのは「5本掘ったら1本は出る」という意味なの?――という点です。
それは置くとしても、先にご紹介したとおり、鉱床というのは「掘ってみにゃ分からん」が本当にところです。『JOGMEC』の専門家に取材したことがありますが、その鉱山が商業的に成立するかどうかは、10年、20年かけて行う事業――とのことでした。
今回の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の発表で、「すぐにでも原油が出て商売になる」と思うならそれは大間違いです。出るかどうかは当たる八卦、当たらぬも八卦ですし、たとえ出たとしても商売になるのかは分かりません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は試掘に挑もうとしていますが、まさにお手並み拝見です。
ちなみに、Money1でもご紹介したことがありますが――日本『INPEX』が日本海で試掘を行った上掲の場所は「採算性がない」として開発がとりやめとなりました。
(吉田ハンチング@dcp)