2024年06月17日、中国の国家統計局が「ええっ! 本当に?」という発表を行いました。
そもそも中国の穀物および食料生産が、本当に中国当局の発表どおりなのかには疑問が持たれています。Money1でもご紹介したことがありますが、中国当局は「総穀物生産」について取り憑かれたように「6.5億トン」「6.5億トン」と繰り返します。
総穀物生産量が「6.5億トン」を安定的に維持しなればならない――がスローガンで、例えば中国国家統計局は2023年の全国穀物生産統計を6億9,541万トンと2022年に続き、過去最高を記録した――と発表しました。
2023年は対前年比で「1.3%増加した」というのです。
中国国家統計局の発表データを拾ってみると、中国の穀物総生産量の推移は以下のようになります。
↑2013~2023年の中国の穀物総生産量の推移は上掲のとおりで、2023年はほぼ7億トンに近づいています。国家統計局の発表を拾って並べてみると、非常におかしな、数字に合致しない記述があるのですが、長くなるのでこれは別記事にします。2023年に穀倉地帯を直撃した水害の影響もなく、穀物生産量が増加したなんて話をそのまま信じられるでしょうか。
2023年には、黄河および淮河流域で収穫期の長雨があり、穀倉地帯である華北地域および東北地域の洪水被害、西北地域での干ばつもありました。
読者の皆さまもYouTubeや中国語メディアで被害をご覧になったりしたでしょう。にもかかわらず、過去最高の7億トン近くに達する収穫を上げたというのです。中国政府は「政府の生産支援により、穀物の安定供給の責任を果たし、増産を維持できた」としています。
今回、17日に統計局が公表したプレスリリースには以下のように書かれています。
(前略)
主な経済指標の動きをみると、05月は、マクロ政策効果の継続的な発揮、外需の改善、メーデーの連休などに牽引され、サービス業、消費、輸出入が回復し、鉱工業生産はより速い成長を維持し、雇用と物価情勢は安定し、国民経済の転換と高度化は引き続き良好なトレンドに回復しています。国民経済は回復と改善を続け、その運営はおおむね安定している。具体的には、主に4つの特徴がある:
第一に、生産と供給が着実に増加した。 食糧生産から見ると、全国の夏の収穫は順調に進んでおり、今年はほとんどの地域で日照、気温、水の条件が良く、災害の発生が少なく、夏の穀物はまた豊作になる見込みである。
(後略)
ちょっと待ってくれ――です。05月までのデータで語っているのかもしれませんが、Money1でもご紹介したとおり、06月に入ってから北部は干ばつ、南部は大水な状況になっています。
中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』にも以下のような記事が出るぐらいなのです。
↑『Global Times』の2024年06月16日付け記事「中国当局、北部の干ばつ、南部の洪水と闘う」/スクリーンショット
↑中国の中央気象台が公表した2024年06月17日の干ばつ図。重篤な干ばつの赤い部分がいかに広範囲に渡っているかにご注目ください。
↑2024年06月17日に『X』に上がった動画。「福建省の11の河川で警報レベルを超え、限界を超える洪水が発生し、南部6省と自治区で大雨が発生し、17万9,800人が被害を受けた」
これで本当に「夏の穀物はまた豊作になる見込み」なのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)