【老後資金を作ろう!】 日本人に必要な投資リテラシーとは? 日本人の不幸とは?

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日本人は欧米人に比べて「投資についてのリテラシー」が足りないといわれます。

2019年6月、金融庁の「老後資金に2,000万円が不足する」という審議会報告書が話題になりました。この文書に刺激を受けてにわかに「自分の老後資金」について不安を覚えた人は多かったでしょう。

誰でもお金の心配をすることなく老後を穏やかに暮らしたいはずです。それを実現するには、お金を貯め、増やすための知識が必要になります。

では日本人に足りない金融・投資のリテラシーとは何なのでしょうか? 『一般社団法人 日本つみたて投資協会』の太田創(おおた つくる)代表理事にお話を伺いました。

太田先生は『三菱UFJ銀行』『シティグループ』『フィデリティ投信』など著名な企業に勤務し、30年以上にわたる投資についての豊かな経験と知識をお持りです。

日本人が金融リテラシーに欠けているわけではない!

――日本人には金融についてのリテラシーが足りないなどといわれますが、これは本当のことでしょうか?

太田先生 よくいわれますが、私は実はそうではないと思っています。世界と比較して日本人が特に金融・投資についてのリテラシーが低いわけではありません。

逆にいえば、日本人は「欧米人は一般に金融の仕組みや投資について、日本人以上に知っている」と思いがちですが、実は全然そんなことはないのです。

――えっ、それは意外です。

太田先生 金融業に従事している人はともかく、サラリーマンや自営業者など、一般の人の知識は日本人と変わらないですよ。

日本人の不幸は「銀行のマイナス金利」にある!

――ではなぜ「欧米の人は金融・投資についてよく知っている」と日本人は誤解するのでしょうか?

太田先生 日本人の不幸は「マイナス金利」が実施されたことにあります。日本人はずっと「銀行に貯金しましょう」と教わってきました。私たちの親の世代には銀行の定期預金金利が年7-8%もあったのです。

例えば、年利が8%あると9年あれば(複利で)元本は倍になるわけですよ。ですので、定期預金で10年とか15年間「将来のために貯金をしましょう」とやっていると、老後のためのある程度のまとまったお金できたのです。また、退職金や企業年金など、手厚い仕組みによるまとまった金額の給付が一般的でした。

――今からするとうらやましい話ですね。

太田先生 はい(笑)。バブルがはじけて景気が悪くなってから、退職金は先払いして制度をなくすとか、企業年金も廃止解散とか、そんな話ばかりになってしまいました。

しかし、最大の問題はやはり銀行金利が安くなってしまい、銀行にお金を預けても増えなくなったことです。親から聞いてきた「将来のために銀行に貯金をしなさい」が通用しなくなったのです。

その代わりにどうすればいいのか、誰も教えてくれなくなったことが問題の根幹にあります。

――なるほど。

太田先生 ところが欧米では、低金利になる前から「銀行に貯金」以外の資産形成方法と制度がしっかりあったわけです。

例えば、アメリカですと公的老齢年金制度に加え、「IRA」(Individual Retirement Arrangementsの略:個人退職口座)、「401k」(確定拠出年金)といった、老後資金を作るのに使われる積み立て制度が存在しています。

イギリスには、日本の「NISA」のモデルとなった「ISA」(Individual Savings Accountの略:個人貯蓄口座)があって、非課税枠が日本の倍近くあるなどお金を増やすために手厚い制度となっています。

預金以外の手段で資産を積み立て、投資で増やそうという話も、日本ではこれまで全く一般的ではありませんでした。

例えば、インデックスファンドという言葉は日本でもやっと一般に知られるようになりましたが、その草分けである『バンガード』が設立されたのは1975年(昭和50年)ですよ。日本は海外からすごく遅れているのです。

つまり、

「とにかく貯金すればいい」だけだった日本人はそれ以外の方法を知らない
欧米人には「銀行貯金」以外の方法があり、それを知っている

だけのことです。

アメリカのサラリーマンなら、企業年金(確定給付・確定拠出年金)に加え、先ほどのIRA、自営業者ならIRAに加えキオプラン(自営業者退職制度)と呼ばれる退職金積み立て制度やシステムがちゃんとあります。

そういうことを企業内での啓蒙、組合や同業者からの情報共有を通じて教えてもらうのです。これは「退職後の資産形成なら、まずこれらの制度を使っておけばいい」みたいな話で、特に一般の欧米人が金融知識や投資手法について詳しいというわけではありません。

――日本ではそういうシステムがないのがつらいですね。

太田先生 ようやく「NISA」や「iDeCo」が充実してきましたが、残念ながらまだそこまで一般的になったとはいえないですね。また制度ももっと拡充し、啓蒙を進めるべきです。

<<前編ここまで>>

というわけで、まずは日本人と金融リテラシーについて太田先生に伺いました。太田先生によれば、日本人の不幸は「銀行に預けておけばいい」が通用しなくなったこと、のようです。また、「銀行に貯金」の代わりになるシステムが整備されていないことも日本人が老後を不安に思う原因とのこと。

次回は、太田先生に「では、どうすればいいのか?」について伺います。

文・構成(高橋モータース@dcp)

太田創 Profile
『一般社団法人 日本つみたて投資協会』代表理事。

1985年、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入社 英国・ブラジル駐在。2000年、シティグループ(米国) ディレクター。2006年、UBSウェルス・マネジメント(スイス)ディレクター。2007年、フィデリティ投信(米国) 部門長。2015年、GCIアセット・マネジメント 執行役員。2019年8月、一般社団法人日本つみたて投資協会 設立。

『ETF投資入門』(日経BP,2008年)、『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる米国つみたて投資』(かんき出版,2019年)、『(DVD)米国つみたて投資月3万円で3000万円の資産運用』(パンローリング,2019年)など著書多数。

⇒『一般社団法人 日本つみたて投資協会』公式サイト
https://www.tsumitate.or.jp/

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