韓国メディア『朝鮮日報』が興味深い記事を出しています。
『半導体戦争(CHIP WAR)』の著者である、『The Fletcher School of Law and Diplomacy, Tufts University(タフツ大学フレッチャー法律外交大学院)』のクリス・ミラー国際歴史学准教授にインタビューしたものです。
インタビューの中身は、中国企業の台頭によって、韓国の半導体企業の先行きが暗くなってきた件についてのもので、傑作な部分が少なくありません。全文は同記事を読んでいただくのがいいですが、教授の面白い回答だけ以下に引いてみます。
(前略)
記者:
韓国の半導体が最初に打撃を受けたようだが?ミラー准教授
「韓国はメモリー中心なので、これは避けられないことです。5年前まで、中国はメモリー分野で競争力をほとんど持っていませんでした。
しかし、莫大な資金を投じた結果、現在ではDRAMとNANDの分野で韓国の『サムスン電子』や『SKハイニックス』にとって実質的な脅威となっています。
(実際、韓国企業はかつて“キャッシュカウ”の役割を果たしていたレガシー半導体の市場を中国に奪われ、大きな打撃を受けている)
一方で、ファウンドリー(半導体の受託生産)では中国は依然として『TSMC』(台湾積体電路製造)より約5年遅れています。
中国が公表している情報によれば、ファウンドリー分野では輸入製造設備とアメリカの技術に依存している状況が続いています。
これらすべてを自国で賄えるようにするには、まだ時間がかかるでしょう。仮に5年後に『最先端のAIチップを主導する国はどこか?』と問われれば、依然として台湾だと答えるでしょう」
(後略)
ミラー先生は、中国企業によって『サムスン電子』や『SKハイニックス』が甚大な影響を受けているのは「しゃーないでしょ」と切って捨てました。「メモリー半導体」ばっかの「強国」でここまできたせいです。
また、ファウンドリー事業については台湾の『TSMC』が5年後にも強者だとし、中国は追いつけないし、韓国企業の名前も挙げませんでした。
次に以下です。
(前略)
記者:
世界のサプライチェーンで中国の影響力をどう評価するか?ミラー准教授:
「これは半導体だけの問題ではありません。石油化学やディスプレーなどでも、中国は低価格で高品質の製品を生産しています。
中国は韓国製品を購入する代わりに、韓国企業の生産方法を迅速に学んでいます。
かつて韓国企業がアメリカや日本の企業を模倣したのと同じやり方です。
中国は一部の最先端半導体や航空機エンジンといった分野を除けば、ほぼ自立に成功しました。
中国への技術流出を防ぐことが、中国の台頭を遅らせる唯一の方法と思われます」
(後略)
さすがにミラー先生は露骨な言葉を使いませんでしたが、言っていることは「韓国がかつてアメリカ合衆国や日本からパクったのと同じことを中国企業が行っているだけだ」――ですね。
さらに以下です。
(前略)
記者:
韓国が競争力を回復する方法は?ミラー准教授:
「技術的差別化ができない企業は、激しい競争と収益の低下を避けられない。これらの企業は過去よりはるかに速く市場シェアを失うだろう。
半導体は変化の速度が速いので、差別化失敗によるリスクもそれに比例して速く強く現れる。
絶えず技術革新に集中するのがリスクを避ける唯一の方法だ。
韓国はAIのように次の時代の革新につながる核心部品を生産できるはずだ。
『SKハイニックス』がそのような可能性を示したが、他の企業も事業モデルを調整する必要があるだろう。
技術の変化に遅れるかもしれないという恐れを常に持っているべきです。それが歴史の教訓だ」
(後略)
「技術的差別化ができない企業は、激しい競争と収益の低下を避けられない」というのは、韓国企業の肺腑をえぐる言葉でしょう。韓国メディア、政府は「超格差技術の確保」などと声高に言うようになっていますが、そんな結構なものがあれば、こんな事態には陥っていません。
もう何度だっていいますが、韓国企業は「外華内貧」※で華やかなとことばかりを追い求め、地道な基礎技術の積み上げを怠りここまで来たので、そもそも基礎部分がグラグラしているのです。だからこそ中国企業に剽窃されたらスグに追いつかれます。
※こんな四字熟語は日本にはありません。室谷克実先生や東池旭先生が指摘されるとおり、「外は華やかでも中身は貧相」という、韓国そのものを象徴する言葉だといえます。
「韓国はAIのように次の時代の革新につながる核心部品を生産できるはず」というのは、ミラー先生のリップサービスだと思われますが、韓国メディアは真に受けるのでしょうね。
HBMで『SKハイニックス』は高く評価されていますが、さて、それもいつまでもつやら……です。なにせ半導体業界の流行り廃れは速いですから。
ミラー先生のお言葉は、「まあ韓国企業も頑張ってみてください」みたいな内容に終始しています。ぜひ元記事の原文を読むことをお勧めします。
(吉田ハンチング@dcp)