韓国メディア『毎日経済』が面白い記事を出していますので、一部を以下に引きます。
キム・ソヨン金融委員会副委員長は、「債券・短期資金市場の安定のための資金が、先月末時点で27兆ウォン以上十分に残っており、来年初めには供給可能な資金がさらに増加するだろう」と述べました。
15日、金融委員会によると、キム副委員長は13日に開催された金融市場の課題検討・意見交換会で「最近発生した事件は韓国経済の構造的な問題ではなく、例外的かつ一時的なショックに該当するものであり、金融市場は徐々に安定を取り戻していくだろう」と述べました。
キム副委員長は、現在運用中の総額40兆ウォン規模の債券・短期資金市場安定プログラムが来年末まで運営されるよう措置を取ったと明らかにしました。
(後略)
韓国の金融当局は「株式市場を安定化するためのファンド」「債券市場を安定化するためのファンド」を持っています。要は、市場で株価や債券価格が下がってきたら、当局が資金を投入して値を支える――というものです。
2020年コロナ禍の際に、株価が急落、債券が安くなる(利回りが上昇する)という事態に直面し、文政権政権下で「それぞれ10兆ウォンだ」と誇ったことがあります。
上掲は「株式市場安定ファンド」についてご紹介した2020年04月の先記事ですが、そんな10兆ウォンなどというショボい規模では役に立たないでしょうに……と柏くんが書きましたが、全くのそのとおりです。
上掲のとおり、韓国は戒厳令騒動で金融市場が揺さぶられました。信用毀損で資金が一部逃げたのです。
――で、ファンド資金の出番のわけですが――当然ながら「お金はもつのですか」という疑問が湧くわけです。
そのため当局が「27兆ウォン以上あるよ」と太鼓判を押した――というのが『毎日経済』の記事なわけです。当局としては「大丈夫です」と誇ったつもりかもしれませんが、そんなことを正直に告白して大丈夫なのでしょうか。
「玉が幾らあるのか」はアタックを仕掛ける重要なポイント
1997年のアジア通貨危機では韓国も事実上のドボンに追い込まれましたが(韓国での呼称は「IMF危機」)、通貨アタックに狙われたのは「(事実上の)固定相場制」をとっていた国です。
モメンタムが通貨安に動くと、その国の通貨当局は通貨高に戻すために、例えば「ドル売りウォン買い」を行わなければなりません。
この通貨防衛――「ドル売りウォン買い」は無制限に行えません。「外貨がある分」だけしか通貨防衛ができません。なくなったら「おしまい」です。
つまり「外貨準備高」がどのくらいあるかは、非常にクリティカルな情報なのです。
通貨アタックを仕掛ける側からしても「あいつらには玉が◯◯億ドルしかないから、これを抜ければオレたちの勝ちだ」と予測を立てることができます。その読みでアタックが実行されるのです。
玉が幾らあるのかは重要な情報です。ことは外為ではなく債券市場ですが、「27兆ウォンある」とか金融当局者が明言しても大丈夫なのでしょうか。
ちなみに、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「モメンタムが元(戒厳令騒動の前)に戻るの難しい」旨の発言をすでに行っています。この方は、元『IMF』アジア太平洋局長なので、市場がどのようなものかをよくご存じなのです。
(吉田ハンチング@dcp)