2024年12月15日、日曜日だというのに、韓国の企画財政部が緊急会議を開催しました。
これは、14日(土)に大統領弾劾訴追案が可決されたことを受けてのもの。企画財政部は以下のようにプレスリリースを出しました。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「緊急経済関係長官会議の開催」
例の「F4」がそろう会議ではなく、政府機関の各部(環境部や雇用部、国土交通部など)が雁首を寄せる会議でした。主催者は崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官です。
崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官(←頑張っている人)
李昌鏞(イ・チャンヨン)『韓国銀行』総裁(←韓国にはもったいない切れ者)
金秉煥(キム・ビョンファン)『金融委員会』委員長(←モブキャラ)
李卜鉉(イ・ボクヒョン)『金融監督院』院長(←ボンクラ)
会議冒頭の崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官の発言が公表されています。面白いので以下に全文を引きます。
長いので面倒くさい方は強調文字などの部分だけ見て飛ばしてください。
緊急経済関係閣僚会議 副首相冒頭発言(12月15日)
□ 昨日、国会で大統領の弾劾訴追案が可決されました。
– 私たち経済チームは、現在の状況について重い責任を感じています。
– 国民の皆様に心からお詫び申し上げるとともに、改めて覚悟を新たにし、緊急経済関係閣僚会議を開始いたします。□ 最近の国内政治状況や米国の新政権発足などにより、わが国経済を取り巻く内外の不確実性が増大しています。
– 金融・外国為替市場の急激な変動性は一旦落ち着いたものの、依然として安心できる状況ではありません。
– 国民や我が国の企業はもちろん、外国人投資企業の経済心理が萎縮する懸念があります。□ 経済を心配されている国民の皆さまに、改めてお約束します。
– 経済チームは官民の全ての力を結集し、経済をできる限り安定的に管理していきます。1. 外国に対する信用度を確実に維持します。
– わが国経済の堅実な基盤と対外的な健全性について、国際社会の理解を深めます。
– 韓国経済説明会(IR)を開催し、国際金融および国際投資協力大使を派遣して、わが国経済の現状や対応努力を国際社会に積極的に説明します。
– 外国投資家の困難をワンストップで解決するため、政府全体で運営するオンブズマンタスクフォース(TF)を稼働します。
– また、外部信用度向上の鍵となる外国人投資に対するインセンティブを飛躍的に強化します。
– 緊急「マクロ経済金融懇談会(F4)」を通じて金融・外国為替市場のリアルタイムモニタリングを続け、市場安定への対応を迅速に進めます。2. 通商環境の不確実性に積極的に対応します。
– 経済・外交部門が協力する「対外関係閣僚懇談会」を定例化し、経済協力や通商問題、サプライチェーンの安定性をチェックし、即座に対応します。
※関係閣僚(企画財政部、外交部、産業部など)が参加– 国益を最優先に考え、対外経済全般を網羅する包括的な対応戦略を策定します。
– このため、民間の対外協力の力も最大限活用します。3.内外の状況に左右されない堅固な産業構造を構築します。
– 「産業競争力強化関係閣僚会議」を官民合同会議として拡大改編し、産業ごとの政策と対応策の実効性を高めます。
– 半導体、航空・海運物流分野に続き、石油化学や建設分野の競争力を強化するための方策も即座に準備します。4. 国民生活の安定に向けた政策努力をさらに強化します。
– 国会を通過した来年度予算が新年初日から即座に執行されるよう、会計年度開始前の配分を含め、迅速に予算配分を完了します。
– 財政、公的機関、民間投資などの利用可能な資源を総動員し、来年上半期の迅速執行計画も間もなく発表します。
– さらに、脆弱層への追加支援策も大胆に検討します。□ これら4つの政策方向を具体化した「2025年経済政策方向」を関係各省庁との合同で年内に発表します。
□ 今はわが国経済の行方を左右する非常に重要な時期です。国会とより緊密にコミュニケーションを図ります。
– 「半導体特別法」「AI基本法」「電力網特別法」など、わが国産業の将来を決定づける法案が年内にできる限り処理されるよう、産業界の声を丁寧に国会に伝えます。– 国会と積極的に対話し、わが国経済の安定的な管理策を共に模索していきます。
□ わが国経済は再び試練の場に立たされています。
– わが国経済は過去にもっと困難な状況をも克服してきた力があります。
– 国民と企業が我が国経済の底力を信じ、普段通り経済活動を続けてくだされば、再び困難を乗り越えることができるでしょう。
– 政府も全力で支え、国民生活と現場の中で、国民や企業の皆様と共に歩んでいきます。□ 最後に、当初予定されていた集まりや行事を進めることで、困難を抱える小規模事業者を応援してくださるようお願いします。
□ これより会議を非公開で進めます。
崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官が非常な危機感を持っていることが分かります。
最後の「わが国経済は再び試練の場に立たされています」という発言では、率直に「韓国経済がピンチ」であることを認めています。
また注目したいのは「外国に対する信用度を確実に維持します」の部分です。
恐らく『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁からのアドバイスがあったものと思われますが、そもそも対外的な信用が脆弱な「韓国経済」ですから、国の信用が毀損された場合、致命的な事態を引き起こす可能性があることを理解しています。
そのために、この項目が一番上に置かれているのです。
また、韓国経済説明会(IR)の開催、国際金融および国際投資協力大使を派遣というのも、なかなか手厚い対応です。
これも外国人投資家のモメンタムが「セルコリア」に動かれては困る――という危機感の表れです。
↑『韓国銀行』が公表した2024年11月末時点での外貨準備高。4,153億ドルで、現金たるDeposits(預金)は191億ドルしかない。
なにせ(公表を信じるなら)外貨準備高が4,000億ドルしかないので、資金流出(キャピタルフライト)の本流が起こったら止めることはできません。
外貨準備高の現金たるDeposits(預金)はざっくり200億ドルしかありませんし、恐らく緊急時にスグ手当できるキャッシュは100億ドルぐらいしかないでしょう(これは推測です)。韓国は外国からの信用を失って、キャピタルフライトを起こすわけには絶対にいかないのです。
――というわけで、韓国経済は企画財政部が自身で認めるほどピンチなのです。
韓国メディアでよくいわれる「韓国には危機を乗り越えるDNAがある」という主張が、崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官も「わが国経済は過去にもっと困難な状況をも克服してきた力があります」と述べている点は注目に値します。
ただし、現在の崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官には、できることの制限が掛けられています。
国会です。
『共に民主党』が過半数を占めているため、必要な法律を通すことができません。韓国の素晴らしい民主主義は、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権憎しで、政争を行っており、必要な法律が通せません。
そのため、今回の文書でも「丁寧に国会に伝えます」「国会と積極的に対話し」という表現が入っているのです。
崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官は、『共に民主党』の妨害の中でも、最善を尽くす――と述べているわけです。韓国の民主主義は素晴らしいものですね。
(吉田ハンチング@dcp)