韓国経済を「四月危機」が襲っていますが、何度もご紹介しているとおりこれは「流動性の危機」です。「流動性」なんて言葉を使うと途端に難しくなりますが、要は「お金が回らなくなりそうでヤバい」ってことです。
A君にお金を貸したのに期限になっても約束した金額を返してくれず、自分の金繰りも怪しくなり、そのためB君への返済ができない。
B君はB君で、自分がお金を返さないとC君への支払いができない……みたいな話が連鎖するとみんなでドボンになります。
この連鎖を止めるためにA君になんとかお金を供給しなければならない、まあそういった話です。これが巨額かつ、企業・国家レベルで起こっているのです。企業ですから、ドボンになったらそこで雇用されていた人が職を失い、話はさらに大きくなります。
ですから、韓国政府としては何がなんでもお金が回るようにしなけれなならないのです。
「CPが償還できない」という大問題
で、先にご紹介した「韓国を吹き飛ばすかもしれない火種」の一つである「CPの償還」問題。
面倒くさい方は飛ばしていただいても大丈夫ですが、「CP(commercial paper:コマーシャル・ペーパー)」とは「約束手形(基本「無担保」)」の一種で、資金を調達するときに発行します。
分かりやすいように話を簡単にします。企業はCPを「額面100円」で発行し、「90円」で購入してもらいます。期限が来たらこれを「100円」で買い戻すのです(額面の金額で引き取る:これが「償還」)。すると購入した人は「10円」利益が出ますね。
企業としてはCPの発行によって短期資金を集めることができるというメリットがあります。しかし、当たり前ですが期限が来たら契約どおりに償還しなければなりません。
韓国の企業はこのCPを大量に発行しており(後述)、しかも償還ができない企業続出という事態になっているのです。
普通なら、新たな社債を発行するなどロールオーバー(借り換え)をして凌ぐのですが、新型コロナウイルス騒動で景気が悪化、投資家心理も冷え込んでおり、企業の借金を引き受けようなんて篤志家はいません。
そのため、大量のCPをまともに償還しなければならず(つまり借金の返済です)、ロールオーバーできなければドボンです。
「CP」の問題はひと息ついたのか? NO!
韓国で2019年に発行されたCPは182兆9,000億ウォン。韓国メディア『newspim』の記事(2020年03月23日)によれば、
SK証券によると、4月満期が到来するCPは19兆3,000億ウォンであり、そのうち、A2-等級以下は7兆3,000億ウォンだ。
⇒参照・データ引用元:『newspim』「CP4月満期だけで『20兆』…企業3カ月以内に相次いで倒産」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
とのこと。「このCPの償還不可が連鎖倒産の発火点になるのでは」と03月からすでに指摘されてきました。韓国政府の対応は十分なのでしょうか?
答えは「NO!」。あるいは「全く十分ではない」です。
2020年04月22日、韓国政府は「第5回非常経済会議」を開催し、20兆ウォン規模のSPV(Special Purpose Vehicleの略:特定目的事業体)を設立して、社債・CP・短期社債を買い取ることを決定しています。
ところが、問題はやはり「その規模」、つまりは金額です。上掲のとおり、04月満期を迎えるCPは約20兆ウォン。
しかも中には「A2-等級以下」の格付けの低いものも含まれています。政府が買取を行うのは(基本)優良なものです。では、この「7兆3,000億ウォン」は買い取ってもらえないのでしょうか?
その可能性は高いです。で、もしCPの発行体が償還できず、SPVに買い取ってもらえずドボンになったら? 上記の「みんながドボンになる」連鎖が起こる可能性があります。
ですから、国策銀行の「債券市場安定基金」ではやはり金額が全く足りません。CPの償還は05月、06月…と続きます。しかも、基金が買い取るのはCPだけではないのです。社債などの買取も行わけなければなりません。
「20兆ウォン」などという中途半端な金額では防衛は無理だと考えられます。
(柏ケミカル@dcp)