日本ではあまり知られていませんが、韓国・尹錫悦(ユン・ソギョル)政権によって放送通信委員会・委員長に据えられた李真淑(イ・ジンスク)という人がいます。
この人をひと言でいえば「女傑」です。
放送通信委員会というのは、韓国のメディアを監督管理するための組織。なぜ女傑がTopとして送り込まれたのかといえば、左派・進歩系に浸透されており、思想的に傾いた組織となっていたからです。
これも文在寅前大統領の遺産ですが、尹政権はこれをひっくり返そうとしたのです。
2024年07月31日、李真淑(イ・ジンスク)さんは委員長に就任しますが、そのわずか2日後、08月02日には『共に民主党』が国会で弾劾訴追案を可決。
李真淑(イ・ジンスク)委員長は職務停止に追い込まれてしまいました。現在の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領のように、これは憲法裁判所に持ち込まれ、長い審議が行われましたが、2025年01月23日、憲法裁判所は李真淑(イ・ジンスク)委員長の弾劾訴追を4対4で棄却しました。
これを受け、李真淑(イ・ジンスク)委員長は直ちに職務に復帰。
↑2025年01月23日、放送通信委員会に職務復帰した際の李真淑(イ・ジンスク)さん。
彼女は『共に民主党』による数の暴力に屈しませんでした。
この女傑に韓国メディア『朝鮮日報』がインタビューした記事が出ています。長いインタビュー記事で、しかし捨てるところがない良記事ですので、ぜひ原文を見ていただきたいのですが、以下に注目箇所を引用します。
(前略)
――3回目の弁論のために憲法裁判所に行ったとき、雰囲気は違っていましたか?
「私の事件は最初から『共に民主党』、民主労総、MBC vs 李真淑(イ・ジンスク)の戦いでした。
民主労総は数の力を持ち、MBCは世論を形成し、『共に民主党』は立法府ではありませんか。
普通の戦いではありませんでした。
陣営があまりにも明確に分かれているため、憲法裁判所が客観的に判断するのは難しいのではないかとも思いました」
――憲法裁判所が決定を下した01月23日、どんな気持ちで行きましたか?
「法理的に考えれば6対2で棄却されると思っていました」
――「4対4」 と聞いたときはどう思いましたか?
「冗談で『私は誰、ここはどこ?』と言いますよね。そのような気持ちでした。『世の中にこんなことがあるのか』とも思いました」
――『共に民主党』弾劾が棄却された当日から、再弾劾の話をしました。
「『またMBCに手を出せば、黙っていないぞ』ということなのでしょうか?
はっきり申し上げますが、私はMBCに介入したわけではなく、任期が終了した放送文化振興会(訪問振興会)の理事を新たに任命しただけです。
私が弾劾訴追で職務停止になっていたときでも、国会科学技術情報通信委員会(以下、科放委)は私に対する聴聞会を続けていました。
私は『MBCは共に民主党ブロードキャスティングコーポレーションなのか、それとも民主労総ブロードキャスティングコーポレーションなのか?』と言いましたが、再弾劾の話を聞いた瞬間、そのことがまず頭に浮かびました」
――先月、イ・サンフィ科放委議員に会った際、「MBCは『共に民主党』のプロパガンダ機関にすぎない」と言っていました。
「MBCは朴槿恵(パク・クネ)元大統領については『朴槿恵氏』と呼び、北朝鮮の金正恩については『金正恩国務委員長』と呼びます。
国軍の日の式典は放送せず、北朝鮮の軍事パレードでは新型兵器が紹介されたと報道します。
これが公共放送と言えるでしょうか?
自分たちは公正な報道をしていると主張していますが、誰が見ても公正ではありませんよね。尹錫悦大統領の弾劾賛成・反対集会の現場に行った記者が興奮して放送しているのを見ました。これが正しい報道の姿でしょうか?」
「記者はどのような事件に接しても、意図的に距離を置き、客観的かつ中立的に、冷静に報道すべきです。
記者がプレーヤーになって感情をむき出しにして放送し、それをフィルターなしにそのまま流すのが公正な報道でしょうか?
私は尹大統領に関するMBCの報道を見て、あまりの酷さに驚きました。
公共放送が堂々と『内乱の首謀者・尹錫悦』と言うのです。今この事件は憲法裁判所で審理中であり、しかも『内乱罪』の容疑は外されました。これは「12・3戒厳」であって、「12・3内乱」ではありません」
――もし職務停止になっていなかったら、こうした放送に対して警告を出していましたか?
「それは放通委員長の権限ではありません。
放送通信審議委員会に通報があれば、そこで審議するだけです。
キム・ソンフン警護処次長は『高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が大統領を逮捕しに来ても、最後まで大統領の警護業務を担当する』と言いました。それが正確な発言です。
しかし、MBCは彼を『強硬派・キム・ソンフン』と報道しました。
自分の職務を全うすると言っているだけの人が、なぜ突然『強硬派』に仕立て上げられるのでしょうか?」
――こういうレッテル貼りは、これまでも多く経験してきたのでは?
「彼らは私のことを極右と呼びます。彼らと意見が違えば、すぐに極右だと言うのです。
プロパガンダに長けた人々には、3つの原則があります。『強く、単純に、繰り返し語れ』です。
大邱駅前で行われた尹大統領弾劾反対集会に参加した人々も極右、有名な講師、チョン・ハンギル氏も極右、私も極右。
『共に民主党』は何にでも『極右フレーム』をかけます。
最近、弾劾関連の集会が頻繁に開かれていますが、正確には『尹錫悦大統領の弾劾賛成集会』と『弾劾反対集会』です。
しかし、左派は弾劾反対集会については『保守団体のメンバーが中心となって開催された集会』と言い、弾劾賛成集会については『市民団体が中心となって開催された集会』と言います。
『保守団体』と『市民団体』、この言葉の違いには微妙なニュアンスがありますよね?
さらに、弾劾反対集会の参加者数は『主催者発表で○○人』と報道し、弾劾賛成集会の参加者数は『警察発表で○○人』と言います。言葉を巧みに使い分けて、視聴者や国民を誘導しているのです」
(中略)
――現在の状況をどう見ていますか?
「これは悲劇です。しかし、私の考えは揺らぎません。
大統領の非常戒厳令についての判断は、現在法廷で行われています。
誰であれ、軽々しく予断を下すべきではありません。しかし、私にはこういう考えもあります。
大韓民国の大統領は、国民が権限を与えた「韓国のCEO」です。CEOが持つ最大の権限は、人事権と予算権ではありませんか?
ところが、これまでの『共に民主党』の行動は、この二つの権限を完全に封じ込めるものでした。
もし私一人が弾劾されただけなら、このような話はしなかったでしょう。
しかし、『共に民主党』は、
イ・サンミン行政安全部長官、
パク・ソンジェ法務部長官、
イ・チャンス中央地検長、
李在明を捜査した検事たち、
チェ・ジェヘ(崔載海)監査院長、さらには
韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理まで弾劾しました。
つまり、大統領の人事権を完全に無力化する行動だったのです。
さらに、『共に民主党』はこれまでに合計29回も弾劾案を発議しました。
加えて、検察と警察の特殊活動費(特活費)をゼロにし、予算を削減しました。
『共に民主党』の行動は、端的に言えばこういうことです。
『私はあなたを大統領と認めない。多数党である私たちが勝手にやるから、お前は給料だけもらっていろ』……これと何が違うのでしょうか?」
(後略)
『共に民主党』に弾劾訴追された人、そして帰還した人の言葉ですので、重みがあります。
特に、『共に民主党』が、大統領の人事権と予算件を封じ、それは「私はあなたを大統領と認めない。多数党である私たちが勝手にやるから、お前は給料だけもらっていろ」と同じだ――という指摘は正鵠を射ています。
↑2025年03月01日、尹大統領の弾劾反対に集まった大群衆。
尹大統領弾劾反対の声が高まっているのは、このような『共に民主党』のクズっぷりが知られるようになっているからです。
(吉田ハンチング@dcp)