米国コルビー国防次官「台湾が陥落したら中国は次に恐らくフィリピンを狙う」

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日本でどれほど読まれているは分かりませんが、アメリカ合衆国・トランプ第2期政権下で国防総省政策担当国防次官(Under Secretary of Defense for Policy)に任命されたElbridge A. Colby(エルブリッジ・A・コルビー)さんの2021年の著書『The Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power Conflict(拒否の戦略)』をご存じでしょうか。

現在の合衆国の安全保障政策はまさにこの本に書かれている方向に沿って展開されているように見えます。

拒否戦略とは米中の軍事的競争、特に台湾防衛を念頭に置いた「中国の侵略を阻止するための戦略」をいい、中国の侵略行為を「軍事的に成功させない」状況をつくることこそが重要であり、米軍は地球全域を防衛する必要はなく、特定の戦略的地域(例:台湾海峡、南シナ海)でのみ優位を保てば良い――と説いています。

また、そのためには対中国にリソースを集中し、反覇権連合の力を結集し利用することが大事である――とも。

面白いのは、台湾が陥落した後に中国が何を狙うのか――「中国の最適戦略」について説いた部分で、以下にその一部を引いてみます。

(前略)
台湾陥落後の中国の最適戦略は、おそらく東南アジアに焦点を絞ることだろう。

東南アジア諸国は、政治的・軍事的バランスの重大な変化がなければ、例えば中国が容易に征服するにはあまりに強大で強い決意を持つ日本と比べると、遥かに発展度は低く、脆弱である。

豊かで軍備の整った韓国は、日本よりは弱いものの、標的としては手強いだろうし、さらに言えば、その地理的位置を踏まえると、中国の韓国に対する攻撃は日本を危険にさらすことになり、ゆえに米国と日本を紛争に招き入れる可能性が高い。

この観点から、中国が次に狙うのはフィリピンだろう。
(後略)

⇒参照・引用元:『拒否戦略 中国覇権阻止への米国の防衛戦略』著:エルブリッジ・A・コルビー,翻訳:塚本勝也/押手順一,株式会社日経BP,2023年12月22日 1版1刷,p202

中国が台湾陥落後に落とそうとするのは恐らくフィリピンだとしています。

日本は強大で(主権独立に対する)強い意思があるので無理だからで、面白いのは韓国に対する評価です。

「日本よりは弱いものの、標的としては手強い」とし、地理的に韓国に手を出すと日本が巻き込まれ――ということは合衆国が巻き込まれて、中国 vs 合衆国が本格化する可能性があるので……としています。

この著作は2021年ですが(日本語版は2024年)、コルビーさんは第2期トランプ政権で国防次官となり、状況も変わりました。

トランプさんは在韓米軍を撤退させたがっている人ですが、韓国はこれからも在韓米軍を「アテ」にできるでしょうか。

ちなみにコルビーさんは、もし台湾が中国によって失陥しそうになったら、半導体を中国に渡さないために『TSMC』を爆破すべき――という議論についても示しています。

コルビーさんは自身を「リアリスト(現実主義者)」と表現していますが、こういう議論を厭わないのは面白い点です。

韓国はどうするつもりか?

また『Financial Times』の報道によれば、コルビーさんは「合衆国が台湾問題で中国と戦争に突入した場合、インド・太平洋地域の同盟である日本とオーストラリアにどのような役割を果たすのか、具体的な立場を両国政府に要求した」となっています。

本件について『朝鮮日報』が社説を出しており、以下のように書いています。

(前略)
わが国政府(韓国政府)は、米韓首脳会談などの外交の場において「台湾海峡における力または威圧による現状変更に反対する」という立場を何度も表明しており、これは台湾海峡における緊張への備えとして、中国を牽制する表現と受け止められている。

ただし、台湾海峡有事の際の後方支援の可能性や、在韓米軍の投入については、明確な立場を示していない。

合衆国国防総省がコルビー主導のもと、全世界の海外駐留米軍の態勢調整を検討しており、早ければ08月に新たな国防戦略(NDS)の発表を予定している中で、中国牽制のための韓国の負担拡大を迫る可能性が高いと予想される。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「”美, 일본·호주에 ‘미·중 전쟁 시 어떤 역할 할 거냐’ 입장 표명 압박」

Money1でも先にご紹介したとおり、合衆国は対中国に在韓米軍を投入する姿勢を示しており、当然台湾有事でも同じです。

しかし、韓国は「在韓米軍は北朝鮮への阻止戦略」としてしか表明しておりません。明らかに合衆国の方針とは齟齬があるのです。

役に立たない同盟国(とやら)を合衆国が放置するでしょうか。血盟だそうですが……。

(吉田ハンチング@dcp)

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