Money1でも進展があるたびにご紹介してきましたが、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)前大統領は、韓国の主力輸出品として「原発」と「兵器」をアピール。
自ら外遊して他国に売り込み、「韓国の第一の営業マン」と称しました。
その成果にひとつとして上がったのが「チェコへの原発輸出」です。
タイムラインは以下のようになります。
2024年07月17日
チェコ政府が、Dukovany(ドゥコバニ)新設原発の建設で『韓国水力原子力発電』(KHNP)を優先交渉権者に決定。2024年08月26~27日
『ウェスティングハウス』(WEC)が抗議・不服申立て。プレスリリースで、韓国のAPR1000/1400はWECライセンス技術(System 80)を利用しており、WECの同意なく第三者へサブライセンス不可と主張。チェコ競争当局への審査申請(WEC・EDF)も同時期に公表。
2025年01月16日
WEC・KEPCO・KHNPが知的財産権紛争の包括的和解(Global Settlement Agreement)に合意。
※上記の優先交渉決定から約6カ月後2025年04月24日
チェコ競争当局が『EDF(フランス電力)』の不服を却下し契約署名へ進行する可能性を確認。
※フランスの『EDF』は今回の韓国『KHNP』が優先交渉権者に決定されたことについて不服申立てをしていた。2025年06月04日
チェコ最高行政裁判所が、これまで契約署名を妨げていた下級審の差し止めを取り消す。同日(06月04日)
チェコの国営企業『EDU II』および『KHNP』が、韓国型原発2基建設の最終契約に正式に署名しました。
――というわけで、チェコは韓国企業『KHNP』に原発を建造する契約を与えました。
合衆国『WEC』とフランス『EDF』の不服申立てをはねのけて――です。これは裏に何かあるのでは?と考えるのは自然です。
UAEのバラカ原発でも、後になって「バカ安」「60年の稼働保証」「秘密軍事協定」という無茶な条件だったことが発覚。韓国内でも衝撃を与えました。
こういうのは政権が変わってから出てくるのです。

今回も尹錫悦(ユン・ソギョル)政権が引きずり下ろされて――やはり出てきました。
合衆国のウエスティングハウス(WEC)は、そんな甘い会社ではありませんでした(なにせもう暖簾しか残っていないような企業ですから保有する知的財産権で骨までしゃぶろうとするのです)。
韓国はこのような条件で受注した!
韓国はどのような条件で受注できたのでしょうか。『ソウル経済』が事細かに書いていますが、まとめると以下のようになります。
恐らく読んでいると、気が滅入ってくるはずです。
期間:50年
対象:韓国が輸出するすべての韓国型原子炉(大型原発・SMR含む)
内容:韓国が受注しても、WECが主要技術・契約の一部を事実上支配する仕組み
2. 金銭的条件
韓国型原発1基を輸出するごとに、
6億5,000万ドル(約9,000億ウォン)相当の物品・用役をWECから購入
1億7,500万ドル(約2,400億ウォン)の技術使用料をWECに支払い
※技術使用料は 物価上昇率に応じて自動的に引き上げ。
つまり、実質的に原発1基につき少なくとも1兆ウォン以上が合衆国側に流出。
3. 技術主権に関わる条項
SMRを含むすべての次世代炉の輸出には、WECの「技術自立検証」を通過する必要。
WECが90日以内に応答しない場合でも、その後は 合衆国の第3機関のみで検証を行う仕組み → (WECに圧倒的に有利)
「検証前は販売マーケティングは可能だが、拘束力ある契約はできない」と明記されている。
つまり、実質的に韓国の独自技術は「WECの許可なしに輸出できない」構造。
4. 設備・部品の取り分
韓国が受注しても、原子力計装制御システム(MMIS)、原子蒸気供給系統(NSS)など主要機器をWECが独占的に供給。
つまり、韓国企業が建設しても「おいしい部分」はWECに流れる。
さらにチェコの場合は 現地化率60% を約束済み ⇒ 韓国企業の実質的取り分はごく小さい。
5. 燃料供給
チェコ・サウジアラビアの原発燃料は100% WECが供給する。
その他地域でも50%をWECが供給。
つまり「燃料はWECから買え!」という契約。
韓国の『斗山エナビリティ』や『韓電原子力燃料』はシェアを失う構造。
6. 過去契約との比較
1997年の韓電・韓水原と米ABB-CEの契約では、10年間で約3,000万ドルの技術料だけだった。
※本件については本記事末にまとめます(長くなるので)
今回は「1基ごとに1.75億ドル+物価スライド」 ⇒ 韓国には大幅に不利。
――というわけですので、合衆国のWECは「保有する知的財産権をフルに使って、韓国企業からできるだけお金を巻き上げるという内容の秘密契約を締結」して、その結果、韓国企業がチェコでの原発建造が可能になったというわけです。
キーポイントは、
WECは「この源泉技術は自社所有だから、韓国は自由に輸出できない」と主張。
韓国が「韓国型原発は国産」として売り込もうとしても、WECの同意がなければ海外販売できないという立場を取る。
――になります。
「お金がないのは首もないのと同じ」とは西原理恵子先生の名言ですが、「技術がないのも首がないのと同じ」です。
韓国は純国産、純国産と取り憑かれたようにいいますが、違います。
韓国には基礎技術の知的財産権などないのです。
韓国が韓国型原子炉(OPR1000、後のAPR1400へ発展)を輸出・活用できるようにするために結ばれた原子炉技術ライセンス契約で、技術使用料として 10年間で約3,000万ドルを支払うという条件のものです。
ABB-CE(ABB Combustion Engineering) は、合衆国の原子炉メーカー Combustion Engineering(CE)をスイスのABBグループが買収した会社。
CEは韓国にとって重要で、韓国型原発(特にOPR1000 / APR1400 の設計基盤となった加圧水型炉 System 80 技術)を提供してきた。
1990年代、韓国は「国産化した韓国型原子炉(KSNP=Korean Standard Nuclear Power Plant)」を輸出できるようにするため、合衆国側のライセンスに依存せざるを得ませんでした。
(吉田ハンチング@dcp)






