米韓の関税交渉が期限前に妥結しましたが、表面上は米韓首脳会談の含めてシャンシャンで終わったふうに装っています。特に韓国の大統領室は。
しかし、実はまだ米韓の交渉は終わってなどいません。
2025年08月29日には、アメリカ合衆国の商務省産業安全保障局(BIS)が、バイデン政権時に設定された「半導体製造装置輸出制限についての特例措置」を撤回する――としました。
これは「認定エンドユーザー(VEU)」資格の取り消しで、BISは案件ごとに都度都度許可を申請せよとし、期限は2025年末です。
最近、対米関税交渉のウラで何が行われていたのかの情報がちらほらと出るようになってきました。
↑YouTube『[팟빵] 매불쇼』チャンネル「이재명 대통령의 결단 “정상회담 못해도 좋으니 무리한 서명하지 마!” (김용범 정책실장)|풀버전」
大統領室の金容範(キム·ヨンボム)政策室長がYouTubeのトーク番組『매불쇼(メブルショー)』に出演し、今回のBISの抜け道潰しについて、
「企業が心配していた事案であり政府も知っていたが、思ったより早く決定された」
と述べました。政府側は知っていたわけです。その後の発言が、
「『サムスン電子』と『SKハイニックス』が大いに努力しなければならない」
ですから頼りにならない話です。合衆国は申請すれば許可する方向などといっていますが、恐らくかつてのような資格を付与することなどないでしょう。
まともに考えるなら、『サムスン電子』と『SKハイニックス』は現在保有する中国本土の半導体工場の生産拡大ができません。
どうするんだ?ですが、金容範(キム·ヨンボム)政策室長は――、
「わが方の防御論理は『サムスン電子』と『SKハイニックス』が合衆国の友邦国の核心企業だということ」
「最悪の場合、装置が搬出されずこれら企業が(中国から)撤退すれば、中国はその代わりに何をしてでも代用品を作るだろう」
「そうなれば合衆国の統制権が消えることになる」
「両企業が(中国工場で)生産する半導体は(全体の)約30%」
「世界経済に資するよう(政府も)共に説得しながら努力している」
――と述べています。
「『サムスン電子』『SKハイニックス』が友好国の核心企業だ」という言い訳、また「『サムスン電子』と『SKハイニックス』が半導体を製造しなくなったら、合衆国に統制できませんよ」という指摘が、果たして現在の合衆国政府に効くでしょうか。
国防総省政策担当国防次官(Under Secretary of Defense for Policy)のElbridge A. Colby(エルブリッジ・A・コルビー)さんは、その著書『The Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power Conflict(拒否の戦略)』の中で、
もし台湾が中国によって失陥しそうになったら、半導体を中国に渡さないために『TSMC』を爆破すべき
――という見方すら示しているのです。
『サムスン電子』『SKハイニックス』が中国本土工場で半導体製造を拡大できなくても別に構わん――と考えていると見た方がいいのではないでしょうか。
この金容範(キム·ヨンボム)政策室長が出演した番組で面白いのは、ラトニック商務長官との交渉時に怒号まで飛び交ったと証言している点です。
以下の発言です。
「(ラトニック商務長官が)関税協商案にサインしなければ首脳会談を控えて大事になる可能性があるとも言った」
「会談前までラトニック長官と2時間のカンファレンスコールを行ったが、怒声も飛び交うなど危うい瞬間が多かった」
「最も不確実性の高い首脳会談ではなかったかと思う」
「こうして自分が首脳会談を台無しにするのではないか、カンファレンスコールに参加したわがメンバーたちもざわざわしていた」
「3,500億ドルはとてつもない大金であり、為替が数百ウォン上昇すれば外為市場は大打撃を受けることになると訴えた」
「われわれは通貨危機を経験した国なので日本とは違うと説得すると、後半には(ラトニック長官が)わが方の問題提起を理解した」
ご注目いただきたいのは、対米投資の3,500億ドルを避けるために、「われわれは通貨危機を経験した国だ」とし「日本とは違う」と言った――という点です。
これは1997年のアジア通貨危機(韓国の呼称では「IMF危機」)時のことをいっていますが、ウォン安が進行するのは耐えられないから勘弁してくれ、また危機に陥る――と泣きを入れたわけです。
日本とは違うというのは、日本の場合は安定した通貨(ハードカレンシー:円)を持ち、資産もあるので――といった意味だと思われます。
逆にいえば、韓国は日本と違って金融面で脆弱だといっているわけで、(日本を引き合いに出すのは非常に業腹ではありますが)日本よりむしられてはたまらないと――ここでも泣きを入れたわけです。
しかし、これが効いたかどうかはまだ分かりません。
現在の第2期トランプ政権が行っているのは、ほとんど「恐喝」で、たとえ文書があったとしてもまったく安心はできません。
さて韓国の扱いはどうなるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)






