欧州熱波・ドナウ河の記録的渇水でルーマニア原発が全部停止。

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2026年夏、欧州は熱波に襲われています。

この熱波にドナウ川の水位が異例の低水準となり、ルーマニアの原発が停止するという異常事態になりました。原子炉の稼働に必要な水を取り入れることができなくなったためです。


↑ルーマニアのツェルナボダ原発。1号機・2号機の2基の原子炉を有しています。

2026年07月28日にはツェルナボダ原発1号機はすでに停止していました。

運転上の基準となる水位マイナス230cmに達し、ドナウ川のルーマニア流入量は毎秒1,370立方メートルまで低下したためです。

原発を稼働し続けるための努力も効かなかった

原子炉の稼働を続けるため――ドナウ川本流の限られた水をツェルナボダ原発の取水側へ少しでも多く回し、冷却水ポンプの吸込水位を維持するために、以下のような措置を行いました。

❶河床の岩盤・岩礁を爆破・除去
ドナウ川の分流部には、水の流れを妨げたり、極端な渇水時に水流配分を悪化させたりする岩盤があります。ルーマニア当局は軍なども投入し、水中の岩盤を爆破して除去しました。

❷浚渫して河床の土砂を除去
渇水によって浅くなった水路については、堆積した土砂を浚渫し、水が通れる断面を確保する工事も行われました。

❸石を積んだはしけを意図的に沈めて「仮設堰」を造る
石材を積んだbarge(はしけ)をドナウ川の分流部に意図的に沈めました。 4隻を使っています。

船体と石材を一種の仮設堰・水中障害物として使い、別方向へ逃げていた水をせき止めて、ツェルナボダ原発側へ流れる水量を増やすことを試みたのです。

❸の措置は、特に異例なものでしたが、実際に効果がありました。

ツェルナボダ原発のロメオ・ウルジャン所長によると、最初の2隻を沈めた後、冷却水池のポンプ吸込部で、

予測:水位4cm低下
実績:水位4cm上昇

――となって、水位低下の予測との差で8cm改善しました。

このため当初は、「現在の予測なら少なくともあと9日間は2号機を運転できる」と判断されました。

ついに2基めの原発も止まる

ところが、これが長続きしませんでした。水位低下の速度の方が大きかったからです。

そのため、2026年08月13日10時53分ついにルーマニアのエネルギー庁は、2号機も(制御)停止しました。

これによりツェルナボダ原発は2基とも停止となりました。つまり、ルーマニアの原子力発電はこれですべて失われました。

ツェルナボダの2基は通常、ルーマニアの発電量のおよそ20%を担っていますが、原発発電量はゼロになりました。

ルーマニアは原発電力を喪失しても電力需要を満たせる

以下は同国のエネルギー庁が出したプレスリリースです。

ツェルナボダ原発2号機停止後の国家電力システムの運用状況および欧州委員会レベルでのルーマニアの対応に関する最新情報

本日(2026年08月13日:引用者注)10時53分、ツェルナボダ原子力発電所(CNE Cernavodă)2号機は制御停止された。

国家電力システムは安定しており、運用は正常に行われている。現時点で入手可能なすべての推計によれば、全国レベルで電力を安定的に供給するうえでリスクは存在しない。

現在入手可能なデータおよび予測に基づけば、国家電力システムの運用に特段の困難は予想されておらず、必要な電力需要は、水力発電、風力発電、石炭火力の予備電源、および電力輸入を組み合わせることにより、通常の条件下で賄われている。

ルーマニアは現時点で、約4,000MWの国境を越えた電力輸入容量を有している。

本日夕方のピーク時間帯には最大2,300MWの輸入が必要になると見込まれているが、この水準は利用可能な商業容量の範囲内である。

前日の夕方には、瞬間最大電力需要は約7,000MWで、国家電力給電指令所(Dispecerul Energetic Național)の予測を約300MW下回った。本日の最大電力需要は約6,900MWと見込まれている。

ルーマニアには追加の予備発電力があり、状況の推移および運用上の必要性に応じて国家電力システムに投入することができる。これには、天然ガス、石炭、水力、太陽光、風力の発電設備のほか、蓄電池システムも含まれる。予備電源には、出力330MWのオルテニア・エネルギー・コンプレックス(Complexul Energetic Oltenia)のロビナリ4号発電ユニット、および技術的制約と利用可能な水資源の範囲内で、ハイドロエレクトリカ(Hidroelectrica)の水力発電から利用可能な少なくとも300MWが含まれている。

今後7日間については、予測では風力発電からも相当量の供給が見込まれており、平均発電量は約525MW、最大で1,560MW、最小で約100MWと推定されている。

利用可能な国内発電、輸入、水力・風力資源、および予備発電設備を組み合わせることにより、国家電力システムは現時点で、ツェルナボダ原発の2基が一時的に利用できないことによって生じた発電不足を補うために必要な手段を有している。

エネルギー省は、国家電力給電指令所とともに、発電量、電力消費量、利用可能な予備力および国境を越えた電力融通を常時監視しており、国家電力システムの需給均衡と安全な運用を維持するため、資源の利用をリアルタイムで調整している。
(後略)

⇒参照・引用元:『ルーマニア エネルギー庁』公式サイト「Actualizare privind funcționarea Sistemului Electroenergetic Național după oprirea Unității 2 CNE Cernavodă și demersurile României la nivelul Comisiei Europene」

原発の発電量はゼロになりましたが、電力輸入あるので需要を満たせるとしています。

火力発電所を再稼働する皮肉

プレスリリース内に出てくる「出力330MWのオルテニア・エネルギー・コンプレックス(Complexul Energetic Oltenia)のロビナリ4号発電ユニット」というのは、ルーマニア南西部にある大型の褐炭(リグナイト)火力発電所「ロビナリ火力発電所」の4号発電ユニットのことです。

今回ツェルナボダ原発2基が止まったため、緊急時の穴埋め電源として登場しました。

燃料は、いわゆる高品位の瀝青炭ではなく、ルーマニア国内で採掘される褐炭が使えます。

「1号機:約700MW喪失 + 2号機:約700MW喪失」で計約1,400MWの電源喪失ですが、ロビナリ火力発電所4号機は「330MW」しかありません。原発の電力喪失をすっかりカバーできるわけではないのでしす。

ルーマニアはEUの脱炭素政策と復興・強靱化計画(PNRR)に基づいて、CE Olteniaの褐炭火力を段階的に縮小・廃止する政策を進めています。

ところが2026年08月、記録的渇水によって、

⇒ ツェルナボダ1号機停止
⇒ 2号機も停止
⇒ 約1,400MWの原子力電源消失
⇒ 予備に置いていた褐炭火力ロビナリ4号機330MWが再び重要になる

という皮肉な事態になりました。

脱炭素政策に反していようが、火力発電所を再稼働しなければならなくなったのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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