先からご紹介しておりますが、韓国株式市場では面白い現象が起きています。外国人投資家が韓国株式市場から資金を引き上げているのに真っ向勝負するかのごとく、韓国内の個人投資家が「買い」に走っているのです。
この国内の個人投資家「買い勢力」を韓国メディアでは「東学アリ」と呼んでいます。
日本人にはピンときませんが、「東学党の乱」(南朝鮮では「東学農民運動」あるいは「東学農民革命」と呼ばれています)※1に参加した群衆を見るようだとして命名されたとのこと。外国人投資家に対する「反乱」という意味が込められているのかもしれません。
この東学アリと呼ばれる人々はベビーブーマー世代が多く、なぜ彼らが今「株式投資に走るのか」について興味深い記事が韓国メディア『毎日経済』に出ました。一部を以下に引用します。
(前略)
東学アリ運動の主役はベビーブーマーだ。最近になって、いくつかの証券会社を中心に、20・30代の若い層の新規流入が顕著だとしているが、まだアリの大半は1955~1963年に生まれたベビーブーマーだ。
韓国預託決済院の「2019年12月決算の上場企業の株式における、個人の所有者年齢別分布」を見れば、株主数基準では、ベビーブーマーに属する50〜70代が46.4%を占めている。
保有株式数を見ると61.5%に達している。数字からも彼らの影響力は絶大である。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「アジア通貨危機・韓国通貨危機の経験ある5070アリ… 徹底的に優良株のみを買った」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
では、なぜベビーブーマーが投資に走っているかというと、以下のように専門家の意見を引いています。
(前略)
ジョン・ヨンテクIBK投資証券リサーチセンター長は、「ベビーブーマー世代は、アジア通貨危機と韓国通貨危機をうまく克服した過程を記憶している。今回の危機も十分克服できると信用して株式を買う」
「特に資産を多く蓄積してきた年齢であり、人口構成の割合も最も多く破壊力がある」
と説明した。
(後略)
さらに、同記事では以下のように分析しています。
(前略)
ベビーブーマーを中心としたアリは、当時お金がなかった。アジア通貨危機時には株式投資に乗り出すべきお金がなかったし、2008年には、子供の教育やアパートを購入するのに資金をオールインしており、投資にまで手が回らなかった。今、退職に迫られながら「株でお金を稼ぐ最後のチャンス」という切迫感の中、投資に出ているのだろう。
(後略)
というわけで、東学アリの中でも大半を占めるベビーブーマー世代は、この新型コロナウイルス騒動による株価下落を「最後のチャンス」と捉えているわけです。
そして購入している株式は、2020年01~03月の3カ月で『サムスン電子』『サムスン電子優先株』『SKハイニックス』の順で多いのです。要するに、韓国を代表する、安定的と目されている企業の株式にしか投資していません。
同記事によれば、買い越し株式銘柄のうち『サムスン電子』が40%近くに上ります。優先株まで入れると、なんとその割合は「46.3%」と半分近くになるのです。
つまり、ほとんど『サムスン電子』1点賭けです。
同記事は以下のように結んでいます。
(前略)
ギム・ヨングハナ金融投資研究員は「過去の経験や学習効果を通じて『韓国が滅びるようなことがない限り、今はサムスン電子の株式を最も安く買う機会』ということだろう」と分析した。
この最後の言葉で、なにかのフラグが立ったのでなけれないいのですが。
※1
1894年に朝鮮で起こった(閔氏政権に対する)大規模な民衆蜂起のことです。
(柏ケミカル@dcp)