米韓首脳会談の成果として公表された、アメリカ合衆国『moderna(モデルナ)』と韓国『サムスン・バイオロジクス』のワクチン製造についての合意。
先にご紹介したとおり、韓国が会談前に期待していたようなものではなく、『サムスン・バイオロジクス』が担当するのは、『モデルナ』が製造したワクチンを容器に無菌充填し、ラベルを貼り、パッケージングするという部分だけです。
無菌製造(Fill-Finish Manufacturing)にはそれなりの技術が必要ですが、mRNAワクチンそのものの製造自体には全く関与できない内容です。
そのため「瓶詰め担当」などと揶揄(やゆ)されるわけですが、韓国でもこの点は政府与野党中枢部にも理解されているようです。
「単なる瓶詰め」という発言
――というのは、2021年05月27日、『中央日報』に「【独占】アン・チョルス 『ワクチン技術?単純な瓶詰め』に文『サムスンさびしいだろう』」という記事が出たのです。
これは、2021年05月26日に大統領府で行われた文大統領と与野党代表の午餐会の内容に触れたもの。
ちなみに『中央日報(日本語版)』にも同様の記事が出ていますが、細かい部分がオミットされています。
以下に元の韓国語版記事の一部を引用します。
(前略)
しかし、医師出身の安哲秀(アン・チョルス)『国民の党』代表はこの日、「私はワクチンの確保、その次に、特にメッセンジャーRNA(mRNA)の技術移転については物足りなさがある」と述べた。「mRNAワクチンが持つ意味は、一般に知られているよりもはるかに大きな意味を持っている。これは将来の国家競争力と非常に直結されている部分なので、その技術の導入は、将来の国の発展に本当に重要な部分」と理由を語った。
アン代表はこの後、「今のところは、単なる瓶詰めレベルの生産協議にとどまったが、我々はより多くの努力をして技術移転まで行くことが重要である」と強調した。
(後略)
⇒参照・引用元:『中央日報』「【独占】アン・チョルス 『ワクチン技術?単純な瓶詰め』に文『サムスン無念だろう』」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
この安議員は「単なる瓶詰め作業」と表現しています。つまり、今回の契約の中身を理解しています。しかし、合衆国(企業)が技術移転をしてくれると思っている点には恐れ入るしかありません。
文大統領は「サムスンはさびしいだろう」と発言
また、『国民の力』の金起ヒョン(キム・ギヒョン)代表権限代行が「今回の委託生産契約で国内にある程度のワクチンを供給できのか?」と聞いているのですが、文大統領は以下のように答えています。
同記事の一部を引用します。
すると、文大統領は「それは売主が絶対的な優位にある契約」とし「『サムスン・バイオロジクス』と『モデルナ』との契約を単なる瓶詰めと言えばサムスンはさびしい」と言ったと参加者は伝えた。
続いて「サムスンは長い努力をして生産委託を受けた」とし「そのような関係を考えると、単なる瓶詰めではなく、技術移転までするだろう」という期待も付け加えている。
まず、『サムスン・バイオロジクス』が委託生産契約を結んだからといって、韓国で完成したワクチンパッケージが韓国内に供給されるかどうかは不明――というのが一点(当たり前です)。
次に、文大統領自身も「今回の委託生産がmRNAワクチンの製造技術には全く関与できるものではなく、瓶詰め作業に類するものである」ことを理解しています。そうでなければ「技術移転もされるだろう」などとは言わないはずです。
しかし、「単なる瓶詰めではなく、技術移転までするだろう」という発言には呆れます。
ダウンタウンの浜田さんなら「それはお前の気持ちやん」と突っ込むのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)