米韓首脳会談の成果として、アメリカ合衆国『moderna(モデルナ)』とmRNAワクチンの無菌製造・ラベリング・パッケージングを受注した韓国『サムスン・バイオロジクス』。
先にご紹介したとおり、韓国の中枢部も担当するのは「瓶詰め」部分と理解しているわけですが、これではいかんというわけで、『サムスン・バイオロジクス』はmRNAワクチンの原液生産を受注するための動きを始めたようです。
原液生産用の施設を増設?
韓国メディア『韓国経済』の2021年05月31日付け「サムスンバイオの『勝負』…mRNAワクチン原液生産」という記事によれば、仁川松島にワクチンの原液生産を行うための設備を拡張しているとのこと。
よく分からないのは、mRNAワクチンの原液生産の技術が現在なく、どんな設備が必要なのかも分からないはずなのに、一体なんの設備を拡張しているのか?ということです。
記事から一部を引用すると以下のようになります。
(施設の)増設の完了時期は来年上半期になる。
ワクチン開発会社である海外の製薬・バイオ企業の技術移転作業を経て、来年下半期からはワクチン原液の生産を本格化することができるという見通しが出ている。
『サムスン・バイオロジクス』は、これに関連した事業計画を個別に発表する予定である。
『サムスン・バイオロジクス』が受注を計画しているワクチンは、mRNA方式のものである。
(後略)
なぜ技術移転をしてもらえると信じているのかがよく分かりません。「mRNAワクチンの受注を計画している」と書いてあるので、まだ受注したわけではないのです。
さらに以下の下りです。
「韓国委託生産(CMO)業界の最後の未知の領域が満たされた」
バイオ業界は31日、『サムスン・バイオロジクス』のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ワクチン事業への進出の意味をこのように評価した。
参入障壁が高いと予想されたmRNAワクチンの分野で韓国が先行する機会を迎えたという説明だ。
(後略)
もう何度だって言いますが、まだ受注したわけではなく、mRNAワクチンを開発・製造するどの企業とも原液受託生産の契約を結んだわけでもなく、技術移転されると決まったわけでもないのに「韓国が先行する機会を迎えた」「最後の未知が埋まった」などと独り合点しています。
また、この記事で興味深いのは以下の部分です。
原液生産は無菌製造(無菌充填作業)工程に比べて、営業利益も高い。
業界では、無菌製造の場合、1回分に1〜3ドル程度の利益が出ると見ている。
無菌製造工程は原液を瓶に入れて包装をするプロセスである。
業界関係者は、「自動化設備のもとに技術力がなくても生産が可能である」とし「通常1ドル前後で価格交渉がされている」と述べた。
(後略)
『サムスン・バイオロジクス』が受注した無菌製造工程(いわゆる「瓶詰め」)での利益を述べています。だいたい1ドル前後とのこと。また「技術力がなくても生産が可能な部分」を任されたとも正直に述べています。
つまるところ、原液生産についてはまだ何も決まっていないようなので、頑張ってくださいというところです。
⇒参照・引用元:『韓国経済』「サムスンバイオの『勝負』…mRNAワクチン原液生産」
(吉田ハンチング@dcp)