韓国の次期大統領選挙まで1年を切りました。政府与党『共に民主党』の有力候補といわれる人が、大統領選挙を意識した発言をさまざま繰り出していますが、先のソウル・釜山市長選挙で与党が惨敗したことからも分かるとおり、野党の動きに注視すべきです。
文在寅大統領・『共に民主党』のおかげで左に寄ってしまった政治姿勢を保守寄りに戻すことができるかは、特に最大野党『国民の力』がどう動くのかにかかっています。
注目の『国民の力』ですが、06月11日の党大会でなんと弱冠36歳の党首が選出されたのです。それが李俊錫(イ・ジュンソク)さんです。
李俊錫とは?
李俊錫さんとはどのような人物でしょうか? 略歴は以下のようになります。
1985年03月31日生まれ
2003年02月 『ソウル科学高校』卒業
2003年03月 韓国科学技術院中退
2007年06月 ハーバード大学で経済学、コンピューターサイエンスの学士取得
2011年08月 『クラッセスタジオ』代表
2011年12月 『セヌリ党』非常対策委員
(略)
2021年03月 『国民の力』ソウル市長補欠選挙対策委員会
2021年06月 『国民の力』代表
出身校の『ソウル科学高校』は非常に有名なエリート校ですが、卒業後は『韓国科学技術院』をすぐに中退して渡米。ハーバード大学で学士号を取得したようです。
2011年の『クラッセスタジオ』というのは自分で立ち上げた企業で、資格認定試験を提供するアプリなどを開発。このベンチャー企業を立ち上げるに当たっては「青年ベンチャー企業創業支援金」を受けています。
政界入りした直接の原因は、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領から党の非常対策委員に抜擢されたことです。「パククネキッズ」と呼ばれたこともありますが、朴政権が国政壟断(ろうだん)事件で揺れた際には、朴大統領の弾劾を主張する側に回りました。
キャリアでは政党を、『セヌリ党』 ⇒ 『正しい政党』 ⇒ 『正しい未来党』 ⇒ 『国民の力』と移動しています(韓国の政党は離合集散を繰り返すのでこれ自体はまあ普通)。
特筆すべきは自身が国政選挙で勝ったことがないという点です。2016年、2018年、2020年と3度総選挙に出馬して全敗です。
つまり、李俊錫さんは政治家ではありますが、国会議員ではないのに最大野党の党首になったのです。
06月11日の党大会選挙では、
国民世論調査票:30%
の比率で反映される投票が実施され、李俊錫さんは43.8%を得票し第1位。憲政史上初の30代の党首が誕生しました。
李俊錫の実力は?
問題は、李俊錫さんの力量がどの程度なのか、という点です。テレビのコメンテーターなどを務めているいことから「口は達者」という評価はある一方で……。
例えば、ITリテラシーが必要という意味だったのでしょうが、「これからはエクセルを使えな候補は擁立しない」と公職候補者に資格試験を実施するかのような発言をしています。マイクロソフトと資格認定屋は喜ぶかもしれませんが、首を傾げたくなります。
また、30代という年齢は若い有権者にアピールするかもしれませんが、党内の年長の有力者を党首として指示に従わせられるのか、という懸念もあります。なにせ儒教の国・韓国ですから。
さらに、万が一尹錫悦(ユン・ソギョル)前検察総長が『国民の力』に入党して大統領候補に名乗りを上げた場合、李俊錫さんは有力なサポートを行えるのか、という疑問もあります。
もし『国民の力』が政権を奪回できなければ左派政権があと5年続くことになるでしょう。韓国の大統領は絶対的な強権を持つために、誰が大統領になるかは経済に非常に大きな影響を与えます。それは文大統領が就任した2017年と比較して、現在の韓国経済がいかに変容したかを考えれば明らかです。
というわけで、Money1では本来なら対象としない政治家の話題をご紹介しました。
(吉田ハンチング@dcp)