「キンペーちゃんがエライこと言い出したぞ、おい」という話です。
2021年08月17日、中国の習近平総書記は「中央金融経済委員会」の第10回会議を開催したのですが、この会議の中で「共同富裕」という言葉を強調したとのこと。
共同富裕とは、「みなが等しく豊かになる」という意味ですが、このような言葉を今さら強調することは、これまで中国が進んで来た経済発展に急ブレーキをかけるつもりでは?と懸念されます。
いや、それどころか、かつての文化大革命のような混乱を引き起こす可能性すらあります。
読者の皆さんもご存じでしょうが、中国の経済的発展は鄧小平さんが1985年ごろに提唱した「先富論」から始まったと言っても過言ではありません。
先富論は、富むことができるものから先に裕福になればいい。先に富んだ者が貧しいものを助けて引っ張り上げるのだ――という考え方で、共産主義の中に資本主義的なシステムを持ち込むための方便になりました。
そのおかげで「よし、お金持ちになるぞ」と頑張る人が出て、それが経済発展のエンジンになったわけです。
で、ここまで来て……「共同富裕」です。
簡単にいえば「共産主義へ回帰するのだ」みたいなスローガンです。本件を報じた『新华网』の記事が以下です。一部を引用します。
(前略)
会議では、共同繁栄とは全国民の繁栄であり、国民の物質的、精神的な生活が豊かであることであり、一部の人の繁栄ではなく、また、整然とした平等主義でもないことを強調し、段階的に共同繁栄を推進することとした。私たちは、豊かになるための努力と革新を奨励し、発展の過程で人々の生活を守り、向上させることを主張し、人々が教育や開発能力を向上させるために、より包括的で公平な条件を整え、上昇志向のチャンネルを開き、より多くの人々が豊かになる機会を作り、誰もが参加できる発展環境を形成しなければなりません。
(後略)⇒引用元:『新华网』「习近平主持召开中央财经委员会第十次会议强调 在高质量发展中促进共同富裕 统筹做好重大金融风险防范化解工作 李克强汪洋王沪宁韩正出席」
一見いいことが書いてあるようですが、以下の部分はどうでしょうか。
(前略)
高額所得者の規制と調整を強化し、法律に基づいて正当な所得を保護し、過剰な所得を合理的に調整し、高額所得者や企業に社会への還元を促すべきである。不合理な所得を一掃して規制し、所得分配の秩序を正し、違法な所得を断固として排除しなければならない。
財産権と知的財産権を保護し、正当な富を守り、あらゆる種類の資本の規制された健全な発展を促進しなければなりません。
(後略)※データ引用元は同上
要は、高額な所得を得ている者・企業に対する規制を強化し、それを中国共産党が再分配(調整)する、といっています。
問題は、「過剰な所得」「違法な所得」ってなんだ?――という点です。
なんの定義も規定もないので、中国共産党が恣意的に決定できるのです。
つまり、「お前(企業含む)の所得は過剰で違法だ」と中国共産党が勝手に決めて、「調整する」と言い、収奪できることに他なりません。
また、世界で最も違法コピー商品を製造・販売しているといわれる国が、「財産権と知的財産権を保護して正当な富を守る」などと書いてるだけでも大笑いなわけですが、こちらも「規制された健全な発展を促進する」そうです。
つまり、中国共産党が「財産権」「知的財産権」を規制する、と言っています。
要するに、習近平総書記が熱弁を奮ったという「共同富裕」は、富の再分配という名を騙(かた)った中国共産党による富の吸い上げです。
自由主義陣営に属する日本は、中国共産党がこのようなことを言いだしていることを見逃してはなりません。
地主や資本家が吊るし上げられた毛沢東の「文化大革命」が想起されるわけですが、この共同富裕は、再び毛時代のような社会的混乱をもたらすでしょうか。
↑すでに「いかにして共同富裕を促進するか」というパンフレットまであります
(吉田ハンチング@dcp)