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韓国「15Nフッ化水素」問題と「事実の検証」

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韓国の『Ram Technology(ラムテクノロジー)』が「15N(99.9999999999999%)の超高純度のフッ化水素の生産技術を開発した」と報じられた件です。

事実を確認してみます。

まず、『ラムテクノロジー』は記事の元になった報道資料を出していません。これは同社が明言しています。

ですから記事元の報道資料は偽ものです。

以下がネット上で見られるの報道資料です。


↑「15Nの超高純度フッ化水素の生産技術を開発した」という記事の元になった報道資料。(ネットに上がっているもののスクリーンショット)/以下は前段の和訳

【プレスリリース】
タイトル:ラムテクノロジー、世界最高超純度気体・液体フッ化水素同時生産技術開発!

-純度99.999999999999999(15N) 日本の技術力に先行する技術開発
-24時間全自動設備まで完成
-気体および液体超高純度フッ化水素同時生産
-最高の超高純度歩留まり生産可能

日本に先行する超高純度15Nのフッ化水素を生産できる技術であり、24時間稼働の全自動設備までできたと書いてあります。

この偽の報道資料には、ご丁寧なことに『ラムテクノロジー』社が2021年06月に出願し、10月01日に登録された「超高純度フッ化水素の精製方法及び装置」の特許資料が使われています。

結論からいえば、この特許出願と登録は事実です。

韓国の特許検索サイト『KIPRIS』(Korea Intellectual Property Information Searchの略)で検索をかけると、確かに『ラムテクノロジー』が2021年06月03日に「超高純度フッ化水素の精製方法と装置」の出願を行い「登録済み」であることが確認できます(以下)。


↑『KIPRIS』の検索画面。登録済みの「超高純度フッ化水素の精製方法と装置」がヒットする。公開文書は全17ページ。

問題は「15N」という信じられない純度のフッ化水素を本当に生産できるのか?です。

『ラムテクノロジー』の上掲資料の中にこの精製を経てどのくらい不純物が残ったのか、のデータが掲載されています。

データ引用元は同上

この結果を見ると「As(ヒ素)」が「0.31ppt」残っています。pptは1兆分の1なので「0.00000000000031」
となります。15Nは99.9999999999999%ですので、

99.9999999999999
00.00000000000031

小数点の位置を合わせるために下を「00」としています。ご寛恕ください(以下同)

「15N」には及びません。また残留してるのは上掲のとおり「As」だけではありません。「B(ホウ素):0.46ppt」「Ti(チタン):0.18ppt」「Ca(カルシム):0.28ppt」「Fe(鉄):0.35ppt」も残留しています。

これらを合計すると「1.58ppt」なので、

99.9999999999999
00.00000000000158

となって15Nクオリティーには及ばず、12Nより純度が高いとはなります(他に不純物がないのであれば)。

ですので、韓国メディアによれば、『ラムテクノロジー』自身は「「世界最高超純度気体・液体フッ化水素の生産技術を同時に開発したという内容は事実ではなく、超高純度フッ化水素精製を通じて半導体用フッ酸製品に含まれる単一金属不純物の濃度を1ppt以下水準に下げることを目標にしている」と述べています。

「偽の報道資料」と分かっているので突っ込むのも何なのですが、「15Nの超高純度フッ化水素の製造技術を開発した」はやっぱりウソといわざるを得ません。

しかし、『ラムテクノロジー』の努力は立派です。今回の偽の報道資料に惑わされず開発を継続され、その努力がいつか結実することを心より祈念申し上げます。

(吉田ハンチング@dcp)

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