韓国は異常に自国の格付けを気にします。1997年のアジア通貨危機時、2008~2009年の韓国通貨危機時には格付けが下がっているのです。
他にも、盧武鉉(ノ・ムヒョン)さんが大統領に就任する直前、2003年02月10日、『Moody’s(ムーディーズ)』が「positive」から「negative」に引き下げたことがあり、本件は文在寅さんが自伝『運命』が悔しそうに記しています。
国の信用格付けが下がると、資金調達コストが上がってドル建てで資金を調達する韓国政府、企業が困るのです。また、信用格付けが下がると資金流出の懸念が高まるので、こちらも困ったことになります。
韓国の金融当局は、毎年、世界的な信用格付け会社『S&P』『Moody’s(ムーディーズ)』『Fitch(フィッチ)』とそれぞれ協議を行っています。
韓国政府側からすれば、これは格付けが下がらないようにするための交渉の場といえます。
高橋洋一先生がおっしゃっているとおり「格付け会社なんてアテになるものか」なのですが、日本はそうでも韓国としては格付け会社に信用等級を下げられるのは困るのです。
ましてや、ウォン安が進み、資金流出が懸念されている現況です。
ここで「格付けが下がります」なんてことになったら目も当てられません。
で、『S&P』は、2022年09月26~28日の3日間で、企画財政部、産業通商資源部、金融委員会、『韓国銀行』、韓国開発研究院などの金融当局と面談を行います。
以下が企画財政部が出したプレスリリースです。面倒くさい方は強調文字のところだけ読んで、あとは飛ばしていだいても大丈夫です。
□国際信用評価会社スタンダード&プアーズ(S&P)*は、今日のチュ・ギョンホ副総理面談を皮切りに、9.26(月)から9.28(水)まで3日間韓国年次協議を行う。
*協議団:キム・エンタン(Kim Eng Tan)アジア太平洋地域の国家信用等級担当上級理事
フィリップ・チョン(Philip Chung)アジア金融機関の信用格付け担当上級取締役
イ・ファン・プア(YeeFarn Phua)アジア太平洋地域の国家信用格付け担当取締役ㅇ今回の年次協議は新政府発足以来初めて同社が直接韓国を訪問して対面方式で進行され、
ㅇS&P協議団は3日間、企画財政部、産業通商資源部、金融委員会、韓国銀行、韓国開発研究院など多様な機関に会い、部門別動向・展望およびび政策対応などを議論する予定だ。
□秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官は本日S&P協議団面談で➀民間・企業・市場中心の経済運用、➁成長潜在力向上のための経済・社会全般の構造改革、➂健全財政基調への転換など新政府の核心政策方向へについて説明した。
ㅇ秋副首相は果敢な規制改革と法人税制改善、5大部門構造改革*などこれまでの政策推進現況を紹介し、
*(公共)公共部門の効率性向上と年金改革(労働)硬直労働市場の柔軟性確保(教育)時代の変化に合った人材養成(金融)生産的分野への資金供給促進(サービス)新たな成長動力の発掘・育成
ㅇ今後の財政準則をより単純・厳格な方式で再設計して法制化することで、健全財政基調を厳格に堅持していくことを強調した。
□S&P側は韓国政府の政策基調転換について肯定評価し、今日面談が新政府の政策哲学と強い意志を確認するきっかけとなったと述べた。
また、S&Pは、グローバル金利引き上げの加速に伴う不確実性の拡大と家計負債の負担の増加について質問した。
-秋副首相は低い延滞率、高い高信用借主貸付比重、金融機関の健全性などを考慮すれば構造的リスクにつながる可能性は制限的と評価し、今後家計負債の安定的管理*を一貫して推進しながら脆弱階層の償還負担緩和* *を並行していくと強調した。
※DSR制度等による償還能力ベースの貸付慣行定着努力継続
** 脆弱層債務調整及び低金利・固定金利融資への転換など金融部門民生安定課題の推進
-同時に、家計負債だけでなく企業・財政など全ての部門で過剰な負債は、経済ファンダメンタルの負担要因として作用するだけに今後特別な警戒心を持って管理していくと述べた。
-一方、対外健全性に関しては最近、グローバル不確実性の拡大に伴い韓国経済も影響を受けているが、外貨LCR・外国為替保有額・純対外資産規模などを考慮すると、韓国経済の対外健全性は良好だと説明し、S&Pもこれに全面的な共感を表した。
□政府は今後もS&Pなど国際信用評価社と緊密に協議する一方、G20財務長官会を契機にしたS&Pとの協議、海外投資説明会などを通じて韓国経済の対外信認維持に万全を期していくだろう。
ㅇ参考:S&Pのわが国の信用等級・展望は’16年から歴代最高水準の「AA・安定的」に維持されている。S&Pは今回の年次協議の結果を反映し、来年上半期にわが国信用等級を発表する予定だ。
注目したいのは、企画財政部が「韓国経済の対外健全性は良好だ」と説明し、「S&Pもこれに全面的な共感を表した」という部分です。
本当に『S&P』が共感を示したのか、気になるところです。
また、企画財政部が正直に「家計負債だけでなく企業・財政など全ての部門で過剰な負債」と述べている箇所も注目に値するでしょう。
政府・企業・家計の3部門全てで過剰な負債を抱えていることを認めています。
識者、韓国ウォッチャーから「韓国人はうそつきだが正直だ」などと評されるのはこの辺りだと思われます。
協議の結果、格付けがどうなるのかは2023年の上半期中です。ドボン騒動を起こしていなければいいですね。
(吉田ハンチング@dcp)