<<重要な追記>>
原告・自称徴用工への賠償は元のプランどおり『日帝強制動員被害者支援財団』が行うという情報が出ました。
この場合、代位弁済を行うのは同財団。
以下記事で『朝鮮日報』の記事から引いた『全経連』と『経団連』を通じて造成する「未来青年基金(仮称)」は、あくまでも日韓の協調を示すためのもの――ということになります。
いずれにせよ構造は同じで、債務譲渡の契約をいかに行うのかと求償権の問題は残ります。
<<追記ここまで 以下元記事>>
「いわゆる徴用工」問題の件です。
2023年03月04日、日本の『読売新聞』が「韓国が代位弁済プランを正式な解決策として公表する」と報道。
当初はこれを引いていた韓国メディアも「早ければ06日に公表」という記事を出し、これが「2023年03月06日(月)に公表する」と「確定した」という書き方になりました。
以下の記事でご紹介したとおり、『読売新聞』の飯塚恵子論説委員によれば、この代位弁済プランは「そもそも日本政府側が授けたもの」なので、最初から日韓の出来レースとして進行してきたことになります。
『読売新聞』からは、
「日本の対韓輸出厳格化『解除』と韓国のWTO提訴取り下げ、『あわせて実現』を検討」
(2023年03月05日09:09付け)
「『元徴用工』賠償金、日本の経済協力で恩恵受けた企業が寄付金拠出…韓国が解決策発表へ」
(2023年03月05日09:00付け)
という記事も出ています。
日韓双方で一気に事態を「(日韓政府が望む)いい方向」へ動かそうとしているのが見て取れます。
韓国メディア側では、『読売新聞』にはない情報を出している記事もあります。
例えば、『朝鮮日報』は、この代位弁済に使う「第三者」として日韓双方が共同で新しい基金を造成する――という記事を出しました(2023年03月05日10:53付け)。
これがロクでもない内容です。
政府筋によると、両国は06日、『全経連』と『経団連』を通じて「未来青年基金(仮称)」を共同造成して運営することを核心とする内容の日韓交渉結果を発表する予定だ。
この案は、未来志向的な日韓関係発展のために基金を造成する案で、強制徴用賠償交渉過程で日本側被告企業の判決金弁済参加の代わりに提示された解決策だ。
基金は、留学生のための奨学金など、両国の若者の交流促進のために使われると見られる。
両国の代表的な財界団体を通じた合弁基金は、過去史清算という難題で膠着状態に陥った交渉で突破口を開くための苦肉の策と解釈される。
両国が基金造成に合意したため、今後、財団は単独で被害者に対する第3者弁済に乗り出すとみられる。日本の被告企業に対する求償権請求などは未知数だ。
(後略)
これでまでは、韓国に既存の『日帝強制動員被害者支援財団』が代位弁済を行う第三者になる――と目されていたのですが、『朝鮮日報』の同記事によると、日本の『経団連』と韓国の『全国経済人連合会』が基金を造るという話になっています。
↑これまで本命と目されてきた『日帝強制動員被害者支援財団』を用いた代位弁済プラン
↑日韓の経済団体が共同で出資(?)して基金を造り、第三者弁済を行う
もし、『朝鮮日報』が報じているのが正しく、これがそのまま通るなら「慰安婦合意」のときとなんら変わりません。
「大人な解決」と胸を張るかもしれませんが、韓国の政権が変わったらひっくり返されたことを記憶していないのでしょうか。
どう解釈できようが、日本がお金を出している点は事実として残ります。「1965年の日韓請求権協定によって朝鮮半島に対する日本の債務は全て片付いた」という建て付けが、このような解決法で守られた――といえるのでしょうか。
また、記事にあるとおり「求償権」がどうなるのか不明です。
求償権は、債務を譲渡された第三者がもともとの債務者に「代位弁済した債務を請求できる権利」です。
今回の場合、新しく造成される「未来青年基金(仮称)」なるものが、原告・自称徴用工に賠償金を支払い、その後で被告・日本企業にそのお金を請求できる権利です。
求償権が残るなら、日本企業は結局お金をむしられることになります。求償権を絶対に行使させない法的な縛りを設ける必要があります。
『朝鮮日報』の記事が正しいなら岸田政権はまるで駄目
『朝鮮日報』の同記事の内容が正しいなら、またこれを本当に通すようなら、岸田文雄政権はまるで駄目です。
同じように国際法違反の判決が出るたびに基金を造成して、『経団連』なりがお金を出すのでしょうか。
今求められているのは、日韓協調に舵を切っている尹錫悦(ユン・ソギョル)政権に妥協することではありません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の「三一節」の式辞は立派なものでしたが、それと本件で「妥協する」のは全くの別問題です。
日本政府がなさなければならないのは、ここではっきりと「1965年の日韓請求権協定によって朝鮮半島に対する日本の債務は全て片付いた」ということを、韓国側に再認識させることです。
韓国の司法が国際法を破った判決を出しても、日本は決してそんな要求には応じない――と示すことです。
相変わらず日本メディアでは「最悪な日韓関係を修復する」などと書いていますが、違います。
現在は、「韓国が不逞なことを行ったらきちんと制裁をする」「国際法違反のことを行ったら認めない」という措置がとれる最良の日韓関係に向かっているのです。
『朝鮮日報』の記事が正しいのであれば、それが元の木阿弥になりそうです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の後の政権でまた合意がひっくり返された暁には、「岸田文雄は2回も韓国にだまされやがった」となるのです(2015年の慰安婦合意のときに外相としてフロントでしたから)。
さあ明日、本当に韓国が公式な解決策を提示するのか、それがどのような内容なのか、要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)