韓国『サムスン電子』がアメリカ合衆国のテキサス州で工場の建設に入っています。
2025年から現地で半導体生産に入れるようにという突貫工事なのですが、合衆国のインフレで資材・人件費が高騰し、当初の予定170億ドルより80億ドルもかさんで、総額250億ドルの投資になるのではないか――という観測が出ているのです。
これは『Reuters(ロイター)』が関係者に取材した記事を基にした話なのですが、そんな中、韓国メディア『朝鮮日報』には「合衆国で造るよりも韓国に工場を建てた方が安い」という記事を出しています。
『合衆国半導体産業協会』(略称「SIA」)の試算を基にした記事ですが、以下に記事の一部を引用します。
100対78
『米国半導体産業協会』(SIA)が合衆国とアジア(韓国・台湾)に先端システム半導体工場を建て、10年間運営した場合の総コスト(TCO-Total cost of ownership)を比較した数値だ。
合衆国でかかる費用を100ウォンとすると、韓国・台湾は78ウォンがかかるということだ。
同じ基準で中国は63ウォンの費用がかかると分析した。
これは合衆国の半導体業界を代表する『米国半導体産業協会』がボストンコンサルティンググループ(BCG)と2021年、「不確実な時代におけるグローバル半導体サプライチェーンの強化」というタイトルで、自社の競争力を分析した報告書に盛り込まれた内容だ。
先端半導体工場を合衆国に建て、10年間運営すると韓国より約29%高いということだ。
(後略)
最後の「約29%高い」は「約22%」の間違いではないか、と思われますが、主張していることは「韓国で建設した方が安くつくぞ」に変わりはありません。
実際、以下のようにも書いています。
(前略)
だが、合衆国政府が補助金申請条件において、半導体施設へのアクセス許可、予想を超過した利益を共有などの厳しい条項を掲げている上、最近のインフレで半導体工場の人件費、建設費がより高まっており、「合衆国に建てれば建てるほど、むしろ損害が大きくなる仕組み」という指摘が出ている。(中略)
半導体業界では「半導体サプライチェーンを構築するという合衆国の投資魅力度が現実に大きく落ちた状況で、果たして合衆国に行く必要があるのか」「合衆国の生産基地を構築する計画を見直さなければならない」という声が高まっている。
(後略)
合衆国で補助金をもらう条件が厳しくなり、韓国でもメガクラスターを造ると政府が発表しましたので、「『サムスン電子』は合衆国に行かなくても……」と書いています。
問題はお金の話ではない――という点をぼかしているのがいけません。
これは、合衆国からすれば踏み絵であり、合衆国に半導体工場を建てるというのは、簡単にいえば「ショバ代」です。
つまり、「私は合衆国サイドに立ちますよ」「間違っても中国サイドには行きません」という証明のために必要なことなのです。
実際、中国に建てた『サムスン電子』『SKハイニックス』の工場はもはや逃げられませんし、最先端の素材・部品・装備が中国本土に入れられない以上は立ち枯れするしかないのです。
韓国はまたぞろ「血盟」だなんだと言って合衆国に許してもらおうとしていますが、恐らく無理です。
だからといって韓国に半導体工場を造ろうなどという話は、「お前らは北朝鮮リスクをどう考えているんだ」となるに決まっています。もう少し新冷戦の状況をよく考えられた方がいいのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)