韓国メディアや韓国政府は、経常収支が2023年05月に黒字転換し、06月の(通関ベース)貿易収支が黒字になったことから「韓国経済の低迷は底を打った。回復を目指している」としています。
事実を確認してみましょう。
経常収支は「19億ドルの黒字」まで回復した
まず、国際収支統計の「経常収支」を見てみましょう。
↑国際収支統計は2023年07月19日時点で「2023年05月分」までしか公表されていません(データ出典:『韓国銀行』公式サイトの統計システム「ECOS」)。
2023年01月は「-42.1億ドル」の大赤字でしたが、03月にわずか「1.6億ドル」黒字となり、04月は「残酷な四月」で再び赤転。
そして05月に「19.3億ドル」と黒字幅が拡大しました。
これを見ると、韓国経済が底を打って回復しているように見えます。
貿易収支は16カ月ぶりに黒字転換し……
次に先行している(通関ベースの)貿易収支のデータです。
韓国にとって最も重要な貿易でのもうけですが、これは貿易収支(輸出 – 輸入)で測れます。韓国はこの貿易収支が大きな黒字でないと回りません。通関ベースの貿易収支は、2023年06月に実に16カ月ぶりに黒転(黒字転換)しました。
以下が通関ベースの貿易収支の推移です。
⇒データ出典:『韓国 産業通商資源部』公式サイト
2023年01月は「貿易収支:-125億ドル」ととんでもない大赤字でしたが、マイナスは徐々に縮小し、06月にやっと「+11億ドル」と黒転。
これを見ると確かに貿易のもうけが回復しているように見えます。
しかし、懸念材料でがあるのです。以下は2023年01~07月までの「輸出金額の“対前年同月比の増減”の推移」です。
↑2023年01~07月の(通関ベース)貿易収支の推移。07月はまだ月初のデータまでしか締まっていません。
ご覧いただけば一目瞭然ですが、2023年は01月からここまで、一度も対前年同月比でプラスになったことがありません。つまり、輸出金額は前年同月をずっと下回り続けているのです。
韓国にとって最も重要である輸出は増えていません。減少を続けています。
なぜこんなことが起こるのかというと、貿易でのもうけを示す貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めるからです。
輸出の実績が下がっても、輸入実績がそれを上回って下がれば、黒字になりますし、黒字額も大きくなって見えます。こういう減少を一般的になんと呼ぶでしょうか。
不況型黒字というのです。輸入というのは外国からする消費ですので、消費が弱まって輸出が減っているのに黒字を出しているですから※。
貿易が黒字になった、経常収支が黒字になったと喜んでいる場合でしょうか。縮小均衡のスパイラルにはまり込んだのでなければいいのですが。
※ただし輸入の減少には資源価格が下がったという影響もあるのでその点は精査しなければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)