ここ最近、韓国では政府の「商法」改正の動きについて、産業界からの批判が強まっています。何が問題なのか、争点がよく分からないためか一般メディアでは注目は薄いようです。しかし、この改正がそのまま通ると韓国の大企業は経営権を脅かされるような事態を招くかもしれない――そう指摘されていたりします。
焦点の一つは「監査委員の選任」において「議決権を3%に制限する」というルールを設けようとしている点です。これは、「保有する株式比率に関係なく議決権は3%を上限とする」という意味です。
例えば、その企業の株式を8%保有している大株主でも、「議決権は3%とみなします」という世界的に類を見ない制限です。(株主の正当な権利を制限するという意味で)極論すれば株式制度の否定なんじゃないのか、と思えないでもありません。
なぜこれが問題とされるかの前に、監査委員とその選任について先にご紹介します。
韓国の監査制度では、資産総額が2兆ウォンを超える上場会社の場合には必ず「監査委員会」を設けなければなりません。監査委員会の役割は、その企業の業務監査と会計監査を行うことです。また監査委員会は、日本でいう監査役とほぼ同様の権限を持ちますので、企業の取締役や使用人に対して事業についての報告を求めたり、事業や財産について調査することが可能です。
結構協力な権限を持つ監査委員会ですが、構成する監査委員は3名以上、その2/3以上は社外の監査役でなければなりません。
監査委員の選任は、株主総会で取締役に選任されて、その後、取締役会での議決を経て監査委員になります。
――ですので、監査委員会を作り、3名の監査委員を選ぶ場合、1人は社内取締役でもいいですが、残りの2名はどこかからなり手を連れてこないといけません。まず、その3名を株主総会で取締役として選任してもらいます。その後、取締役会を開催し、この3名を監査委員として選任します。
で、韓国政府がいう「監査委員の選任に『議決権の3%制限』を課す」を持ち込んだらどうなるか?
「3%上限で議決権を計算してみると、外国の機関投資家の議決権が多数になり韓国は不利だ」というのです(今に始まったことではないだろうという疑問はあります)。
例えば、韓国メディア『BusinessKorea』には、『全国経済人連合会』の計算を以下のように引いています。
(前略)『サムスン電子』の場合、現行法では大株主、関連会社、友好的な株主が8.55%の議決権を行使できるが、改正後は17.76%に上昇する」と説明し、「しかし、外国の機関投資家の27.61%よりもはるかに低い」と付け加えた。
(後略)⇒参照・引用元:『BusinessKorea』「Commercial Act Revision Poised to Jeopardize Management Rights in Most Companies」
このような視点で、他の企業も計算してみると以下のようになるとのこと。
『Naver』 5.98% vs 31.06%
『LG化学』 8.60% vs 16.84%
韓国株式市場の時価総額Top5のうち、唯一『サムスンバイオロジクス』だけが「10.38% vs 5.67%」で、大株主・関係者・友好的株主の議決権の方が、外国の機関投資家よりも多くなるようです。
という具合で、この「議決権の3%制限ルール」は『全国経済人連合会』がリポートを出すほど、韓国の経済団体、大企業から懸念を表明されています。「台湾『TSMC』の幹部が『サムスン電子』の監査委員になることだってできる」なんてBusinessKorea』の記事には書いてありますが……それはそれで面白いので、ちょっと見てみたいですね。
(吉田ハンチング@dcp)